- Amazon.co.jp ・本 (512ページ)
- / ISBN・EAN: 9784003700013
作品紹介・あらすじ
三千年の歴史を有する中国の詩-そこには、道への志、政治批判、友情、望郷、恋愛、山水、仙界への希求など、自然と人間の万象がうたわれてきた。選りすぐった上古から清末までの五百首。核心を射貫いた解釈が、漢詩本来の芳醇で躍動する息吹を甦らせる。
感想・レビュー・書評
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訳も解説も読みやすくて、楽しかった。
以下、「へえ」と思ったところメモ。
・虹は不吉なもの→何かで虹のことをそういう風に受け取る文化があるって読んだけど古代の中国だったのか……(現代は?気になる)
・「鬱」がニワウメの意味だったりやっぱり憂鬱の鬱だったりする。ニワウメが気になって検索したら可愛い花だし汎用性の高い薬になるみたい。
・「風に舞う塵」という表現がでてきた。平家物語の元ネタこれなのかな?それとも昔はよく使われた言い回しなのか。
・姑にいびられて実家にかえったお嫁さんの詩「あなたの家の嫁となるのはむずかしい」という訳に、胸をギュッと掴まれたよ。一生懸命やったのにな、かわいそうにな。
・「七哀の詩」その一の解説、面白かった。名作映画の解説でも読んでいるのかと思った。
・「髣髴」って「彷彿とさせる」の「髣髴」かな。簡単な字になっただけで。だとしたら魏晋の時代から残って、今も使われている言葉なのか。
・陶淵明の「責子」好き。「阿舒はもう十六になるが、怠けぶりにかけては並ぶ者なし。(懶惰 故より匹無し)」のくだりが最高。揃いも揃って勉強嫌いな息子たちに「もー!」って思いつつ、でも可愛いがってそうな感じ、微笑ましい。
・「やんぬるかな」ってどう言う意味だっけ?と思いながら毎回、調べずにここまで人生を送ってきたけど、これで覚えた。どうするすべもないと言う絶望の感嘆詞らしい。でも現代に生きる日本人が絶対絶命で諦めるしかない時に「やんぬるかな!」って叫んだら、仰々しすぎてまだ余裕ありそうに思える。
・「木蘭の詩」これ、ムーランの話だよね。昔、ディズニー映画で観たぞ。伝承文芸・歌謡文芸で語られ続けてきたけど、記録された最も古い文献がこの北魏の『木蘭詩』ってことかな(ウィキペディア調べ)詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
岩波の新編が出たとTwitterで知り、在宅勤務中暇だったので読んでみた。なんだかんだで漢字文化圏に住む身として、中国の古典を日本語で味わえるのは幸福に思える。川合先生の現代語訳と解説も軽快で分かりやすい。個人的には赤壁賦が漏れてたのが少し残念。
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旧版に続き、新版のほうも最初から読んでみることに。
旧版に比べると、知っておくべき作品、有名な作品をこまめに集めているような感じがします。 -
精選された中国の漢詩を収録。上巻は上古から南北朝時代まで。
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すばらしいの一言です。
中学のとき、実はちょっと漢文好きだったなって人は意外といるのでは?
かくいう私もその一人ですが、国語の授業以外で触れる機会はなかなかありませんでした。
いつか読みたいな、と思っていたら、図書館でたまたま出会ったのがこれ。
上中下巻、それぞれ500ページくらいありますが、
いずれも原文・書き下し文・現代語訳のほか、充実した注釈と解説がついていて、
「漢文は好きだったけど文法は苦手・・・」みたいな人でも安心して楽しめます。
現代語訳もただ説明的に訳すのではなくて、
女の人が書いたという設定の恋の詩なら「あなたを待ちます」みたいな文体で、
狸奴(猫の俗称らしいです)は「にゃんこ」と訳すような、
学者先生のいじらしいほどの努力が垣間みえて、
ちょっと笑えて楽しく読めます。
上中下巻と順に時代を追いながら、
上巻は「詩経」に始まって下巻は元・明・清の時代まで、
漢詩の歴史を気軽に、かつたっぷり楽しめます。
◆個人的な感想◆
読む前は、漢詩といえば
「国破れて山河あり 城春にして草木深し」みたいな
壮大なスケールで描かれた情景が魅力だと思っていました。
読み終えた今ももちろん、日本にはない大陸的なスケールで描かれるそうした風景が漢詩の魅力のひとつだという思いは変わりません。
一方で、「たけのこはおいしいな」みたいな身近な題材を歌った漢詩や、たった五十六文字でゴシックロマンの重厚な物語を読んだような感慨を与えてくれる幻想的な詩など、
教科書の世界では知ることのできなかった魅力も知ることができました。
2018年上半期の読書でぶっちぎりの満足度でした。
こんな素晴らしい本を書いてくれて、世に送り出してくれて、そして私に出会わせてくれてありがとうと言いたいです。