財政と民主主義 人間が信頼し合える社会へ (岩波新書 新赤版 2007)

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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004320074

感想・レビュー・書評

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  • 専門的知見を交えながら幅広い話題が提供されている「新書らしい」感じの一冊だった。興味深く読了したところだ。
    本書では、世の中の資金等の動きに大きく2つ在るとしている。民間企業等の活動による、利潤を追求する動きが在り、これに対して必ずしも利潤を追求するのでもない政府等が資金を動かすというモノが在る。後者を「財政」と呼ぶ。その「財政」を巡って様々な話題を展開しているのが本書である。
    所謂「パンデミック」という未だ記憶に新しい問題の故に色々な動きが世界の様々な国々で在った。日本もそれを免れてはおらず、色々な事が在った。本書の前半の方では、こうした事柄を巡っての話題が在る。
    要は「人々が生きる権利を如何に護る」ということで、医療のような公共的なサービスを如何に運営する、如何に機能を護るというような問題が「パンデミック」に際して顕在化していた。これに関して、日本国内の例や国外の事例を色々と検証するような内容が在る。
    所謂「新自由主義」というような経済関係の考え方が在る。これは米国や英国の流儀であるが、日本はこうした流れの中に在る。これらに対して、欧州諸国等の流儀が在る。そういった辺りが詳しく綴られている。
    米国、英国、更に日本では社会の様々な動きに関して「観客型」という立ち位置になる人達が多い。欧州諸国では「参加型」ということになって、常々そういうように在るべきだと社会の中で促されているようだ。
    こういう内容であれば「“出羽守”だ」と揶揄されてしまうことに終始するかもしれない。「でわのかみ(出羽守)」というのは「〇〇では」と国外事例のようなモノを列記するばかりという程の意味で時々言われる。が、本書はその「でわのかみ(出羽守)」に終始しているのでもない。
    日本国内にも、時代の変化で半ば潰えてしまったが、「大正デモクラシー」というような「参加型」で社会の様々なことを動かそうとした経験、歴史も在り、地域の人達が地域で生き生きと活動出来ることを目指した様々な経過というモノが在るのだ。そういうことが確りと取上げられている。
    著者は1946年生まれ(今年で78歳になる)ということだ。何か「後身達」や、より遠い未来を生きる世代に向けて、「人が人らしく在る未来を思い描きたい」という想いを遺し、伝えようとして本書を著したのかもしれないというような気もした。
    未だ記憶に新しいような事柄も含めた“問題”の解説も含めて、新しい明日に向けたヒントを示すような本書はなかなかに貴重だと思う。御薦めしたい。

  • 東2法経図・6F開架:B1/4-3/2007/K

  • 【本学OPACへのリンク☟】
    https://opac123.tsuda.ac.jp/opac/volume/713181

  • 311.7||Ji

  • 20240305-0322 財政学の泰斗神野先生による。財政のあるべき姿と地域自治体での共同意思決定にもとづき未来を選択していく必要性について語っている。

  • 配架場所・貸出状況はこちらからご確認ください。
    https://www.cku.ac.jp/CARIN/CARINOPACLINK.HTM?AL=01427038

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著者プロフィール

神野直彦(じんの・なおひこ)
日本社会事業大学学長、東京大学名誉教授(財政学・地方財政論)
『システム改革の政治経済学』(岩波書店、1998年、1999年度エコノミスト賞受賞)、『地域再生の経済学』(中央公論新社、2002年、2003年度石橋湛山賞受賞)、『「分かち合い」の経済学』(岩波書店、2010年)、『「人間国家」への改革 参加保障型の福祉社会をつくる』(NHK出版、2015年)、『経済学は悲しみを分かち合うために―私の原点』(岩波書店、2018年)
1946年、東京大学大学院経済学研究科博士課程単位取得満期退学



「2019年 『貧困プログラム 行財政計画の視点から』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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