マルクス・アウレリウス 『自省録』のローマ帝国 (岩波新書 新赤版 1954)
- 岩波書店 (2022年12月20日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (220ページ)
- / ISBN・EAN: 9784004319542
作品紹介・あらすじ
マルクス・アウレリウスの生涯は、「哲人皇帝」にふさわしいものであったのか。終わらない疫病と戦争というローマ帝国の実態のなかに浮かび上がるのは、心労を重ねながらも、皇帝の職務をひたむきに遂行しようとする人間の姿であった。歴史学の手法と観点から、『自省録』の時代背景を明らかにすることで、賢帝の実像に迫る。
感想・レビュー・書評
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県立図書館
20231005類書「自省録」読了
歴史学者の手法と観点から「自省録」やラテン語修辞学の師「フロントの往復書簡集」を使用しながら、ローマ社会の時代背景を明らかにし、彼の書き物の意義を明確にすると共に現実に即して捉えた
著者は西洋古代史専攻
1章 自分自身に
2章 皇帝政治の闇の中で
3章 宮廷と哲学
4章 パンデミックと戦争の時代
5章 死と隣り合わせの日常
6章 苦難とともに生きること
《内容を要約》
マルクスアウレリウスをマルクスと呼称する
○自省録はマルクスの言葉の力
・訳者神谷氏が示唆するように、「自省録」の言葉が与える力は、哲学の体系よりも、マルクス個人の生き様から生み出されたものが大きい
○皇帝らが哲学者を弾圧した訳
・ストア派を奉じた元老院議員が、ストア派の心情に従って行ったかのように見える過激な政治や迫害をしていた
・ストア派の哲学自体は決して皇帝政治に反対している訳ではなかったが、説教のもつ精神性に罪が着せられた
結果的に哲学者が反政府的、反社会的存在のレッテルを張られて追放処分とされた
○哲人皇帝と言われたゆえん
・ドイツの学会ではローマ五賢帝プラトンの「哲人王」の理想が実現したものと解し、 ストア派哲学を奉じたマルクスを「哲人皇帝」と強調することがあった
・ローマ人のイデオロギーは「父祖の威風」であったため、マルクスにとって統治において従うべきは先帝アントニウス
そのアントニウス帝は、特にギリシア哲学を奉じてはいなかった
哲学の倫理は政体の理想を目指してではなく、 先帝アントニウスの範に従って懸命に働くこと、それがマルクスの生き方であったと言って良いのではないか
・マルクス以降暴政の皇帝が続き、哲学を学んでいたユリアヌス帝(在位361~363)は、マルクスの皇帝の実績よりも、哲学をしていたことに重視し目標にしていた
これによってマルクスは哲人皇帝と扱われるようになった
○その他
マルクスは少食で食事は夕食のみ、日中はテーエアカという薬以外口にしなかった
テーエアカとは毒蛇にきく解毒剤
マルクスが飲んでいたテーエアカは、覚醒剤成分が調合されていたため、長年にわたる投与は許容度を超えてしまっていた詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
自省録は有名だし、ローマの歴史の本もあまたある。互いにこういうアプローチの本はなかなかなかった。とてもよい。構成がわかりやすく、彼の思想を育んだ背景を理解できた。時代が彼を欲していたのであり、彼もそれに最大限応えようとした。
運命を引き受けつつストア派として生きながら、政治のど真ん中の皇帝を務めてきたマルクス・アウレリウスの人間味が伝わってきて、とても読み応えがあった。 -
自省録を3度読み返し
さらに理解を深めたいと思い読んだが
人の名前が出過ぎて時たま、ん?誰のこと?
とはなったがマルクスがどんな時代背景で
書いていたのかを知れ、
さらに自省録の理解が深まった
人名が出てくるところは軽く読み
他の場所は深く読むという
読み方をおすすめする。 -
マルクス・アウレリウスの生涯と哲学がよくわかった
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当時の時代背景や世相と哲人皇帝の思いがどう重なるかをわかり易く解説。改めて、自省録を読みたくなる。
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自省録が有名なマルクスアウレリウスとは何者なのか興味を持って読む。
当時のローマの時代背景や周辺環境、人の繋がりについて詳細に書かれており、マルクスがどのように育ち、何に苦悩したかがわかる。
かなり詳しく研究してまとめられていて、ローマ史の本としても学ぶことは多い。
自省録がどのような思いで書かれたのかもよくわかり、また読みたくなった。
しっかりとした本でありながら読みやすく、タイトルと中身も符合した良い本です。
ローマの風呂は汚く水道も整備が足りず、川に汚物垂れ流してたのは結構衝撃。 -
【請求記号:131 ア】
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哲人皇帝と呼ばれるが、哲学者というわけではない。先帝を模範として統治に臨んだ皇帝。
戦争や疫病がなければ彼にはやりたいことがもっとあったのではとも思う。 -
マルクス・アウレリウスの生涯を、著作の「自省録」とともに俯瞰した一冊です。
マルクス自身は哲学者であった訳だが、その政治は色んなしがらみにより現実に即した従来からの政治の延長上にあったということがよくわかりました。 -
反乱に相次ぐ異民族の侵入、終わらない疫病の流行。過酷で困難な時代に帝位につき、のちに哲人皇帝と呼ばれたマルクス・アウレリウス帝の生涯を、その著作である『自省録』とともに眺める。
彼が統治した当時のローマは死と戦争に満ちあふれていた。そうした中でストア哲学と先帝アントニヌスの教えを倣いとし、ひたすら実直に帝国の諸問題に対処して皇帝の責務を果たす人物像が見えてくるような内容だった。彼は世に言われるような哲人皇帝ではなかったかもしれないが、哲学は確かに彼の生きる支えとなったのだろうと思う。遠い時代の皇帝を生きた人間として捉えられるような一冊で、引き込まれる。