ソークラテースの思い出 (岩波文庫 青 603-1)

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  • Amazon.co.jp ・本 (310ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003360316

感想・レビュー・書評

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  • ソクラテスは人生相談から国政のことまで何でもござれの好好爺だったようだ。「なんのために善いのでもない善い事を知っているかとたずねているのなら、そんなこと私は知らないし、また知ろうとも思わん。」という言葉は、善というものが彼にとっては、無制限ではなく、限られたものであること、それは目的との関係性、相対性を持っていることを示しているのではないかと思った。また、「一時に一切を眺め、一切を聞き、一切所に在って、一時に一切を留意したまう偉大と円満自在とを、君は悟るだろう。」という言葉は、ソクラテスが至る所に存在する、何かスピノザのそれのような満たされた神の側で見守られて生きていたと感じていたことを示さないだろうか。あるいはソクラテスは国法に従うのが善というが、それは彼が国家に絶対の忠誠を誓っていたというよりは、「人類すべてにわたって、神々をうやまうということが最初の掟であるから」という言葉通り、国家の中にいる自身を見守る神を信じていたのだろう。彼の態度は「皇帝のものは皇帝に、神のものは神に」というイエスの言葉に近いもの何かがあったのではないか。天文学を推奨しながら、身を削ってまでの熱中を警戒したのは、彼の真、善、美が自身の身体とその限界を中心とした総体としての社会生活、世界との節度のある関係に基づいてるのを示していて、核戦争と環境破壊の危機の迫る現在にも響く言葉だと思った。

  • 非哲学者のソクラテスの対話集。

    軍人であるクセノフォンが書いたため、
    プラトンの物とは違い、実話に近いと思われ、
    対話の内容は実生活や生き方に関するものが多い。

    友情や正義を重んじた彼の生き方が伝わってくる。
    そして最期に彼が法を守り死んでいった理由が
    よく分かり、納得できる。

    現在は絶版になってしまっているのが残念。
    是非とも新訳で復活させて欲しいところ。

  • 訳:佐々木理、 原書名:ἈΠΟΜΝΗΜΟΝΕΥΜΑΤΑ(ΞΕΝΟΦΩΝΤΟΣ)

  • 読後感想ですが、

    本書の最初にある解説が、ソクラテスと孔子を比較する、という、いささか、「グローバル」な視点で、正直、違和感を私は感じた。

    ソクラテスと中国の道徳哲学者と同じようなことを言っている、という最初の解説は、そんな見方もあるのか、と少し、私は驚いた。

    ソクラテスの時代は、男同士の口と口を重ねあわせるのも、友情に含まれていたのだ。

    戦士であることが、ポリス民主制の基本的な人格的美質であることが、私は理解した。
    アテナイは、戦士国家だったのだ。

    ソクラテスは体制を維持せんと努めるべく奮闘する人物にしか見えない。

    ソクラテスは、民王と呼ばれる時期に活躍した哲学者ということは、本書で理解できた。
    ネットで民王を検索すると、池井戸潤の小説タイトルが上がる。
    民王とは、王でも、貴族でもなく、民主制でもない、貴族寡頭政治に対する民衆の不満を利用した豪族が新政権を樹立するそんな時期にソクラテスは生きた。
    いわば、クーデター時期の不安定な時代をソクラテスは、真理の確立を目指した。

    ということは、ソクラテスの処刑とは、このクーデター時期の、つまりはかつて失われた君主制を取り戻したいソクラテスが「倫理」として示した思想が、民王政治に触れたということでもある。

    ソクラテスにとっての正しき道とは、本書でソクラテスが述べているように、人として善き人になるということだが、それは「王」のことなのだ。

  • 美にして善。
    徳は智。
    正義とは法に従うこと。

    中国思想もだけど、哲学の始まりは道徳なのかな。

    「いいか、クリトプーロス、もっとも近いもっとも確かなもっとも美しい道は、自分が何か一事にすぐれていると思われたい事柄に、事実すぐれた人間となるように努めることである。」(103頁)

    「笑うべきことだよ、君は身体の悪い人間に出逢っても別に腹を立てないのに、心が粗野にできている人間に出会ったというので、憤慨するというのは。」(169頁)

  •  プラトンの作品をたくさん読んで、今また「国家」との併読で、前から気になっていたこの作品をようやく読むことができました。
     プラトンの作品たちの脚注にしばしば登場するこの作品は、プラトン作品のような善や正義や○○そのものについての考察ではなく、当時の人からみたソクラテスという人物の有り様が生き生きと描かれ、
     ワタシがプラトン作品から作り上げていたソクラテスの人物像をより確かなものにすることができました。
    ソクラテスという人物のさまざまなエビソードを知ることのできるよい作品でした。

  • クセノフォンにゆるソクラテスの対話篇。

  • リファレンスは海外の書籍を中心に多数、なのに何故か検索しても引っかかってこず、ようやく手に入れた一冊。

    それもその筈、×ソクラテス→ソークラテース ×クセノフォン→クセノフォーン しかも絶版。
    これだけ重要なものが、上のような理由で手に入らない状況はオカシイように感じます。

    手に入れるのに難儀した分、内容も後光がかって見えたのは決してギミックではなく、二度とはない人生を「従って生きるのか」「従えて生きるのか」を問い、そして何より自身が実行できる形にまで落とすことこそ、ソークラテースが対話という形式を取った理由であるこが掴めたと思います。

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