超デジタル世界 DX,メタバースのゆくえ (岩波新書 新赤版 1956)
- 岩波書店 (2023年1月20日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (204ページ)
- / ISBN・EAN: 9784004319566
作品紹介・あらすじ
誹謗中傷やフェイクニュースがあふれ、詐欺やサイバー犯罪で脅かされる場となりつつあるインターネット。DXやメタバースがこの傾向を助長することはないのか。AIは解決の切り札になるのか。日本がデジタル後進国となってしまった原因は? インターネットを健全な集合知のうまれる場とする道筋を考え、日本のとるべき道を探る。
感想・レビュー・書評
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重鎮の視点とも言うべきだろうか。だいたい、おっしゃるような方向に進むんだろうけれども、感性が古臭くて守りに入っているような匂いが強いんだよね。
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私の勤める会社でも最近はDX経営がどうのこうのと言っている。データがきちんと入っていないと、ちゃんとした評価ができないし、今後の経営に活かすことができないという。データ、データとうるさい。ビッグデータがないとAIもうまくはたらかない。AIを教育に取り入れるということもなんかうさん臭さを感じている。エビデンス、エビデンスと言われるのもまたイラッとする。昔から細かい数字を使ってものを言う人を信用していない。1の位まで細かく見ている割に、桁がずれていても気づかない人がいる。典型的な数字に弱い文系人間だ(これは失礼)。まあとにかく、ICT関連では便利に使えるものは使ったらいいと思うし、決してすべてを否定しようとは思わないが、どこかに落とし穴があるような気がしている。何の根拠もないけれど、自分の嗅覚がそう言っている。で、きっと本書には、その根拠が書かれているのではないかと思って読んでみた。まあ、きちんと理解できているわけではないが、次のような一文を読んで、やっぱりと思ったわけだ。「コンピュータ技術の発達とともに、あまりに情報学が後者の視点(コンピューティング・パラダイム)に偏りすぎており、効率向上のために人間が機械化されてデータ至上主義が横行し、このままでは未来社会が崩壊する恐れがあるので、前者の視点(サイバネティック・パラダイム)も回復せよと言いたいだけなのだ。」コスパとか、タイパとか言っている場合じゃない。「物事をやたらに数値評価し、そのデータを機械的に高速変換すればよいのでもないし、AIに丸投げで最適解を計算させればよいのでもない。衆知をあつめるボトムアップの集合知から、長続きする本物の効率向上が達成されるのである。」そう、目指すべきは本物の効率向上。そのためにも、今後高校で行われる「情報」の教育をもっと真剣に考えて行かないといけないのだろう。ところで、あのゾウの形のカーブ、どこかで聞いたことはあったが、それを見せつけられるとなかなかショックではある。そうなんだ、この20年ほどの間、収入なんて全く増えていない、下手をすると減っているのだ。まあ、物価が上がっていないから良いのだけれど。いやいや、授業料はかなり上がっているのだった。我が家の場合は、子育てから少し手が離れたころ、つまり教育費が増大したころ、つれあいがフルで働き出すようになったから何とかなっているようなものだ。そして、子どもたちが一人立ちするころ、僕は定年を迎える。
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ITの話だと思って選んだが、哲学の話だった。
事前の期待は裏切られたのだが、とても興味深く読むことができ、嬉しい裏切りとなった。
この本の中ですすめられている基礎情報学とはどんなものなのか、興味を持った。
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西垣さんの本は1988年出版の「AI――人工知能のコンセプト」を最初に読み、それから数冊ではありますが、読んできています。
そのこともあって、シンギュラリティ否定論や、人間はAIに置き換えられるという見解の否定については想定どおりでした。
DXについて、日本の文化的伝統の根源に遡って考えるというのがテーマになっており、「新実在論」などの興味深い見解の紹介もありましたが、正直にいいますとやや議論に付いていけない部分もありました。
「意味とは本来、『主体である誰かにとっての価値』であり、誰かが生きることと切り離せない。たとえば下戸である筆者にとって、ワインの良し悪しなど『意味がない』のである」(第三章から引用) -
桃山学院大学附属図書館蔵書検索OPACへ↓
https://indus.andrew.ac.jp/opac/volume/1318956 -
摂南大学図書館OPACへ⇒
https://opac2.lib.setsunan.ac.jp/webopac/BB50312686 -
【請求記号:007 ニ】
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大筋としては同著者の「AI原論」で触れたものに近いと思うが
AIや哲学といった題材に優劣つけがたく興味がある人ようなであれば
おおよそ触れられる話題への関心は尽きないものになっているか。 -
デジタル社会の現況と情報学を幅広に捉えた一冊。総花な感じで焦点がぼやけるか?
全5章から成り、1章は新型コロナ以後の日本の官民デジタル社会現況、2章はAIとメタバースの現況、3章は情報学のうち多様な主観性を重視する考え方の概論、4章は分断アメリカ社会、5章がまとめと提言の構成。
1・2・4章に新しい発見や驚きは正直あまりなくて、読むべきは3章と5章か。
とはいえ、3章は情報学素人の私は完全に置いてけぼりをくらった。著者の専門分野で真骨頂発揮の章なのだと思うけど、情報を哲学的に捉える視点・イメージ・理論がさっぱりわからない。これは別の本で学ぶべきことか。
5章は、日本人の気質(保守的でトップダウンのムラ社会)とデジタル社会(変化し続けるオープンな自己責任社会)の相性の悪さは納得。
人もシステムも社会も、ベータ版が許容されない日本の環境と気質のままでは、いつまでたっても国際デジタル社会のフォロワーだろうなと感じた。
巨大IT企業が作り出す金やビジネスに偏重したデジタル社会は、負の側面と格差拡大ばかりが目立っているような気がしてならない。