優しいコミュニケーション 「思いやり」の言語学 (岩波新書 新赤版 1971)

著者 :
  • 岩波書店
3.86
  • (2)
  • (8)
  • (4)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 190
感想 : 20
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (222ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004319719

作品紹介・あらすじ

ビジネス会議ではなぜ雑談が大事? 会話での相づちにはどんな意味が? 大勢での話し合いをまとめる秘訣は?ーー日常の会話やビジネス会議、リスクコミュニケーションといった話し合いを、社会言語学の観点から具体的に分析してみると、「人に優しい話し方・聞き方」がどんなものか見えてくる!

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 優しいコミュニケーション
    「思いやり」の言語学
    岩波新書 新赤版 1971
    著:村田 和代

    本書は、社会言語学の入門書である

    普段から何気なく行っているコミュニケーションには、一見ばらばらで共通項などないように思えますが、その背後には、共通した原理や原則が働いている場合があります。
    ことばは、時代や状況によってダイナミックに変化します。そして言霊と言われるように、人々に勇気や元気を与え社会に大きな影響をもたらします。
    同時に、人を傷つけ、扇動し、社会を間違った方向に動かす力をも有します。

    本書を通じて、筆者が伝えたいメッセージは3つあります。
     ① 社会言語学の魅力やおもしろさを多くの方々に知っていただきたい
     ② 優しいコミュニケーションのエッセンスとは何かを考える
     ③ 言語・コミュニケーション研究を社会につなげる事例や可能性、すなわち、どのように社会貢献できのかを提示する

    気になったことは以下です。

    ■優しさの手がかり

    ・社会言語学とは、言語を社会との関わりで見ようとする言語学の一分野です

    ・コミュニケーションというと、「何を言うか」といった発言内容に注目しがちであるが、「どのように言うか」という側面からの発見があったのではないでしょうか

    ・言語のバリエーション ①誰が、②誰に、③いつ、どこで、④なぜ、⑤どういう方法で。5W1Hと呼応しています

    ・ポライトネスという言葉からは、敬語や礼儀正しさという言葉を連想します。が、ポライトネスとはもっと広い概念を指し、円滑な人間関係を築き、衝突を避けるためのことばの使い分けや言語行動のことをいいます。

    ・社会言語学では、コミュニケーションは、話し手と聞き手の相互行為であるととらえます。

    ■雑談のススメ

    ・会話のスタイルは、①目的遂行型(情報伝達型)と、②対人関係調整型がある。雑談は後者になる

    ・ファシリテーターと各参加者との間にラポールを形成する

    ・話し合いでは、正談に入る前にアイスブレークという雑談を設けるとよい

    ・会話を促進させるためにファシリテーターに必要なストラテジーとは
     ① 名前を呼びかける
     ② あいづちや積極的な応答
     ③ 質問に対する答えにコメントを付け足す
     ④ 肯定的なコメントやほめ
     ⑤ 追加の情報提供
     ⑥ 和らげ表現の使用

    ■大切なのは、「聞くこと」

    ・コミュニケーションをとらえるための古典的モデルは、「話し手が情報を伝え、聞き手がそれに反応する」
    ・それに対して、聞き手行動も視野に入れた研究においては、従来受動的にとらえられてきた「聞き手」の有り方とは正反対に聞き手の会話への積極的な関与や創造的で活動的な側面について言及がなされるようになってきました。

    ・進行役としてのファシリテーターの言語的なふるまいとは
     ① 話し合いを始める前に簡単なルールを決める
     ② 発言の割り振りをして、発言していない人、発言が少ない人に積極的に発言を促す
     ③ 何について話をしているのかをわかりやすく明確に提示する
     ④ 話題の変わり目を、では、続いては、次は、などといった接続詞で明示する
     ⑤ 繰り返し合意事項を確認し、小さなトピックで合意を重ねることでおおきなテーマの同意につなげる
     ⑥ 意見を取り下げるときには、提案者に配慮する言葉をかける

    ・ファシリテーターの積極的なふるまいによってラポールが形成されると、参加者同士のやりとりも多く、活発な意見交換に繫がっていく

    ・出された意見を集約する中で、①話し合いのプロセス、②話し合いのアプトプット の両方が評価指標としてとらえていることがわかってきた

    ・聞いている相手(会話の相手)に配慮して話すことが重要であることに加えて、聞くという行動も非常に重要であることがわかってきた

    ・相手が話しやすいように応答していますか。相手がより話を展開しやすいように応答していますか

    ■難しいコミュニケーション

    ・会話の流れを作る 現状⇒解説⇒分析⇒課題・施策⇒お願い

    ・みなさん、皆さまで、協力をよびかける

    ・非常に丁寧な口調ではなす、謙譲表現を用いる

    ・決意表明には、一人称、僕、を使い、文末に、思います、といって、言葉を和らげる

    ・オンラインで雑談がしずらいのはなぜ
     ① ミーティング禅語のフェーズがない
     ② 発話のオーバラップが起きない
     ③ 視線の授受ができない
     ④ 視覚情報が極端に限られていて、聞き手の行動が機能しずらい
     ⑤ 小さい河井の場を作りだすことができない
     
    ・メラビアンの法則 対話でのコミュニケーションでは、言語情報、聴覚情報、視覚情報の3つの情報が影響を与えている
     つまり、声のトーンや、ジェスチャーといった非言語コミュニケーションの方が、影響をもっているというものです

    ■コミュニケーションデザイン

    ・話し合いのプロセスや、ファシリテーションのスキルを学ぶ、その目標は
     ① 対話、議論、それを通じた、つながぎ、ひきだす 能力の機能、重要性を理解する
     ② セクターを超えた対話・議論を支援するファシリテートを実践し、つなぎ、ひきだす、能力を習得する
     ③ 話し合いに過程があることを理解し、現在がどの段階にあるかを意識できるようにする
     ④ 対話・議論の能力の理念とスキルの基礎を習得する

    ・現場の声(語り)を聴き、発信する。それをナラティブという

    目次

    はじめに
    1章 優しさの手がかり――カギとなる概念や理論
    2章 雑談のススメ
    3章 大切なのは「聞くこと」
    4章 難しいコミュニケーション
    5章 コミュニケーションデザイン――記述から提案へ
    終章 優しいコミュニケーションを考える
    おわりに
    参考文献

    ISBN:9784004319719
    。出版社:岩波書店
    。判型:新書
    。ページ数:222ページ
    。定価:940円(本体)
    。発行年月日:2023年04月
    。発売日:2023年04月24日

  • 話していて、また、話を聞いていて気持ちいい人がいる。今まで意識したことはなかったが、なぜそう感じるのかわかるかもなので読んでみたい

    #優しいコミュニケーション
    #「思いやり」の言語学
    #村田和代
    23/4/24出版

    #読書好きな人と繋がりたい
    #読書
    #本好き
    #読みたい本

    https://amzn.to/3mTyCZc

  • 図書館がおくる、「クラブ・サークル向けおすすめ図書」

    クラブ・サークル名 ボードゲームサークル
    請求記号 I-1971
    所蔵館 2号館図書館

  • 高橋・新書ガイドから。これ、書かれていることにはいちいち納得なんだけど、そこまで目新しい視点が得られなかったという点で、やや辛めの評価。論破って言葉をやたら良く聞くようになった気がするけど、そこに感じる違和感の主因は、本書にもあるように、視点が自分ってこと。そんな生産性の低いことばかりしてないで、逆転の発想を持ちましょうよ、と。優しいコミュニケーションには、聞くことが非常に重要で、ちゃんと聞くことによって、前向きな関係性が構築される訳だな。

  • 【書誌情報】
    『優しいコミュニケーション――「思いやり」の言語学』
    著者:村田 和代[むらた・かずよ] 社会言語学(コミュニケーション研究)。
    通し番号 新赤版 1971
    ジャンル 岩波新書 > 言語
    刊行日 2023/04/20
    ISBN 9784004319719
    Cコード 0281
    体裁 新書 ・ 222頁

    村田和代(ムラタ カズヨ)
    奈良県橿原市生まれ.ニュージーランド国立ヴィクトリア大学大学院言語学科Ph.D. (言語学).現在,龍谷大学政策学部教授・学部長.専門は社会言語学(コミュニケーション研究).
    [https://www.iwanami.co.jp/book/b623491.html]


    【目次】
    はじめに [i-v]
    データ文字化記号について [vi]
    目次 [vii]

    1章 優しさの手がかり――カギとなる概念や理論 001
      社会言語学とは
      調査方法
      「何を言ったか」「どのように言ったか/伝えたか」
      言語のバリエーション 
      コミュニケーションの機能
      ポライトネス
      ポライトネスの実例
      スピーチ・アコモデーション
      コミュニケーションは一方向?

    2章 雑談のススメ 025
      制度的談話と非制度的談話
      雑談をめぐる研究
      雑談と非雑談を決める三つの指標
      制度的談話にみられる――職場談話、ミーティング
      ビジネスミーティング前の雑談――ニュージーランドとの比較
      まちづくりの話し合いとファシリテーター
      本題に入る前に着目する
      自己紹介での特徴的なふるまい
      話し合いのデザインと雑談
      雑談の展開に有効な言語ストラテジーとは?
      職場や学校での雑談をふりかえってみよう
      まとめ

    3章 大切なのは「聞くこと」 065
      コミュニケーションのとらえ方の変容
      聞き手行動の多層的意味と聞き手の役割
      日本語会話における聞き手の重要性
      まちづくりの話し合いのファシリテーター
      話し合いの参加者にみられる変化
      話し合いはオープンコミュニケーション
      よい話し合いは、聞き・聴き・訊き合い
      聞き手に配慮すること
      聞き手行動を意識するための実践トレーニング
      まとめ

    4章 難しいコミュニケーション 095
      コロナ禍初動期の首長記者会見の考察
      記者会見の比較
      小池東京都知事記者会見の言語的特徴
      吉村大阪府知事記者会見の言語的特徴
      安倍首相記者会見の言語的特徴
      聞き手に配慮した優しさが大切
      記者会見からみえる新しい政治家の姿
      オンラインコミュニケーションの強みと弱み
      なぜ雑談がしにくいのか?
      言語以外のコミュニケーションについて考えてみよう
      対面・オンラインで相槌の頻度は変わるのか?
      オンラインコミュニケーションの工夫

    5章 コミュニケーションデザイン――記述から提案へ 141
      まちづくりの話し合い
      ファシリテーターの言語的ふるまい
      ファシリテーターが果たす役割
      地域公共人材と〈つなぎ・ひきだす〉能力
      〈つなぎ・ひきだす〉ファシリテート能力育成プログラム
      プログラムの特徴
      話し合いの能力は育成できる?
      「参加者として話し合いに臨む姿勢」を育てよう
      話し合いの研究成果を踏まえたコミュニケーションデザイン
      「話し合い」を多層的に研究する
      職場談話研究プロジェクトから見えてきたこと
      ユーモアの研究から見えてきたこと
      何を基準に評価しているのか?
      LWPの人材育成教材
      外国人スタッフと共に働く職場のコミュニケーションとは?
      社会連携型アクティブラーニング
      研究・教育の社会貢献――学生主体の学びをめざして
      ナラティブ研究 
      社会貢献や提案につながる言語・コミュニケーション研究に求められること

    終章 優しいコミュニケーションを考える 191
      優しいコミュニケーションを考える手がかり
      雑談、聞くこと、双方向
      相手のコミュニケーション行動の「普通」とは?
      優しいコミュニケーションとは?

    おわりに(二〇二三年二月 ニュージーランド ウェリントンにて 村田和代) [203-205]
    参考文献 [1-6]

  • コミュニケーションにおける聞く力の重要性を知った。コミュニケーションは相手と自分の双方向の行為だということを意識して「思いやり」を忘れないようにしたいと思う。

  • これまでのコミュニケーション論は、伝達に力点が置かれた。
    これに対して、人と関係を紡ぐ側面を重視したのが「優しいコミュニケーション」。
    聞き手への配慮がある「優しいコミュニケーション」が、どのように可能になるのかを社会言語学の立場から分析し、示したのが本書。

    最初に雑談の効用が説かれる。
    その効用も興味深いのだが、まず雑談に対して「正談」という用語があることに驚いた。

    雑談に有効な言語ストラテジーは6つ。
    1 相手の名前を呼ぶ
    2 相づち、積極的応答をする
    3 聞かれて答える内容に一言コメントを加える
    4 肯定的コメントやほめをする
    5 追加的情報提供をする
    6 相手の意向に逆らう場合は和らげ表現を

    抜き書きすると、何かビジネス書っぽい風情も感じられるが、でも大事なことだと思う。

    その後は、地域のワークショップで活躍する熟練ファシリテーターの言語的ふるまいの分析が続く。

    ファシリテーターがしていることはこんなふうだった。
    1 話し合いのルールの提示
    2 発言量の調整(発言が少ない人への促し)
    3 その場のトピックの提示
    4 話題の変わり目の提示(接続詞の活用)
    5 合意事項を繰り返し確認
    6 話題を取り下げられる発言者への配慮

    重要なのは「聞き、聴き、訊き合い」とまとめられているように、聞き手を優先する行動のようだ。
    とはいえ・・・上記のことをやっていくと、ファシリテーターの発言量も増えてしまう気がする。
    こういうところは、上手いファシリテーターとそうでない人の差がつくところなのかも。

    コロナ禍の政治家の言語行動を分析したところは面白かったが、なかなか難しいところもある気がする。
    どうしてもその後のコロナ施策が頭をかすめてしまい、筆者の分析を中立的に判断しづらい。
    また、筆者の意図から離れ、政治上のポピュリズムを追認する結果になってしまいそうな気がする。

    とはいえ、自分の言語行動を振り返るよいきっかけを与えてくれた本だった。

  • 【請求記号:801 ム】

  • 【配架場所、貸出状況はこちらから確認できます】
    https://libipu.iwate-pu.ac.jp/opac/volume/563798

全20件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

龍谷大学政策学部教授
「〈つなぎ・ひきだし・うみだす〉ためのコミュニケーションデザイン」(『包摂的発展という選択―これからの社会の「かたち」を考える』、2019、日本評論社)、『シリーズ 話し合い学をつくる』1、2、3(編、2016、2018、2020、ひつじ書房)、「ビジネスミーティングにみられるユーモアから発話の権利を考える」(『発話の権利』、2020、ひつじ書房)。

「2022年 『レジリエンスから考えるこれからのコミュニケーション教育』 で使われていた紹介文から引用しています。」

村田和代の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×