中国史(上) (岩波文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003313336

作品紹介・あらすじ

内藤湖南・桑原隲蔵以来の京都東洋史学の学風を継承、発展させた宮崎市定(1901‐1995)。本書は唐と宋の間に明確な時代の変革を見る独自の理論に基づいた通史で、文章は平易で論旨は明確である。上巻では歴史とは何かを問い、主な時代区分論を紹介し、古代から最近世までそれぞれの特徴を述べて、夏殷周から唐五代に至る歴史を概観する。(全2冊)

感想・レビュー・書評

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  • 宮崎市定は内藤湖南や桑原隲蔵の学統を受け継ぐ京大東洋史の黄金時代の立役者の一人である。地域や時代ごとに専門分化された感の強い歴史学の世界において、東洋史の実に幅広い領域で第一級の業績を残し、かつ世界史的な視野のもとに通史を語ることができた文字通り最後の巨人だ。

    宮崎史学と言えば時代区分論が有名であるが、それは都市国家の時代から秦漢帝国までを古代とし、異民族の侵入によって統一国家が分裂し貴族階級が実権を握った時代を中世、君主独裁を強化して中央集権を確立した宋を近世の始まりとする。基本的には内藤湖南の唐宋変革論を受け継ぐものだが、そこに宮崎のもう一人の師である桑原隲蔵の交通史観を接合し、西アジア、ヨーロッパとの文化の相互伝播をダイナミックに組み込んだものである。本書ではさらに宮崎独自の景気循環史観を取り入れ、中世の景気後退局面からの回復期に近世の幕開けである宋時代を重ね合わせ、実にスケールの大きな中国史の見取図を提供してくれる。

    かつて東大系史学との間ではなばなしい論争を繰り広げた時代区分論争も現在では下火になっているようだ。宮崎の時代区分論は湖南以来の京大の文化史の伝統を受け継ぐもので、マルクスの唯物史観に依拠した東大の西洋中心の発展モデルへのアンチテーゼと見ることもできるが、宮崎の時代区分論も広い意味では一つの発展史観と言えなくもない。(このことは講座派=大塚史学を批判した上山春平や梅棹忠夫ら新京都学派にはより一層あてはまる。) こうした発展史観はマルクス主義の凋落とともに、アナール学派の社会史やブローデルの唱えた長期持続への関心の高まりにより、歴史の断絶よりむしろ連続性が注目されるにつれて次第に顧みられなくなった。

    かくてグランドセオリーの終焉が叫ばれて久しいが、最近ではそれが行き過ぎて、歴史学があまりに細部に関心を集中し、好事家の趣味と見紛う傾向がないでもない。歴史というものが客観性・実証性に基づくべきことはもちろんだが、それは単なる事実の蒐集・羅列ではないはずだ。精緻な考証とともに、歴史をつき動かすダイナミズムをマクロ的に捉えるグランドセオリーが宮崎史学の醍醐味だ。『九品官人法の研究』など純然たる学術書を含め、宮崎の多くの主要著作が文庫化され、没後20年を経てなお歴史ファンを魅了し続けるのも、近年の歴史学が見失った、そうした宮崎史学の懐の深さゆえであろう。

  • 内藤湖南以来の京都東洋史学を継承・発展させた著者が古代史からの中国史を概観。上巻の総論は歴史を学ぶ視座をわかりやすく教えてくれる。

  • 碩学による読みやすい中国の通史。冒頭「歴史とは何か」をはじめ感銘を受けるところが多い。「常に世界史を念頭におき、世界史的立場から、最も具体的に個別の歴史研究に取り組む用意が必要だと思う」とあるように世界史の立場から書かれた通史で、世界の大きな流れの中にある中国の歴史に触れることができる。上巻は、五代まで。これは著者の時代区分によれば中世の終わる時期に当たる。時代区分についても総論の中で、世界史の立場から述べられており、非常に興味深い。ただし西周抹殺論など、現在では否定された説も展開されている点には注意。

  • 中国史のみならず、歴史(世界史)に少しでも興味があるなら必読の名著。

    歴史のダイナミックな面白さがよく分かる。

  • おすすめ資料 第297回(2015.8.28)
     
    中国史学の大家、宮崎市定の名著の1つ、『中国史』の文庫版です。
    中国研究に欠かせぬ名著が、文庫で手軽に読めるようになりました。

    ※目次概要
    上巻... 総論、古代史~唐・五代
    下巻... 北宋~中華人民共和国(1970年代まで)

    冒頭の総論での「歴史とは何か」「時間とは何か」といった論説から始まり、
    各時代の特徴や主要な出来事が「平易かつ明確に」述べられている、
    まさに中国史研究の典拠・古典となる1冊です。

    【神戸市外国語大学 図書館蔵書検索システム(所蔵詳細)へ】
    https://www.lib.city.kobe.jp/opac/opacs/find_detailbook?kobeid=CT%3A7200173858&mode=one_line&pvolid=PV%3A7200437413&type=PvolBook

    【神戸市外国語大学 図書館Facebookページへ】
    https://www.facebook.com/lib.kobe.cufs/posts/857017984347908

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著者プロフィール

1901-95年。長野県生まれ。京都帝国大学文学部史学科卒業。京都大学名誉教授。文学博士(京都大学)。文化功労者。専門は,東洋史学。主な著書に『東洋に於ける素朴主義の民族と文明主義の社会』(1940年)、『アジア史概説』全2巻(1947-48年)、『雍正帝』(1950年)、『九品官人法の研究』(1956年、日本学士院賞)、『科挙』(1963年)、『水滸伝』(1972年)、『論語の新研究』(1974年)、『中国史』全2巻(1983年)ほか多数。『宮崎市定全集』全24巻+別巻1(1991-94年)がある。

「2021年 『素朴と文明の歴史学 精選・東洋史論集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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