植民地朝鮮の日本人 (岩波新書 新赤版 790)

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  • Amazon.co.jp ・本 (236ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004307907

感想・レビュー・書評

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  •  本書は、1876年の日朝修好条規の締結による釜山の開港から、1945年の日本の敗戦と朝鮮の独立にいたる、日本と朝鮮の植民地支配の詳細な研究であるが、これを読めば現在2チャンネル等で叫ばれている右翼的言説などがいかに歴史の現実を見ていないものであるのかがわかると思った。
     幕末の日本は、諸外国から不平等条約を強制されて、その是正に苦労したことは知っていたが、その「被害者」である日本が、朝鮮に対しては「関税自主権」どころか「関税」そのものさえ認めない無慈悲な「加害者」であったとは、驚いた。
     本書の種々の資料を駆使した当時の実態は、「差別」のなどと生易しいものではなく、まるで牛馬の「区別」のようなすさまじいものであったことがわかる。
     殖民の実態についても詳細に研究されているが、その内容はほとんど「略奪」のように思え、現在では非難の対象でしかないようにも思える。
     さまざまな産業の振興についても、その目的はあくまでも日本のためのものであることは明らかで、現在よくいわれる「日本も良いことをした」などという説がいかに空疎なものであるのかがよくわかるものであると思った。
     しかし、本書は読みにくい。多くの資料から数値を引用しているのだろうが、やたらに詳細すぎて、全体の分析がわかりにくい。文章全体のトーンが暗すぎて、読み続けるのが困難だとも感じた。
     テーマ自体が重いのであるから、それは仕方がないのかもしれないが、一部の専門家以外にも読者を広げ、啓蒙しようとするならば、もう少し工夫が必要ではないかとも思った。本書は「植民地朝鮮」の歴史を知るためには良い本であると思うが、読みにくい難書でもあるとも思った。

著者プロフィール

1944年茨城県生まれ、東京教育大学大学院文学研究科修士課程中退(1970年)、思想の科学社編集部員などを経て、現在は津田塾大学教授。
〈主な著書〉
『朝鮮の土となった日本人』(草風館)、『植民地朝鮮の日本人』(岩波新書)、『検証 日朝交渉』(平凡社新書)ほか。

「2005年 『検証 日朝関係60年史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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