- Amazon.co.jp ・本 (228ページ)
- / ISBN・EAN: 9784004310129
作品紹介・あらすじ
近代の理念と現代社会との葛藤をみすえつつ、理性とリベラル・デモクラシーへの信念を貫き通した丸山眞男。戦前から戦後への時代の変転の中で、彼はどう生き、何を問題としたのか。丸山につきまとうできあいの像を取り払い、のこされた言葉とじかに対話しながら、その思索と人間にせまる評伝風思想案内。
感想・レビュー・書評
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丸山真男の生涯と思想について、評伝のかたちで解説している入門書です。
著者は、これまで丸山を批判する論者も擁護する論者も、ともに丸山を「体系建設型」の思想家として考えすぎたのではないかと述べています。そして、丸山がある座談会の席でのことばを参照しています。そこでの丸山の発言によると、「体系建設型」の学者は自分の思考のうちにひとつの体系ができあがっており、個々の問題をどうやってその体系のうちに組み込むかと考えるのに対し、「問題発見型」の学者は「現実のドロドロした混沌のなかから新しい視角をみつけてゆく」姿勢をとるとされています。
たしかに、めざすべき到達点として「近代」のリベラル・デモクラシーの理念を置き、それに向かう途上にその時々の現実を位置づけていこうとする丸山の論法に着目すれば、「体系建設型」の思想家と見ることは可能でしょう。しかし著者は、政治について、あるいは日本の思想文化について、時代に応じてさまざまな議論を提示した丸山の軌跡には、むしろ「問題発見型」の色合いが濃いのではないかと論じています。こうした丸山の思想の特色を浮き彫りにするには、本書のような評伝という形式こそがうってつけだというべきなのかもしれません。
本書はこうした観点から、丸山の思想形成から戦後の華々しい活躍を経て、「個」と「理性」の分裂に直面した晩年の困難を、簡潔にたどっています。そして、時代のなかで「リベラルであるとはどういうことか」という問題をたえず問いなおしてきたことに目を向けながら、丸山という思想家のすがたをえがき出そうとしています。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
丸山真男―リベラリストの肖像
(和書)2012年10月10日 16:38
2006 岩波書店 苅部 直
苅部直さんについては柄谷行人さんの長池講義でお目にかかったことがあり、そのうち著書を読んでみようと思いながらいました。それで最近、丸山真男さんが面白いと思い始め、苅部さんが書いているということもあってこの本を手の取ってみました。
非常に面白いです。これからでも丸山真男さんについて勉強して行きたいと考えています。
この本の最後に書かれていた・・・信頼できる「人間」を選ぶ・・・について、僕にとって、柄谷行人は信用できると思って考えてきたことと重なる。
柄谷行人さんもデモについて丸山真男さんの考えを話していたことがある。
面白い。 -
丸山は愛読していますが、難しくて何度読んでもわからないことも多く、また安保闘争での演説の印象も非常に強くありました。
しかし、丸山の人生史を辿りながら、彼がどのような歴史的あるいは個人的文脈の中で、何を問題としてきたのかを明確にこの本がしてくれたおかげで、丸山の著作各々の意味と連携がとても見えやすくなりました。
丸山の著作を読む上で、必須の一冊に思います -
丸山眞男の評伝というか、21世紀初頭における政治状況とあわせた「読み直し」に近いものかと思う。
1960年代以降の世間的なレッテルと、本人の思想の間に齟齬があることは知らなかった。もちろん著者の深読み(あるいは新たなレッテル)である可能性もあると思うけど。
丸山自身にも大きな影響を与えた1933年の日本の状況については、考えさせられる。満州事変後の好景気の一方で、特高警察による逮捕・拘束、そして拷問が行われているというコントラスト。 -
今まで丸山眞男を真面目に読んでいなかった不明を恥じる。高校生時代の逮捕、東大法学部から助手になりながらも二等兵として二度にわたる徴兵と広島での被爆など壮絶な体験をしている。國體明徴と天皇制を批判した偉大なリベラリストの思想は今日益々重要さを増している。
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人間、丸山真男について。
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2016/10/8
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「人生は形式です」
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丸山眞男への手始めにと手にした評伝。対象への距離感がほどよく、するする頭に入ってきた。生まれ育った環境や、高校時代の事故的な逮捕による拘留経験、本位とは別に左翼から戦後民主主義のオピニオンリーダーに担ぎ出され、挙句の果てには騙されたと全共闘学生に吊し上げられ…と偶然性や周囲の妄想やらに振り回されながらも、日本の未来を常に鑑み理性をもってリベラルデモクラシーを追求し続ける姿勢と信念に胸を打つ。「他者をあくまで他者としながら、しかも他者をその他在において理解する」この晩年の丸山の呼びかけは肝に銘じておきたい。
最後に庄司薫をもってきたのはズルい。『赤頭巾ちゃん気をつけて』を読んだ丸山が泣いてしまったのはあの部分だったのか!(やっぱり!)と、気づいてしまって私も落涙、、、