中国残留邦人: 置き去られた六十余年 (岩波新書 新赤版 1119)

著者 :
  • 岩波書店
3.67
  • (1)
  • (4)
  • (4)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 37
感想 : 5
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (242ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004311195

作品紹介・あらすじ

"国策"で送り出され、敗戦により中国に置き去りにされた人々。そんな「中国残留婦人・残留孤児」たちが、なぜようやく帰国できた祖国を相手に裁判を起こしたのか。残された課題は何か。果たして個人にとって国家とは何なのか。『終わりなき旅』から二十余年、「国家の怠慢」の全貌とそれに翻弄され続けてきた人々の姿を描き出す。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 先に読んだ残留孤児に関わる本に続き、こちらも読破。
    歴史的認識として満州国が傀儡政権であったと言われているが、満州国へ日本のために人民を送り出すなんてことをやっていたことを考えればその通りだったんだなということを強く感じた。さらに戦局の変化から手薄になってきたところに多くの老人・婦女子をそのままにし、帰国時には守られもしなかったようだ。

    帰国後のサポートが不十分だったことに関しては、不十分かもしれないが、社会そのものが日本語ができない人々を受け入れる土壌もおそらく今よりも少なかった中、どこまで政府が面倒を見るべきかというのはあったような気がしなくもないが、残留邦人のみならず、生活保護や失業保険でも面倒な制限ばかりかけて本質的に必要としている人のことを見ておらず、悪用されないよう悪用されないように複雑化するだけな所はか変わらない気がする。

    個人的には台湾から中華の世界に入っていたため、日中国交正常化という単語にはあまりポジティブな印象は持たないが、大きな喜びを持って迎えた人々も居たということが、当たり前のことではあるが、どちらから光を当てるかで歴史の見え方が全然変わってしまうことがよくわかる。

    周恩来が残留邦人の帰国に積極的だったことが何度か述べられているが、中国を知るに、人道的観点というよりは、何かそうすることで日本から引き出したかったのだろうか・・などと勘繰ってしまう。まあどんな動機であれ、人道的に正しいのであればそれはよしとするべきか・・。

    それにしても厚生省や外務省、一体なんのために存在しているのだろう。
    そんなに自分たちの責任を認めるのが嫌なのか。そもそも国民のために存在しているのではないんのか。という疑問が生まれてくる。やはりこの国の政府は、海外で何かあるとあんまり頼りにならないんだな。

  • とてつもなくやるせない気分になります。
    戦争はどこまでも人をダメにし、
    上のものは人を人と思わなくなります。

    そんな愚策としか言えないことをやらかしたのが
    中国への移住という名の
    追っ払いでしょう。

    その結果は言わずもがな。
    面倒くさかったのか名だたる総理は
    それを後回しにしていきました。
    本当、歴史は何度も繰り返すのです。

    そして、法は彼らを守っては
    くれませんでした。
    どこまでもこの国はどうにもならないですね。
    SNSで出る声はそんなことの積み重ねで
    ほったらかした結果でしょう。

    知らないといけないこと。
    解決しないといけないこと。
    いっぱいありますね。

  • 残留邦人を生むきっかけとなった満蒙開拓政策から
    国家賠償請求による神戸地裁の判決までをドラマチックに描く。
    著者の立場は一貫して日本政府の怠慢を叱責するもので、
    これに翻弄される残留邦人の悲惨さが浮き彫りになる。
    しかしその反面日本政府がこうした政策をとった経緯など
    これを補完する内容は薄く、
    中国政府の対応についても表明的に歓迎するのみで、
    やや一方的に感じた。
    しかしラストの神戸地裁の判決文には思わず息を飲む。

全5件中 1 - 5件を表示

井出孫六の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×