幕末社会 (岩波新書 新赤版 1909)

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  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (278ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004319092

作品紹介・あらすじ

徳川体制を支えていた「仁政と武威」の揺らぎ、広がる格差と蔓延する暴力、頻発する天災や疫病——先の見えない時代を、人びとはどのように生きたのか。幕末維新を天保期から始まる長い変動過程としてとらえ、みずから動きだす百姓、自己主張を始める若者、新たな生き方を模索する女性に光をあて、その社会像を総合的に描く。

感想・レビュー・書評

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  • ◆人々の暮らす場に焦点[評]成田龍一(日本女子大名誉教授)
    幕末社会 須田努著:東京新聞 TOKYO Web
    https://www.tokyo-np.co.jp/article/169318?rct=book

    幕末社会 - 岩波書店
    https://www.iwanami.co.jp/book/b597624.html

  • 幕末社会について、一般的な民衆、そこに生きる人々に基本的な焦点を置いて展開していく内容だった。
    幕藩体制が倒れる背景において、そもそも土台に何があったのか、どのような人達がどんなネットワークでどんな思想を持っていき何が起こったのか、それらについて細かく見ており、興味深い内容も多かった。
    時系列がわかりにくいこともあったけれど恐らくこれは私の勉強不足だし、正直日本史をほぼ勉強してこなかった人間でも比較的わかりやすく書いてくれていると思います。勉強してから読んだらもっと面白かったかも。

  • 幕末の基本的な知識がある中級者以上向けの本。幕末の本編はペリー来航以降だが、プロローグは天保からという意見には同意。
    百姓や町人をはじめとする一般大衆から見た幕末という面白い切り口で、最後まで興味深く読めた。少々学問的で内容は堅いが文章は理路整然として読みやすい。

  • 「歴史学徒の解釈に過ぎない」と巻末部の<あとがき>には在るのだが、そういう「或る研究者の見解で纏めてみた」というような内容が、歴史を巡る話題ということになると、凄く興味深い内容になるのだと思う。踏み込んでしまえば、自身はそういうような本を寧ろ求めているかもしれない…
    所謂“幕末”という表現だが、色々な呼び様が在る筈で、その呼び方自体を色々と論議する余地も在るのかもしれない。が、本書では「所謂“江戸時代”」の基本的な枠組みとでもいうようなモノが「揺らいだ?」というような期間、同時代の人達が「“徳川さん”を頂く諸制度」について、以降に如何なるのかというようなことは「知らんけど…」にしても、「或いは終わる?」と感じられていたかもしれないような時期を「幕末」と位置付ける。
    本書では「所謂“江戸時代”」を「特徴付けるモノを考えよう」という序章を据え、以降は1830年頃、天保年間に入る頃から起し、1868年の慶応4年―これは明治元年でもある…―に至るまでの「社会の移ろい」を論じてみようとしている。故に本書の題名は『幕末社会』な訳だ。
    江戸幕府はその“武威”を背景に“仁政”を施すというようなことで成立していた面が在ると筆者は観ている。その“仁政”が揺らぎ、“武威”が失墜し、やがて内戦或いは分断というようになっていくのだと「幕末」を説いている。なかなかに興味深い纏め方をしている。こういうように、判り易い切り口を設けて、少し纏まった「移ろう“時代”」を語ってみるというような綴り方は有効、有益であると思う。
    筆者はこうした「幕末」は“衆”とでも呼ぶべき無数の人々の力が動かし、同時に「非常に魅力的な個人」の輝きも見受けられたとしている。そういう様子が感じられる「所縁の地」を巡ってみることも試みていて、本書ではそういう内容も随時紹介されている。
    「所謂“江戸時代”」は17世紀の初めから19世紀半ばまでの長きに亘る。本書の筆者が“衆”という呼び方をする、「広い階層の色々な人々の集まり」が長い時間で形成され、成長、更に成熟して質を少し変えたというのが、この長い期間のもたらした結果であったのかもしれない。その間に、現在の我々が漠然と思う以上に、社会の様々な仕組みが整っていた時期であったのかもしれない。
    所謂、政治や経済という分野に偏らず、社会、文化、思潮というようなことに重点を置いて語られる「幕末」という内容の本書は非常に興味深い。
    なかなかに好い一冊に出遭えた!!

  • 約260年続いた体制が倒れた時分の社会の様相に焦点を当てる。視座を民衆に置くアプローチは、英雄物語よりリアル。ペリー来航の手前から書き起こされ、幕府崩壊は突如始まったのではないとしている。関八州のヤクザのくだりは映画「用心棒」の世界で、大藩を擁さず統治機関が頼りなげな地域では、力の論理がまかり通るなど、本書では治安維持(=暴力装置)が大きな論点。幕府の武力の失墜に伴い、社会の様々な立場から抵抗や自衛の必要性が生じ、身分制を否定し得る農兵や、被差別集団の軍事活用が出現するが、これらもその範疇。また桜田門外の変のような大事件より、安政の大地震のような暮らしに直接関わる出来事の方が、多くの民衆にとってインパクトだったとするのも、何となく実感。

  • <目次>
    序章   武威と仁政という政治理念
    第1章  天保期の社会 揺らぐ仁政
    第2章  弘化から安政期の社会 失墜する武威
    第3章  万延から文久期の社会 尊王攘夷運動の全盛
    第4章  元治から慶応期の社会 内戦と分断の時代

    <内容>
    幕末期を30年とみて(ペリーが来る以前から)、その間の歴史を「民衆」を中心に考えたもの。各章の最初にその時期の大きな歴史の流れを、そのあとで「衆」と著者が言っている、一般の人々の動きを辿っている。なかなか面白い。倒幕から明治維新は、武士の動きのように思えるが、そうでもないことがわかる。ただし、一般大衆は政治の局面を正確に知っていたわけではなく、踊らされたところもあるのだが。でも彼らの動きが間違いなく新しい時代を作っていったのだ。

  • 政治史に偏らず、幕末期における庶民の生き方を活写している。関東の侠客が勢力を増した背景も説明していて、親しみやすい。

  • 江戸期公判から明治維新まで、一見天下泰平な世の中から時代が進むと、歴史の教科書では出てこない庶民の生き方が歴史上の「大事件」にどう収斂して行くかが読みどころかな。

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著者プロフィール

明治大学情報コミュニケーション学部教授

「2017年 『三遊亭円朝と民衆世界』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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