裏日本: 近代日本を問いなおす (岩波新書 新赤版 522)

著者 :
  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (216ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004305224

作品紹介・あらすじ

「裏日本」とは本州の日本海地域、とりわけ北陸・山陰をいう。そして、この呼称は単なる自然地理概念ではなく、20世紀初頭、「表日本」に対するヒト・モノ・カネの供給地とされていくなかで成立し、定着したのである。歴史の実相をたどりつつ、「裏日本」を必然とした日本の近現代を問い直し、二一世紀に向けての視点を考える意欲作。

感想・レビュー・書評

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  • だいぶ前に読んだ時には結構面白く読めたんだけど、時間をおいて再読してみたら、なぜかうーん…という感じ。面白い内容ではありますが、いかんせん、少し「古い」本になってしまった感は否めないかな、と思います。

    この本で定義する「裏日本」とは、山陰と北陸のこと。その地域が日本の開発や発展から取り残されてしまった経緯を細かく丁寧に拾っています。中央・大都市・工業優位の効率的なシステムを構築するにあたり、地方・農村・農業が崩壊したという点は、ある程度分かったつもりでいる知識ではあるものの、改めて整理されたうえで提示してくれているので、理解しやすい内容となっています。

    原発や水資源に関する記載もあるので、3.11を経た今、改めて読み直す価値はそれなりにあると思います。

  • 裏日本の定義などを云々するパートは普通でしたが、地域間格差や差別的構造を、国策をして地域毎の分業とする考え方への反論は面白かったです。
    基地や原発に通底するものが見えるような気がしました。

  • いわゆる裏日本から表日本に人材が流出した

    という事実は知っていたが、

    本書を読み、明治初期に人だけでなくお金も裏日本から表日本へと流れ、

    表日本と裏日本に不均衡な発展があった

    ということを理解できた。

  • 過去の新聞記事を漁っていたら、2009年春に、自分が影響を受けた本として谷本正憲石川県知事が薦めていたので購入。次読む。

  • 「『裏日本』とは本州の日本海地域、とりわけ北陸・山陰をいう。そしてこの呼称は単なる自然地理概念ではなく20世紀初頭、「表日本」に対するヒト・モノ・カネの供給地とされていく中で成立し、定着したのである。」

    以上は著者による「裏日本」の定義。
    私は北陸や山陰出身ではないどころか
    ほとんどその地に足を踏み入れたこともない。
    むしろいわゆる「裏日本」を犠牲として栄えた
    東京でゆるゆると暮らしている。
    ニュースで水不足が報じられても水道からは
    水がジャージャー流れてきたし、
    とんでもない停電になったこともない。

    この本はまさにそういう私のような腑抜けが読むのにふさわしいのではないかと思う。
    何も知らず、ただ便利な毎日が誰にでもあると
    そう勘違いしている、そういう私に
    衝撃を与えた一冊。


    中国は革命の時に
    「先知先覚」というスローガンを掲げた。
    知っているひとから自覚して行動していこう。
    つまりは知識人たちが、エリートがリーダーとなるそういう構造。
    もちろんその先知者が夢と理想に追われている間は熱い革命となるが、
    世の中が安定し、まとまると結局はただの
    「上からの政治」「知ってるヒトだけ得をする世の中」になっていく。
    法律は作ったヒトに有利に作られていると
    言われるのがわかりやすい例だろうか。

    鄧小平は「先に豊かになれるものから富め」と言うようなことを述べ、
    中国は高度成長期を向かえ、沿海地区の都市は
    アジア最大の都市といわれた東京を脅かすまでに
    なっている。
    近代日本もそれをやってきた。
    そして今日本にあるもの。
    発展した中国にあるもの。
    一目瞭然だ。
    得するヒトは得をし、
    損したヒトは得をしたと思い込まされている。
    豊かであるというのはどういうことか、
    考えさせられる。

  • ふむ

  • 裏日本という単語自体は初耳だったが、日本海側に対してもっていたイメージは裏日本そのものだった。しかし、過去には日本海側の方が豊かであった。日本海域に対するまなざしは現在に束縛されている。歴史を知ることで現在から解放してはじめて、日本海のポテンシャルは開かれる。

  • ・表の発展のために裏が必要とされていた
    ・北前船の寄港地として、また北海道との交易により栄えた時代があった。西洋船の普及や鉄道輸送に切り替わると衰退していった。
    ・富国強兵の原資は地租。明治20年では政府税収2/3を担っていた。裏日本が捻出した利益を太平洋側に投資する構図。
    ・労働力も工業化に伴い裏日本から捻出を余儀なくされた。先述の米に限らず、ひいては電力までも
    ・大正に入るとウラジオストクとの交易が盛んであった福井の敦賀港が栄え、新潟港を逆転する。
    ・明治29年に新潟で大災害が発生し致命的な被害が発生するも国は冷淡な対応。県民に意識が芽生える。
    ・治水や港湾、鉄道の整備などの点で国の援助の少なさに不満が噴出。ここで県議から地理的要因としてではなく地域格差を含むニュアンスで使われたのが裏日本の始まりとして事実に残る。明治38年
    ・「資本的表日本と民衆的裏日本」など日本海の扱いや展望について様々な言論が飛び交う
    ・上越線の使命は新潟経由で満州国と東京を結ぶため。まさに国家戦略によって敷かれた路線
    ・北海道、満州、朝鮮などへ多くの裏日本民が成功を祈願して渡っていった。満州国の建国は裏日本にとっての飛躍の機会であり、日本海湖水化をイメージすることで裏日本からの脱却を図ろうと期待した。
    ・裏日本という言葉が反応されるようになった高度経済成長期には、太平洋ベルトに傾斜がかかりまたも裏日本は置き去りにされた。

    結局のところ、日本の成長は裏日本なくしてなかったことには変わりないが、犠牲への対価があまりに少なく、その差別されてきたという意識を過去からずっと引きずることで裏日本イデオロギーは形成されてきた。さらには原発など面倒なものを押し付けられたり、とにかく損な役回りを今も果たしている。

  • 「裏日本」という言葉は差別的ニュアンスも含むとして1960年頃から既にNHKでは用いられなくなった。しかし、筆者は、この言葉を使って色々な分析を試みることで、明治以来の近代日本のあり方を問い直している。

  • 著者:古厩忠夫(ふるまや ただお、1941-)(中国近現代史)

     いまや放送禁止用語に指定されている「裏日本」(日本海側の地域)の歴史について詳しい。


    【目次】
    序章 「裏日本」――もうひとつの日本近代史 001
    (「ナホトカ号」事件と信濃川の水/田中角栄をめぐる温度差/二〇世紀史としての裏日本史/格差のシステム/「裏日本イデオロギー」/「裏日本」の範囲/東北地方との違い/本書の用語について)

    Ⅰ どのように形成されたか 019
      一 裏日本以前――日本海交通の繁栄
      二 ヒト・モノ・カネ移転システムの形成
      三 北陸の「半周辺性」

    Ⅱ 自己イメージと「県民性」 077
      一 裏日本観念の形成
      二 県民性論議と裏日本文化
      三 裏日本の対外硬派と大正デモクラシー

    Ⅲ 脱裏日本の道――対外進出論と列島改造論 131
      一 大陸進出=表アジア化の道
      二 日本列島改造論

    終章 「裏日本」を超えて 177
      一 内発的発展の道
      二 環日本海地域交流
      三 巻町住民投票をめぐって

    参考文献 [209-213]
    あとがき(一九九七年) [214-216]

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