明治人ものがたり (岩波新書 新赤版 577)

著者 :
  • 岩波書店
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感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (218ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004305774

感想・レビュー・書評

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  • 『魚河岸ものがたり』を読んでいて、健作の塾の教え子が結婚が決まった時のエピソードとして、母が姉妹の結婚のために贈答品をストックしていたところ、姉が妹の分までねだったというくだりがあり、幸田文の『きもの』にも次女が主人公・るつ子の新品の着物に目をつけるという場面に似ていると思った。
     そういえば、森田誠吾の『明治人ものがたり』に幸田文と森茉莉に関する話があったはずと思い、読み直してみた。文豪である父の影響を深く受けた二人の人としての違いが印象に残った。永井荷風が二人がそれぞれに会った共通人物として出てきたことや、第2話の「森銑三」にも永井荷風が出てきたなと思った。
     一人の人物から共通する人物や作品を連想していくことができる作品。自分も興味があると次々にいろいろな本を読んでしまうので、森田誠吾と似たような読書傾向があるのかもと思った。

  • 再読・好著。再購入2014/05/06

  • 収録作品「マリとあや」
    この二人は、『文豪の娘』で『作家』であるという点が、似ていると、ありとあらゆる所で言われておきながら、本質が水と油並に異なっているので、並べて論じられることが少なかったから……。こういうのを待ってた! という感じ。

    二人の生涯で顔を合わせたのはたった一度だけ。それも、言葉を一切交わさなかったというのが、こういうのは語弊があるかもしれないけど、ドラマチックだなあと思ってしまった。

  • 摂南大学図書館OPACへ⇒
    https://opac2.lib.setsunan.ac.jp/webopac/BB99479934

  • 【由来】
    ・アテネの最終日で

    【期待したもの】


    【要約】


    【ノート】

  • 明治天皇、森銑三、そして森茉莉と幸田文が取り上げられている。
    これらの人物について、「情報」が欲しくて読むと、ちょっとがっかりするかも。
    「ものがたり」と題されているように、筆者の語り口や、取り上げ方、扱い方を楽しむための本なのだから。

    明治七年、明治天皇の「恋」が取り上げられているからといって、その相手が誰だとか、どういった経緯だったのかは、語られない。
    星新一の『夜明けあと』を導きの糸として、明治期には天皇について語ることが寛容に受け止められていたことを浮かび上がらせる。
    星新一にそんな本があるということも、初めて知った。
    一度読んでみたい気がする。

    『好色一代男』以外は西鶴の真作ではないという異説を打ち立てた森銑三。
    この本では、その説の真偽を検証するのでなく(でも、筆者は限りなく「偽」の立場に立っているようだが)、在野の学者として、死してやっと敬われた森の生涯を共感的に描いている。

    森茉莉と、幸田文二人の、たった一点で交わりかかった二人の生涯を描いた最終章も、なかなかおもしろい。

    文の娘、青木玉の『小石川の家』を先月読んだ。
    その中では戦時中の困窮の中で、露伴の気にいるように必死で家を切り回す文の姿が描かれている。
    もちろん、孫娘の視点からということになるけれど、晩年の露伴は、かなり身勝手で、それにひたすら耐え続ける文、といった印象を受ける。

    が、この本では、文と露伴の関係が、気の合わない親子ではあったものの、もう少しあたたかいものがあったとされる。
    「父の慈愛」が打ち出されているのだ。
    それは、一緒に扱われている鴎外のベタベタなパッパぶりと対照されてそう思うのか、それとも筆者が相応の年齢の男性であるためなのか。

    • kuuzannさん
      ご無沙汰です

      この本は読んでいませんが、露伴と文の関係は決して冷たいものではありませんでした。
      文は長女や弟が愛されたほど父からは愛...
      ご無沙汰です

      この本は読んでいませんが、露伴と文の関係は決して冷たいものではありませんでした。
      文は長女や弟が愛されたほど父からは愛されなかったという自覚を持っていましたが、それで僻むということはなかったと思います。書いたものからは姉や弟が愛されるのを当然と思っていたように読み取れます。僻みは少しはあったかもしれませんが、それで父を恨むということはなかったでしょう。
      露伴は文に対してはかなり厳しく接したように見えますが、それは愛情があればこそで、昭和平成に生きる私達の価値観からは理解が難しいのかもしれません。そんな父に対して文も愛情を持って接していたと思います。
      ところで、青木玉の娘の青木奈緒は読んだことがおありでしょうか?露伴から見ると娘、孫、ひ孫と四代に渡る文筆家ということになり、これも珍しいのではないでしょうか。

      空山、こと雁来紅
      2014/01/05
    • gaacoさん
      空山さま、新年おめでとうございます。
      そして、お久しぶりです。
      いろいろとご教示ありがとうございました。
      親子関係は、やはり余人にはう...
      空山さま、新年おめでとうございます。
      そして、お久しぶりです。
      いろいろとご教示ありがとうございました。
      親子関係は、やはり余人にはうかがい知れないものがありますね。
      青木奈緒さんの文章は、雑誌に掲載されていたものを読んだことがあるくらいです。
      機会があったら読んでみたいと思っています。
      2014/01/06
  • カテゴリ分けにものすごく迷った…。随筆の類になるのかな?
    明治天皇の恋、学校歴が無い事で苦労した森銑三、お互い文豪の娘である森茉莉と幸田文。三つの話はまったく人物を知らなくても面白いと思う。
    この本を書くきっかけになった著者さまの事故の体験談からして興味深かった。最初から最後までサクッと読めた。

  • 「睦仁天皇の恋」「学歴のない学歴」「マリとあや」の3遍を通して、
    明治と言う時代、その時代に生を受けた人間を描く。

    明治時代の皇室報道、市井の学者・森銑三のプロフィール、
    共に興味深い。

    そして、最終章「マリとあや」は中篇にもかかわらず、長大な大河
    作品を読んでいるようだ。

    森鴎外の娘・茉莉、幸田露伴の娘・文。

    共に明治の文豪を父に持ち、父亡きあとはその思い出を綴って注目を
    浴びたふたりだが、その育ち方・境遇はあまりにも違う。

    父・鴎外に盛大に甘やかされて育った茉莉。父・露伴の厳しいしつけ
    を受けて母に代わり家を切り盛りして来た文。

    ふたりそれぞれの作品を読んだことはあるが、1年違いで生まれた
    ふたりを対比してみると新鮮だ。この最終章だけでも読む価値あり。

    文さんは辛いことが多かったのだろうが、父と娘の関係は露伴と文の
    方が個人的には好きだな。

    育ち方も影響しているのだろうか。文さんの書いたものからは凛と
    した雰囲気が伝わって来る。

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