- Amazon.co.jp ・本 (576ページ)
- / ISBN・EAN: 9784003700037
作品紹介・あらすじ
中国の詩の転換は、白居易らの中唐に始まり、蘇軾らの宋代に定着する。視線は雄大な風景から身近な自然へ、内面は情念の燃焼から理性の輝きへ。さらには新時代の予感を新たな感性で捉える元・明・清の詩。長い歴史のなかでの成熟と展開を、鮮やかな解釈を通して読む。
感想・レビュー・書評
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『新編中国名詩選』が三冊あって唐宋時期に有名な詩をたくさん収めている。自分は晩唐時期の詩が一番好きなので、下編を選んだ。宮廷を描いている初唐の詩と社会の繁栄を謳歌する盛唐の詩より、晩唐の文人はおおむね党争や世情の混乱の中で不如意を強いられたから、書いた詩も複雑な気持ちがあって、感情がより深まると思う。
詩そのものはともかく、日本語で詩の意味を翻訳するのは大変難しいということは言わなくても分かるだろう。しかし、本書で情緒さえもよく伝える翻訳が多くあることに気づいた。翻訳のおかけで、その詩に対してもっと深くて新しい理解を出てきた場合もある。
とにかく、中国の古い文学に対して興味があれば、漢文より唐詩を勧めたい。特に本書は一読の価値がある。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
上中下あわせて読んでみたが、統一されたフォーマットで、古代からの近代までの数多くの名詩に触れる事が出来る点、漢詩に興味を持つ人向けの定番の書といったところ。そこから好みの詩人を見つけて、自分なりの漢詩の世界を広げていきたい。分厚いながら文庫サイズだから、旅行のお供にも良いかもしれない。
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下巻はやっぱり白居易と蘇軾。
旧版と較べて良いのは、やや字が大きくて読みやすいところかな。 -
下巻の中では、李賀の「雁門太守行」が好きでした。
最初に読んだときの強烈な印象が忘れられず、図書館でもう一度借り直して読みました。
戦を終えた城の夜の風景を、鮮烈に描き出す筆致がすごい、というのが最初に読んだときの感想です。
一行目の「黒い雲の圧力で城が砕けそうだ」という印象的な比喩から、一気に不穏な世界観に引き込まれてしまう。
二回目に読むと、また違う魅力が見えてきました。
例えば五行目の「半巻紅旗臨易水」(力なく半ば垂れた紅旗が易水(川の名前)に臨み……)という描写。
最初の4行には、旗に関する記述は一切出てきません。
なのに、五行目を読んだときには、描かれている旗のイメージがすでに頭の中にぼんやり見えている。
その見えている旗のイメージを、五行目で「すぱーん!」と言い当てられているような感じ。
ものすごく主観的で、読んだ全員がこんな感覚になるわけじゃないと思いますが・・・
とにかく、いつも新しい読書体験をもたらしてくれる一作です。
これが、たったの56文字で表現されているんだから本当にすごい。
最近の言葉でいえば・・・コスパ良すぎです!笑