- Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
- / ISBN・EAN: 9784004203384
作品紹介・あらすじ
本書は法を専門としない人々を対象に、法の仕組や法律学の性格を分りやすく解説したものであり、好著『法とは何か』の姉妹編である。法論理の重要性、近現代法学の歴史と問題点、制定法と生ける法の関係、裁判の役割と裁判過程を詳しく解説する。また市民法の生存権的側面に光を当て直し、権利社会確立のための法律学を構築しようとする。
感想・レビュー・書評
-
1986年に発表された本。
法学部志望の学生には是非入学前に読んでおくことをお勧めしたい。この種の書籍を読んでおくことで学習する際の意識も大きく変わってくると思う。また、それ以外の人にも法に関する知識を得るためには良い一冊。できるだけ平明に書かれており、具体的な判例も随所に散りばめられており分かりやすい。
特に国民の権利の箇所では、30年以上経った現在でもさほど変わっていないと感じる点も多い。権利意識の希薄さは、日本人の国民性もあるだろうが、もっと義務教育に織り込む必要があるのではないか。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
『法とは何か』の続編にあたる本である。
『法とは何か』が基本的な部分を、広く展開しているので、
本書はそれに対して、足りない部分をより細く説明しているという印象がある。
ただ、内容的には、法を学ぶというよりも、
法とは何かという方がまだ適切かもしれないと感じる。
日本において、法や権利がどのように捉えられているかを、
あらためて考えることができたように思う。
その上で、
法が政治権力の行使をコントロールするためのルールである
という指摘には、ギクリとさせられる。
いま、そうなっているだろうか。
一票の格差や憲法の改正など、
法が政治権力をきちんとコントロールできているだろうか。
権利は、単なる個人の利益とは違うという指摘も、
今の社会で必要な視点であるように思う。
社会的な正当性、社会正義というと、重苦しく堅いけれど、
権利の主張というのはそういう側面があるということが軽視されているような気もする。
“歴史を広く見とおして眺めるならば、法とは政治権力の行使をコントロールするためのルールである、という観念が、すべての法律学の基礎である。政治権力や国家に対する「法の優位」、言いかえれば、政治や国家の上に法があるということを前提としなければ、そもそも法や法律学の存在理由はない。” -
『法とは何か』(岩波新書)の姉妹編です。
前半は、いわゆる基礎法学に関する内容を扱っています。
後半は、裁判の果たす役割や、現代の日本における裁判が抱えている問題などについて解説しています。
最後の「権利社会の確立のために」と銘打たれた章では、日本人の権利意識の低さを指摘した川島武宜の『日本人の法意識』(岩波新書)に対する、著者の意見が述べられています。川島は、日本人の権利意識の低さの原因を近代化の未成熟に求め、近代化が進めば日本人の権利意識も向上すると考えました。しかし川島の指摘から20年が経過し、日本社会の近代化が進んだにも関わらず、なお日本人の権利意識が低いままなのはどうしてなのかと著者は問いかけます。その上で著者は、日本人はかつてに比べて利益の追求に熱心になったが、その追求の仕方は他の私的利益との対立の中でみずからの利益を確立するという仕方ではなく、各集団の中で、集団に依存しながら、集団全体の利益の一部の配分を受けるという仕方でおこなわれているとされています。著者はこうした特質を「ぐるみ利益共同体」と名づけ、こうした特質が、現代の日本人の権利意識の成長を阻害していると論じています。 -
法学の基礎について勉強出来ます。
法に関係ない人でも読んでみてください。 -
我が指導教授が高校生時代に読んでその内容に感動し、法学部を目指すことに決めたという紹介をされた1冊。個人的にはその後の『法とは何か』に先に触れたので、その教授が「いや、こちらのほうがよくできている。」と評価した原因がまだ自身の未熟さゆえにつかめていないのが残念で悔しいところなのですが(苦笑)、大学生活を控えて今ゆっくりできる春休みくらいに触れてみてはどうかとすすめる1冊です。小生も、自分の人生の中でもっとはやく知っておけばよかったなと思ってしまうので。。。