フランス現代史 (岩波新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004317517

作品紹介・あらすじ

1944年の解放から、「栄光の30年」、五月危機、石油危機、「ミッテランの実験」の挫折、新自由主義、そしてマクロン政権成立──フランスの戦後を通観すると、そこには「分裂と統合の弁証法」というダイナミックなメカニズムがみえてくる。欧州統合の動きにも着目しながら現代フランスの歩みをとらえる通史。

感想・レビュー・書評

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  • 「フランスは分裂と統合の弁証法」のプロセスを生きている、と著者が言います。フランス革命をはじめとして、フランスは近現代の歴史の中で、幾度も国内での対立を統合する新しい力が生まれて、新しいフランスが生まれてくる、と。

    フランスの特徴として良く上げられるディリシズム(国家介入主義)、テクノクラートによる政治・経済界の支配、失業や移民問題が、第二次世界大戦後の時間軸に沿って明快に解説されています。

    またフランスの現在の政治状況を、a) 親欧州/経済自由主義とその反対および b)親移民受入/文化多元主義とその反対という2つのベクトルにより分類しています。環境など他にもベクトルはあるのでしょうが、フランスの政治が主としてこの二つの方向性政策の軸としている、という筆者の観点は説得があるように思えました。

    フランスは理念の国と言われますが、確かにフランス人は政治なり世界観なり、個人の立ち位置が日本人に比して明確かつ、それを主張することを躊躇しないという特徴があると思います。すなわち分裂の危険を孕む社会構造と言えますが、国としての一方で愛国心は強く、solidaliteというフランス語である連帯の精神が根ざしているのもまた事実です。

    こうした相反する特徴が著者の言う、分裂と統合の弁証法を可能にしているのでしょうか。

  • ON4a

  • フランスの戦後史を概観する本。ただ、少し専門的な内容で、一般人にはとっつきづらい。フランス史を学ぶ学生にはちょうどいいかもしれない。

  • 1944年8月25日のドゴールによる「市役所の演説」から
    2017年5月のマクロン大統領選出までのフランス政治史を
    「分裂と統合の弁証法」の視点から解説したもの。

    70年を超える時間を新書で200ページほどにまとめているため、
    各時期の政治の流れの概説といった感じになっていますが、
    文章は読みやすく、フランス政治史に興味を持った人が
    手に取ってみるには良い本だと思います。

    ところで、90年代のテロリズムの隆盛を語っている部分で、
    『テロリズム対策として、(中略)、兵士や武装警官が
     軽機関銃をかかえて鉄道駅や空港をパトロールするようになった』
    という記述がありますが、軽機関銃ではなく短機関銃ですね。
    また、私が見た限り、少なくとも90年代後半以降では、
    パトロールや警備をする兵士は短機関銃ではなく
    制式自動小銃であるFA-MASを装備していました。

    余談ですが、90年代後半ではまだ弾倉は装着していないことが多かったのに
    2010年代ではパリの観光地の警備をしている兵士でも弾倉を装着していたことが
    印象に残っています。

  • 本当の今の今までのフランス現代史最新版。今を見通す軸が得られる点で有益。勉強になった。

  • 20190203〜0214 第二次世界大戦前後から2018年のマクロン政権誕生までを網羅。フランスの政治体制はいまひとつわかりにくかったのだが、著者とともに一世代ずつ確認していった感じ。フランス政治は「揺蕩えども沈まず」だなあ。今はまた左右のポピュリズムからの攻撃を受けているけど。

  • 東2法経図・6F開架:B1/4-3/1751/K

  • 235.07||Od

  • 【メモ】
     2018年12月22日、ジュンク堂で購入。急遽著者買いした。

    【版元】
    https://www.iwanami.co.jp/smp/book/b427325.html

    【目次】
    目次 [i-iv]
    地図 [vi-vii]

    序章 分裂と統合の弁証法 001
    1 「モデル」から「先行者」へ 001
      日仏の現在
      モデルとしてのフランス
      先行者としてのフランス
    2 分裂と統合の弁証法 007
      深く重層的な分裂
      「外部」による統合
      分裂と統合の弁証法
    3 相対的後進国 012
      相対的後進国
      対立する利害、共通する利害  

    第一章 解放と復興―― 一九四〇年代 017
    1 解放,対立,和解 018
      解放と終戦
      対立と分裂
      レジスタンス神話
    2 経済復興 026
      CNR綱領
      二つのディリジスム
      モネ・プラン
    3 第四共和政の成立 033
      憲法制定
      ドゴールの退場
      冷戦の開始

    第二章 統合欧州の盟主をめざして―― 一九五〇年代 043
    1 脱植民地化と欧州統合 044
      植民地の独立
      欧州統合
      迷走する政治
    2 復興から成長へ 051
      購買力政策と競争力政策
      新旧中間層の軋み
      マンデス革命
    3 第五共和政の成立 060
      アルジェリア戦争
      ドゴールの復活
      憲法制定

    第三章 近代化の光と影―― 一九六〇年代 069
    1 「栄光の三〇年」 070
      ゴーリスム
      欧州統合の深化
      産業政策
    2 近代化のなかで 078
      ライフスタイルの変容
      メリトクラシー
      福祉国家
    3 五月危機 086
      ベビー・ブーマー世代
      学生反乱、ゼネスト
      学校教育と社会階層構造

    第四章 戦後史の転換点―― 一九七〇年代 092
    1 過渡期としてのポンピドー政権 096
      ドゴールの退場
      新社会建設プログラム
      政治の左右両極化
    2 「栄光の三〇年」の終焉 105
      ジスカールデスタン政権
      ニクソン・ショックと第一次石油危機
      バール・プランと第二次石油危機
    3 分裂する社会 114
      複雑化する対立軸
      国民戦線
      アイデンティティ・ポリティクスの時代

    第五章 左翼政権の実験と挫折―― 一九八〇年代 123
    1 ミッテランの実験 124
      左翼政権
      過去の精算
      実験の失敗
    2 新しい社会問題 134
      「暑い夏」
      ブールの行進
      スカーフ事件
    3 異議申立ての諸相 141
      コアビタシオン
      宿痾としての失業
      対立軸の移動

    第六章 停滞,動揺,模索―― 一九九〇年代 151
    1 争点化する欧州統合 152
      冷戦の終結
      統合深化のインパクト
      国論の二分化
    2 動揺する社会 160
      テロリズムの輸入
      労働市場と社会問題
      対立軸と統合の構造
    3 模索する政治 168
      経済政策の収斂
      シラク政権
      社会保障制度の整備

    第七章 過去との断絶?―― 二〇〇〇年代 177
    1 「古いフランス」と「新しいフランス」 178
      新旧対立という言説
      第二次シラク政権
      新しい世代の登場
    2 グローバル化 188
      アングロサクソン化
      「普通の国」へ
      グローバル化への不安、欧州統合への懐疑
    3 ポピュリズム 196
      「ピープル」
      敵はだれか 

    終章 その先へ 201
      閉塞感の時代
      統合の試みは成るか
      おわりに

    あとがき(二〇〇八年秋杜の社にて 小田中直樹) [209-212]
    年表 [7-13]
    索引 [1-6]

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著者プロフィール

1963年生まれ。東京大学経済学部卒業、同大学院経済学研究科単位取得退学、博士(経済学、東京大学)。東京大学社会科学研究所助手などを経て、現在、東北大学大学院経済学研究科教授。専門はフランス社会経済史、歴史関連諸科学。著書に『フランス7つの謎』(文春新書)、『フランス現代史』(岩波新書)『歴史学ってなんだ?』(PHP新書) 『歴史学のアポリア――ヨーロッパ近代社会史再読』(山川出版社)などがある。

「2022年 『歴史学のトリセツ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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