- Amazon.co.jp ・本 (216ページ)
- / ISBN・EAN: 9784004202868
作品紹介・あらすじ
1881年にドストエフスキーが没してから百年が経過した。この間、彼の作品は様々な事件や現象を驚くべき正確さで先取りしてきた。その予言性はいかにして可能になったのか。著者は彼の作品が持つ重層性、多義性を読み解き、十九世紀末のロシアの土壌から二十世紀の世界的現実を見通した、ドストエフスキー文学の新しさを解き明かす。
感想・レビュー・書評
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ドストエフスキーの作品について、彼の生きた19世紀ロシアの状況にもとづく解釈を展開している本です。
「われわれは皆ゴーゴリの『外套』から出てきた」というのは、ドストエフスキーのよく知られていることばですが、著者はこのことばが「出てしまった」というニュアンスで理解することができると指摘しています。そして、『貧しき人々』以来ゴーゴリを継承する作家として自他ともに認めてきたドストエフスキーが、パロディめいたユーモアをその作品のなかに用意していたことが明らかにされています。
日本の作家や小説家によって、深遠な哲学的思想を文学作品のなかで展開した文豪として理解されてきたドストエフスキーですが、その作品のうちに「笑い」の要素が含まれているということについては、中村健之介などの解説書でも指摘されていますが、本書の議論もそうしたテーマをとりあげたものといえるように思います。
また著者は、ロシアの神話や民俗にかんする背景的知識を解説しつつ、ドストエフスキーの作品がもつ重層性を明らかにしています。
ドストエフスキーの作品は、多様な読みかたのできる豊かさをもっていますが、本書で語られているようなことがらは一般の読書人にはわからないことも多く、興味深く読みました。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
[ 内容 ]
1881年にドストエフスキーが没してから百年が経過した。
この間、彼の作品は様々な事件や現象を驚くべき正確さで先取りしてきた。
その予言性はいかにして可能になったのか。
著者は彼の作品が持つ重層性、多義性を読み解き、十九世紀末のロシアの土壌から二十世紀の世界的現実を見通した、ドストエフスキー文学の新しさを解き明かす。
[ 目次 ]
1 新しい小説世界(「新しいゴーゴリ」の登場?;「哀れな人びと」か「貧しき人びと」か;プーシキンの発見―メタ文学;題名ラプソディ;聖と俗の二層舞台;ゼロの語り手)
2 ロシアの土壌、ロシアの神々(「悪霊たち」のルーツ;「白痴=ユロージヴイ」の系譜;分離派セクトの人びと;巡礼歌の旋律;異界との触れ合い)
3 小説をまねる現実(予告された皇帝暗殺;恐怖としての民衆;ユートピアと逆ユートピア;世界を救うのは美?)
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絶版。
図書館にて。