本へのとびら――岩波少年文庫を語る (岩波新書)

著者 :
  • 岩波書店
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本棚登録 : 2010
感想 : 259
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  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004313328

作品紹介・あらすじ

「生まれてきてよかったんだ、と子どもにエールを送るのが児童文学」。アニメーション界のトップランナーとして世界的に注目される著者が、長年親しんできた岩波少年文庫の中からお薦めの五〇冊を紹介。あわせて、自らの読書体験、児童文学の挿絵の魅力、そして震災後の世界についてなど、本への、子どもへの熱い思いを語る。

感想・レビュー・書評

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  • 宮崎駿さんが、どんなところに注目しながら児童文学を読んでいらっしゃるのかが分かる。
    児童文学(岩波少年文庫)挿絵に描く想像、宮崎駿さんご自身がおすすめするポイント、一度は読み知るべき大切なこと…。
    50冊をおすすめされていますが、今すぐに読みたい…!となります。
    こうやってジブリ映画は生まれたんだな(原作からどう離れるかはさて置き)、と垣間見られ、こちらの想像力を掻き立てて貰えるのもとてもワクワクして良い。
    「これはおもしろい!!読まないと損をします。」なんて書いてあるとにんまりが止まらなくなってしまう。
    あと、石井桃子さんと中川李枝子さんについて書かれているところも面白かった。めっちゃ崇拝されている。その視線の上がり方がこちらまで伝わってくる。世の中のたくさんの人は宮崎駿さんのことそういう風に思ってるのに!

    『児童文学は、人間の存在に対する厳格で批判的な文学とはちがって、「生まれてきてよかったんだ」というものなんです。
    生きててよかったんだ、生きていいんだ、というふうなことを、子どもたちにエールとして送ろうというのが、児童文学が生まれた基本的なきっかけだと思います。...「子どもにむかって絶望を説くな」ということなんです。』本書抜粋

  • 読むべき物語は無数にある。この本の中で紹介されている少年文庫もぜひ読んでみたい。
    あれからまだ手に取れていないけれど…

  • 第I部は、スタジオジブリで作成された小冊子「岩波少年文庫の50冊」が元になっています。

    第Ⅱ部の1「自分の一冊にめぐり逢う」は上の小冊子のインタビューとテレビ番組「ジブリの本棚」収録時の阿川佐和子さんとの対談を元に再構成されたもので、2「三月十一日のあとに」は今回の新たなインタビューが元になっています。

    子供が生まれて、改めて現代を考えてみると、自分が生きてきた子供時代とは全く別物のように感じます。
    価値観も多様になり、個人の自由度が増した分、何をどうすることが正解(良い選択)なのか、良くわからず、曖昧模糊とした世界にいる気分です。

    親として子供との関係を考える中で、出会った一冊です。

    p.163の著者の言葉がとても印象的でした。下記に引用します。

    「要するに児童文学というのは、「どうにもならない、これが人間という存在だ」という、人間の存在に対する厳格で批判的な文学とはちがって、「生まれてきてよかったんだ」というものなんです。生きててよかったんだ、生きていいんだ、というふうなことを、子どもたちにエールとして送ろうというのが、児童文学が生まれた基本的なきっかけだと思います。」

  • 児童文学を紹介するのが上手。著者の書く絵が児童書の線画で描かれた挿絵に影響を受けていることが感じられて、いろいろ読んで味わってみたくなった。

  • 宮崎駿が児童文学作家である事実を突きつけれた。

  • 巨匠・宮崎駿さんが、岩波少年文庫からおすすめの本を50冊紹介する。あわせて、自身の読書体験や時代について語る一冊。

    戦前の人の中には「本なんか読むとろくな人間にならない」と、額に汗して働くことを美徳とする人たちが多かったこと。戦争に負けて、本を読み勉強するよう推奨されるようになったこと。

    バブル期に馬鹿騒ぎしているひとたちを横目に、いつかひどいことになるぞと終末物を書くのはある種のカタルシスもあるが、終末が現実として立ちあらわれている現代にそういうものを作っても面白くないこと。

    人間はどうしようもないとニヒリズムを掲げる文学に対し、児童文学は「やり直しがきく話」だと繰り返し述べられていたことが印象的だった。

    時代につれ、児童文学のありかたというものも随分変わるものだなと思った。

    あとアニメーターらしく挿絵についての言及も多かった。

  • 子どもが小学校に上がったくらいから「モモ」とかを読むようになって児童文学って奥が深いなと思ってたけど、宮崎さんもたくさん読まれて想像力が広がったんだなということがよくわかった。

    挿絵に対する宮崎さんの考察が興味深かった。昔は今みたいに画像や動画が溢れていなかったから挿絵を眺めることが新鮮な体験になったけど、今は、まさにうちの子どももそうであるように、画像や動画に慣れているから挿絵を素通りしているのかな などと思う。またそのような世の中の変化に合わせて挿絵の質も良くも悪くも変わっているということに気づかされた。(「プペル」みたいな書かれ方の絵本は昔はなかったよなと連想した。)

    また同様に、昔は子どもにとっての屋内の遊びは本を読むことくらいしかなかった?から読んだけど、今はいろいろあるから買ってあげたり勧めてみてもなかなか読まない というのも、我が子がまさにそうであるから頷いた。(まあしょうがない。気長に待つ。)

    あと、宮崎さんの時代の捉え方も興味深い。曰く、今(2011年頃)は終わりの始まりで、子どもたちが楽しみに観るような幸せなファンタジーは嘘っぽくなるから作れないとのこと。わからなくはない。むしろまあまあわかる。けど、この本の最後にそれを言ってほしくない。というか、(そういうつもりであるかはわからないですが)終わりの始まりに対して我々大人が匙を投げてはならないと思った。
    だから自分は、我が子と一緒に本を読んで、ゲームもして、YouTubeもみて、勉強もして、楽しく生きていきたいと思った。

  • 宮崎駿さんの頭の中がちょっと覗き見ることができた感じ。あたらめて読み直したい児童書もうまれた。大好きな石井桃子さんや中川李枝子さんの話しもでてきて、なんだか嬉しかった。

  • 児童書、読みたくなりました。
    私も子どもの頃、児童書を読んだりしていたけれど、その時も挿し絵を見て「読みたい!」と思ったり、「これは読むのやめよう」とか考えていたのを思い出して、挿し絵は決定的に大きいと挿し絵の存在を語っていた駿さんの言葉に共感。
    「たのしい川べ」とか「床下の小人」とか、挿し絵に注目して読みたいな、あと、「借りぐらしのアリエッティ」見たことない!って気付いたので見たい、「たからさがし」も見たい、、
    『現在は、写真も映像もあふれかえっていますから、一枚の絵を丹念に読みとる習慣を失っているんだと思います。』

    駿さんが紹介されている、児童書50選を、図書館とかでちょくちょく借りて読んでいきたいなぁ、
    あと、自分のとっておきの1冊をみつけたい!

  • 宮崎駿が岩波少年文庫から、子どもに向けて選書している一冊。彼の語る言葉を一つたりともこぼしたくなくて何度も読むんだけど、やっぱりたまに分からないところがある。まだまだ私も生きようと、生きてこの言葉を受けとれるようになりたいと思う

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著者プロフィール

アニメーション映画監督。1941年東京都生まれ。学習院大学政治経済学部卒業後、東映動画(現・東映アニメーション)入社。「ルパン三世 カリオストロの城」(1979)で劇場作品を初監督。1984年には「風の谷のナウシカ」を発表。1985年にスタジオジブリの設立に参加。「天空の城ラピュタ」(1986)、「となりのトトロ」(1988)、「魔女の宅急便」(1989)、「紅の豚」(1992)、「もののけ姫」(1997)、「千と千尋の神隠し」(2001)、「ハウルの動く城」(2004)、「崖の上のポニョ」(2008)、「風立ちぬ」(2013)を監督。現在は新作長編「君たちはどう生きるか」を制作中。著書に『シュナの旅』『出発点』『虫眼とアニ眼』(養老孟司氏との対談集)(以上、徳間書店)、『折り返し点』『トトロの住む家増補改訂版』『本へのとびら』(以上、岩波書店)『半藤一利と宮崎駿の腰ぬけ愛国談義』(文春ジブリ文庫)などがある。

「2021年 『小説 となりのトトロ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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