熱帯雨林 (岩波新書 新赤版 624)

著者 :
  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (205ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004306245

作品紹介・あらすじ

陸上生物の種の八割を産するといわれる熱帯雨林。そびえ立つ40mを越す常緑樹の頂部でくりひろげられる生物たちの営みは見る者を圧倒する。動物たちの呼び声ではじまる朝、活発な生物活動が展開する昼、芳しい香りの夜。世界各地のフィールドで観察をつづける著者が、森の実像を生き生きと描き、多様性の秘密に挑む。

感想・レビュー・書評

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  • 東大教授おすすめ
    環境問題系
    まずはこれからとのこと

  • まじで当たり本です。名著です。あと数年たってもこの本の価値は変わらないと思う。

    十分な太陽光と十分な水がある熱帯地方では、陸上生物の種の八割を産するといわれる熱帯雨林がある。その熱帯雨林での生物の営みを書いています。

    熱帯雨林には「山菜」というものがほとんどない。これは植物を食べる昆虫などから身を守る作用ですが、日本の温帯地帯とは比べられないほど多種多様な植物を食べる生物がいます。植物を食べる生物の代謝系に異常をもたらす化学物質を植物が生産するようになり、これにより、熱帯雨林が未知の化学物質の宝庫だといわれる所以である。医薬品になる化学物質も植物からが多く、いまだに熱帯雨林の植物の化学物質がもとになってつくられるものもある。

    あと、生物の系統で使われる「界」「門」「綱」「目」「科」「属」の概念が少し分かってきた★

    「共生関係」について
    共生関係にもいろいろあって、相利共生関係と呼ばれるものは、お互いが利益を得る共生関係。
    例えば、アリに植物を食べる生物から身を守ってもうらかわりに、アリに報酬(蜜)を与えるという関係。
    あまりにも見事な相利共生関係をもっている生物がいるので、利他的行動が働いているのかと思うが、結局は利己的行動が先行する利己原理によって成り立っている。これを具体的な実例で紹介しているところが素晴らしかった。

    「なぜ熱帯の花には特殊化したものが多いか」P119
    ここが一番気にいってます。特殊な花を咲かせ特定の昆虫などを引き付けるのは、植物にとって多大なコストがかかる。それでも熱帯地方の競合となる植物が多い豊富な動物相では、特殊な花をさかせ虫を引き付ける。それに対し、単一林からなる種が少ないところでは、特殊な花を咲かせることはしないで虫による受粉ではなく、風によって花粉を飛ばす種がほとんどである。 競合が多い植物の世界では、多大なコストを払ってでも特殊な花を咲かせ虫を引き付けないと生き残ることができない。単に風による受粉では種を維持できない。

    競合が少ないエリアでは無理に差別化することなく一番効率がいい広め方に注力し、競合が多いエリアでは極端な差別化をすることで生き残っていけるということを、熱帯雨林の植物が物語っているなーと思う。

    読んでいてワクワクしました。

  • 熱帯雨林を生態学や生物史の視点からとらえる。熱帯雨林が多様性を育んでいる要因や、生物種間相互作用、大型哺乳類の生存のための広い保護区の必要性が説明されている。

    ・南米の熱帯雨林ではマメ科やクワ科が、アフリカの熱帯雨林ではマメ科が優占する。
    ・初めて虫媒性を獲得した植物は、石炭紀のシダ種子植物。白亜紀のテーチス海は暖かくて浅く、アンモナイトと魚類が繁栄し、それらの遺体が石油となった。
    ・熱帯雨林の主要な樹種グループには菌根を形成するものが少なくない。熱帯以外で優占するブナ科やマツ科も外生菌根を持っており、外生菌根樹種と森林での優占度には関係があるという仮説がある。
    ・フタバガキ科の植物はゴンドワナ大陸起源で、その菌根菌はアジア温帯域のブナ科植物と同じ系統。
    ・東南アジアの熱帯低地林では、ゴンドワナ要素のフタバガキ科などが繁栄し、山地林ではローラシア要素のブナ科などが繁栄しているように見える。
    ・タイは戦前には国土の8割が熱帯林に覆われていたが、1990年には3割を切った。フィリピンは19世紀には国土の7割が森林だったが、今は3割で原生林はほとんど残っていない。主な原因は商業伐採で、特にフィリピンでは日本への輸出のための伐採が多かった。
    ・保護区の面積と生き残っている大型動物相には明らかな関係があり、面積の小さい国立公園が多い東南アジアでは空洞化現象が顕著。
    ・大型動物の消失は、植物にとって種子散布を担ってきたパートナーを失うことに相当する。

  • [ 内容 ]
    陸上生物の種の八割を産するといわれる熱帯雨林。
    そびえ立つ40mを越す常緑樹の頂部でくりひろげられる生物たちの営みは見る者を圧倒する。
    動物たちの呼び声ではじまる朝、活発な生物活動が展開する昼、芳しい香りの夜。
    世界各地のフィールドで観察をつづける著者が、森の実像を生き生きと描き、多様性の秘密に挑む。

    [ 目次 ]
    1 林冠の世界へ
    2 熱帯雨林とは何か
    3 多様な植物の世界
    4 種の多様性
    5 多彩な生物間相互作用
    6 一斉開花の謎
    7 熱帯雨林と人間

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    [ 参考となる書評 ]

  • 相当マニアックな内容だが、いわゆる写真集で表面をなぞるだけでは、うかがしれない「熱帯雨林」の生態が分かって面白い。

    ・林床に動物はいない。林冠にいる。
    ・熱帯雨林には簡単な処理で食べられる葉、山菜はほとんどない。植物を食べる敵対者への対抗進化が、薬や毒素を産んできた。
    ・極相については、新熱帯をやっている人と旧熱帯(アマゾン)をやっているひとで結論が違う。
    ・高温多湿であるために、有機物の分解が速い。そのため土壌は薄く、大木の根も浅い。
    ・種の半分が地表3%の熱帯雨林にいる。門の多様性では、動物界の門の七割は海にしか生息していない。

  • 一言で熱帯雨林といっても、動物相、植物相、昆虫相、そして人間との関わりや産業としての位置づけなど、様々な語り口があるものだと感心した。とくに、動物(昆虫含)と植物の駆け引き豊かな共生・競争には脱帽。単に自然の驚異といってしまえばそれまでだが、やはり何億年のレベルで進化してきた生物には、人間の浅知恵など爪の垢のようなものだ。なかなかこうした研究は大変そうで、これらを明らかにしてきた著者を含めた研究者達にも頭が下がる。

  • 熱帯雨林の真実が分かります。
    でも、恐竜の話がね。。

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著者プロフィール

京都大学霊長類研究所教授
専門分野:生態学
主著:『屋久島―巨木と水の島の生態学』(講談社、1994年)、『熱帯雨林』(岩波書店、1999年)、『シカと森の現在と未来―世界遺産に迫る危機』(共編著、文一総合出版、2006年)、『食卓から地球環境がみえる―食と農の持続可能性』(編著、昭和堂、2008年)、『シリーズ日本列島の三万五千年―人と自然の環境史』(全7巻)(編著、文一総合出版、2011年)など。

「2019年 『ユネスコエコパーク』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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