地元経済を創りなおす――分析・診断・対策 (岩波新書)

著者 :
  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004317043

作品紹介・あらすじ

人口減少、駅前のシャッター通り、あきらめ…。地元経済の悪循環を断ち切る方策はないのか。現状をまずは可視化して、お金や雇用を外部に依存する割合を減らすための考え方やツールを紹介する。好循環を生んだ事例も盛り沢山。次なる金融・エネルギー・気候変動の危機に対する「しなやかに立ち直る力」をいま地元で育む。

感想・レビュー・書評

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  • 『地元経済を創りなおす』
    枝廣淳子著

    1.著者
    東京都市大学環境学部教授。
    「執筆に3年を要する。実務につながることを目的に執筆。」

    2.著書ポイント
    地元経済を創りなおすとは?
    『域際収支』を把握し、改善すること。

    経済産業省/地域経済分析システム「REASAS」の使い方、メリットの説明。
    →「地域経済循環図」
    =自治体の収支率がわかる。
    https://resas.go.jp/#/13/13101

    3.所感
    実務活用度  ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
    自治体への理解⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
    データ活用の未来⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️

    事業所情報と国勢調査を組み合わせることで、自治体の
    ①現状収支把握
    ②収支改善への道筋(4.③.④)
    まで展開出来ること。

    恐らく、地方銀行のビジネスマッチング(4.④)にも展開できうる要素があるのでは?

    4.学べる内容
    ①域際収支とは?
    稼いだお金が可能な限り、地元の外への流出を減らし、地元に残すこと。

    ②地元経済の現状
    1)減り続けるJA
    1960年 1.2万拠点→ 2016年 700拠点未満
    2)1)の影響
    ガソリンスタンドを始めJA主体の事業の撤退

    不便

    過疎化に拍車

    3)減り続ける人口
    2040年 3分の1の市町村→人口1万人未満

    ③域際収支を改善するには?
    【収入】
    地元事業会社が生産していて、地元外で売れている製品の流通を増やすこと。
    【所得分配】
    地元事業会社の支払人件費のうち、地元居住者割合を高めること。※住民税そして【支出】の要素につながるため。
    【支出】
    地元居住者の生活費の拠出先が首都圏本社の小売とかではなく、地元事業会社が運営する店舗中心とすること。
    ※地元会社がゆえ法人税が期待できるため。
    【設備投資】
    地元事業会社の設備投資の購買先ならびに外注先が地元事業会社である割合を高めること。

    ④自治体が目指している「6次産業化」とは?
    自治体地域に本社がある(納税義務のある)事業会社が
    1)農、林、漁業の1次産業の材料を出荷。
    2)製造、加工の2次産業が製品を生産。
    3)流通の3次産業で販売。
    出来ている状態、割合を高めること。

    1次×2次×3次=6次

    ⑤国内の具体的な取り組み
    1)国内給食
    給食の食材全体に対する地域生産の食材割合を高めること。
    2006年時点26%→目標30%

    2)北海道下川町
    (参考ページ)
    https://www.town.shimokawa.hokkaido.jp/section/2020/01/post-92.html

    地元消費で域外へ高い割合で外部流出しているのが電力。
    そこで、林業が盛んなため、木材チップでのバイオマス発電所を建築。
    自給率60%へ。

    3)岐阜県郡上市石徹白村
    (参考ページ)

    https://greenz.jp/2016/12/19/itoshiro/

    やはり外部流通が高いのが電力。水量が豊富なため、水車発電を建築。
    建築は補助金と住民の出資で実現。
    ------------
    ※国内再生エネルギー割合 
    2020年20%
    https://www.psinvestment.co.jp/small_talk/renewable-energy/

    ------------
    ⑥海外の取り組み
    イギリス トットネス地方
    (参考ページ)

    https://www.amita-oshiete.jp/column/entry/015303.php
    1)食費の10%は地元の小売店で。
    2)承継土地を地元が安く譲り受け。
     市場価格の7割で分譲または賃貸。
     所得理由で住めない人向けに住める街づくり。
    ほか。

  • 地元経済を創りなおす――分析・診断・対策|イーズ 未来共創フォーラム
    https://www.es-inc.jp/books/2018/bks_id009390.html

    地元経済を創りなおす - 岩波書店
    https://www.iwanami.co.jp/smp/book/b345708.html

  • 全部はむりだよ 地消地産

  • ・人口3万人未満自治体954で総人口の8%、面積は48%
    ・年間10万人が東京に移住
    ・どのように地域経済の好循環を作り出すか
    ・RESAS:地域経済循環マップ
    ・地消地産
    ・小水力発電
    ・合同会社あば村
    ・学習する地域:客観的な報告書が共通基盤、継続新プロ・起業支援の場、アイデア発射台

  • ・人は「動いているところ」に惹きつけられる。
    ・いったん地域に入ったお金を、どれだけ地域内で循環し、滞留させるかが大切。
    ・あなたがお金を渡した相手が、どこでそのお金を使うかも重要。地域内乗数効果。
    ・「地消地産」地域で消費しているものを地域で作る。
    ・買い物の10%を、地元産に切り替える。
    ・年1回の地元起業家フォーラムで、町民に売り込み、地元の皆が応援してくれるプロジェクトへと展開させる。

  • かつての上司のレビューを見て早速読んでみました!
    「地元のお店や商店街を守っていかないといつか無くなってしまったとき、不自由になるのは私たち。特に高齢者。地域の店舗や商店街は、今、単にモノを売るという商売だけでなく、地域の人たちの暮らしと命をつないでいるという重要な役割を担う時代にきている。こうした分析結果をもっと広く市民にフィールドバックし、みんなで考え行動していくことが大事。」という記述があり、地域内乗数の効果が一層深く理解できた。そうか、地元の商店街や事業者は地域乗数効果をあげるための重要な窓口なのだ。
    そこから、「地域の人々に地元の独立系の店舗や事業者を利用するインセンティブを提供することによって地元経済を強くする」地域通貨の意義も再認識。
    地域でお金を回すことの重要性、すごく腑に落ちて勉強になりました。

  • 地域の循環を見えるようにする、そのやり方があるというのが知れて良かった。何がどう変わるかがわかるのはとてもワクワクすることだなと思った

  • 2020.29

    ・地域の消費実態を把握した上で、生産計画を作ることでギャップがなくなる。
    ・トットネスが前進し続ける2つの前提と3つのポイントがある。
    ・地方からの新たな物語が必要。

  •  生産年齢人口の減少が顕著な地方都市において、地域一体となって取り組むべきコンパクトシティの在り方のヒント。

  • ●イギリスのトットネスという町では、地域経済を守るため、全国チェーンのコスタ・コーヒーの進出を阻止する反対運動が起こった、という。以前、鳥取にスタバがないということが話題になったが、日本では地域経済を守るという視点が抜けているがゆえに話題になったと見るべきなのかもしれない。

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著者プロフィール

大学院大学至善館教授、有限会社イーズ代表取締役、株式会社未来創造部代表取締役社長、幸せ経済社会研究所所長、環境ジャーナリスト、翻訳家
東京大学大学院教育心理学専攻修士課程修了。『不都合な真実』(アル・ゴア著)の翻訳をはじめ、環境・エネルギー問題に関する講演、執筆、企業のCSRコンサルティングや異業種勉強会等の活動を通じて、地球環境の現状や国内外の動きを発信。持続可能な未来に向けて新しい経済や社会のあり方、幸福度、レジリエンスを高めるための考え方や事例を研究。「伝えること」で変化を創り、「つながり」と「対話」でしなやかに強く、幸せな未来の共創をめざす。
心理学を基にしたビジョン作りやセルフマネジメント術で一人々々の自己実現を手伝うと共に、システム思考やシナリオプランニングを生かした合意形成に向けての場作り・ファシリテーターを、企業や自治体で数多く務める。教育機関で次世代の育成に力を注ぐと共に、島根県隠岐諸島の海士町や徳島県上勝町、宮城県気仙沼市、熊本県南小国町、北海道の下川町等、意志ある未来を描く地方創生と地元経済を創り直すプロジェクトにアドバイザーとして関わる。

「2023年 『答えを急がない勇気 ネガティブ・ケイパビリティのススメ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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