- Amazon.co.jp ・本 (298ページ)
- / ISBN・EAN: 9784003403020
作品紹介・あらすじ
政治的なものの本質を「味方と敵の区別」に見出したカール・シュミット(1888-1985)の代表作。一九三二年版と三三年版を全訳し、各版での修正箇所を示すことで、初出論文である二七年版からの変化をたどれるように編集。さらに六三年版の序文や補遺等も収録した。行き届いた訳文と解説によって、「第三帝国の桂冠法学者」の知的軌跡が浮かび上がる。
感想・レビュー・書評
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現実の政治は多義的な要素を孕んだ複雑な営みである。だが本書でシュミットがやろうとしたのは、政治という概念をどこまでも純化していくとき、その極限に何が残るかを明らかにすることだ。経済が利/害、道徳が善/悪、科学が真/偽、芸術が美/醜の区別に準拠した言説体系であるならば、政治に固有の区別とは何か。それが友/敵に他ならない。この区別だけは他の言説体系に還元できない政治に固有の区別である。このことは必ずしも国家と国家の対外的な政治に限らない。国内においても政治秩序を維持する究極の担保は刑罰という物理的暴力であることを見ればよい。
本書が友/敵の区別を先鋭化し、いたずらに対立を煽るものだという理解ほど度し難い誤解はない。政治の究極の本質が友/敵の区別であるとしても、それが政治の全てであるわけがない。現実の政治の99%はその本質を顕在化させないための努力である。そこでは経済であれ道徳であれ、あらゆる言説が動員されもする。だが固有の意味における政治、即ち生死を賭けた闘争という1%の可能性を見ない政治は欺瞞であり、最終的な決定に伴う責任の回避である。その意味でシュミットは政治家の責任倫理を説いたウェーバーの弟子である。もちろん99:1というのは一つの比喩であり、その比重は状況に依存する。本書が書かれた危機の時代に後者のウェイトが高まるのは当然だ。
いずれにせよ和解不能な対立が潜在的には残る。そしてその限りにおいて政治の固有の意義が生まれる。ムフやベッケンフェルデのように、友/敵理論が浮き彫りにした価値の共約不能性に着目し、多元主義や自由主義との接続を図る試みも注目には値しよう。ただしそれが究極において敵の殲滅という政治の峻厳さへの覚悟を欠くならば、所詮「闘争ごっこ」に過ぎない。それはシュミットの意図を骨抜きにするものだ。1%の可能性を正視するからこそ99%の努力が真剣勝負になる。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
311.2||Sc
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2022/07/16Amazonに予約注文
2022/08/16Amazonから到着
本が行方不明になった。
発見して一から読み始める。