国家 上 (岩波文庫 青 601-7)

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  • Amazon.co.jp ・本 (509ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003360170

感想・レビュー・書評

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  • ソクラテスの口を借りてプラトンが正義、正しさとは何かを追求していく。一巻の弁論から圧倒的!正義とは徳であり知識であり、不正とは悪徳であり無知である、こうした当たり前と思える事だけれども見方を変えると反対にも思えることを、淡々と説き伏せていく姿は実に面白いし頭いいんだなーって思う。
    細部ではなくもっと大きな単位で正義を考察すれば、細部と共通の事柄が見えるはずだという考え方は面白い。国家→個人の流れ。5巻最後のいわゆるイデアの思想、ほうほうなるほど。「あるもの」と「あらぬもの」に分けられる時、前者には知識が、後者には無知が対応する。けれどもここで思わく(ドクサ)という概念が入ってくる。例えば、美しい絵や音楽の作品自体を愛することは美を愛することではない。美という「あるもの」を認識せずにそれを有する対象のみを愛することを思わくと言う。これは「あるもの」と「あらぬもの」の中間に置かれる。二元論の間にグラデーションをつけて定量的に分けるイメージ。つまりは抽象的な概念というか本質的実質を理解することが知識となるということか。

  • なぜ今まで読まなかったんだろう。
    タイミングなのか。

    とても分かりやすく書いてある。とはいえ、対話についていくことができるということで、それを「知った」とは言えないだろうけども。

    この訳は現代的に思える(苦労しない日本語)けども、1979年が初版なんて、驚いた。

  • ゼミのテクストで軽く一読.正義論,国家論,哲人王,洞窟の比喩は知ってはいたが読み通したのは初めてだった.確かにプラトンの良いところと悪いところが出ているが批判的に読む訓練がしやすい本だと思う.哲学書に慣れていない人が読む場合は,現代ではなく当時の概念で考えて読まないと誤読するので注意が必要だと思う.

  • 個人の話から国家、そして下巻の宇宙にまで広がるスケールの大きさたるや。
    壮大なものではありましたが、その国家がしっかりと個々の人間と対応していて、ある種の比喩になっているのが面白いです。
    下巻まで通読することをお勧めしたいです。

  • 「国家はどうあるべきか」のような明らかに答えが無い高レベルな問いに対して,つぎつぎと答えがつけられていく様は爽快.根拠は無いが指針を示してくれるものを見てスッキリしたい方にはおすすめ.

  • 正義と不正とは何か。個人にとっての対話から始まるのだが、この2つを明らかにするため話のスコープは国家という最大規模のものまで拡大される。

    5巻まで収録されたこの上巻を読了した時点では、理解しきれなかったり腹落ちできていなかったりする箇所があるというのが正直なところ。
    自分の資質に従い、それのみを行うのが正義とのことだが果たしてそうだろうか。

    一方で、女性の活躍について論理的に展開し主張するなど、プラトン(ソクラテス)の先進性に驚かされることもしばしば。

    500ページ弱のボリュームだが、プラトンの他の著作と同じく大変読みやすい。

  • 読了。
    5巻まで。プラトンで手に取るべき本を誤った気がしないではない。ソクラテスの態度については、なるべく若いうちにこのひとを知り、そこから学ぶべきだろうと感じられた。読み進めるほどに、ゲーム(国家制作シュミレーションゲーム)プランニングという印象が強まった。理想国家像は、ひとつひとつ理詰めされ進行していくほどに狂気の国家のようにわたしには感じられたが、それはわたしが現代民主主義の狂気のなかにいるせいなのか、判別できなかった。多分に、狂気なき現世政治など可能でないのだろう。ソクラステは最低の政治形態に僭主制を挙げたが、わたしには村上龍の愛と幻想のファシズムなどはもっとも正常に感じられた覚えがある。

  • ソクラテスみたいな人と仕事したいと思わせるような内容です。比喩を多く用いて説明しているので分かりやすいです。タイトルは国家ですが、上巻は国家論を展開するための準備段階といった感じです。

  • ソクラテスの口を借りてプラトンが主張していることは、結局のところ「神の視点」から脱しきれていないように感じる。

    善い人間と悪い人間を判断することについて、本書の中でソクラテスは
    「しかし人々はその点についてよく判断を誤り、実際には善い人間でないのにそう思ったり、あるいはその反対だったりすることが、しばしばあるのではないか?」(p41)
    と言っている。それなのに、知を愛する真の支配者・哲学者は決して判断を誤らない、とでも言いたげな後半の主張は矛盾している。

    各人が分をわきまえて任に就く(適性に応じて働く)とか、支配者となるべき人物を支配者に据える、などというような考え方も示されているが、支配者に適している人物を判断し決定し教育するのは誰なのか?その判断を正しく下せるのは「神」に他ならないのではないか……?

    ともあれ、大昔のギリシア人たちの会話(=プラトンの思考過程)を眺めるのはおもしろい。

    思っていたより訳文が平易なのも驚いた。教科書などのプラトン解説よりもずっとわかりやすい。

  • 古代哲学の重要人物であるプラトンの対話編の一つ。対話を通して“正義”について明らかにしようとする著作であり、プラトンの重要な概念(イデア)に関しても語られている。この著作では、プラトンは、人間が正義を実現する状況を分析するために、比喩として巨視的な対象として社会(国家)における正義の実現を分析する。この著作は哲学の古典であり、また対話篇の形をとっていることからも読みやすく、初めて哲学の議論に触れるには良いと思います。

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著者プロフィール

山口大学教授
1961年 大阪府生まれ
1991年 京都大学大学院文学研究科博士課程研究指導認定退学
2010年 山口大学講師、助教授を経て現職

主な著訳書
『イリソスのほとり──藤澤令夫先生献呈論文集』(共著、世界思想社)
マーク・L・マックフェラン『ソクラテスの宗教』(共訳、法政大学出版局)
アルビノス他『プラトン哲学入門』(共訳、京都大学学術出版会)

「2018年 『パイドロス』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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