湯川秀樹が考えたこと (岩波ジュニア新書 95)

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  • Amazon.co.jp ・本 (189ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784005000951

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  • (2011.10.28読了)(2006.05.13購入)
    【10月のテーマ・宇宙を読む(その3)】
    読むあてもなくとりあえず買って積んでおいたのですが、「量子力学入門」並木美喜雄著、を読んでみて、全くお手上げだったので、素粒子論の振り出しに戻ったら少しはわかるかなと思い、手に取りました。
    湯川秀樹さんは、「陽子や中性子のあいだに働く力を理解するには、中間子という新しい素粒子を仮定して、その中間子を陽子や中性子がキャッチボールのようにやり取りすることによって力が働く」という考え方を出して、それが観測で裏付けが取れたところで、ノーベル物理学賞を受賞しました。1949年のことです。62年前のことです。
    「量子力学入門」よりは、わかりやすいのですが、結局、素粒子論(量子力学)から、現代の研究へとつながって行くので、限りなく易しいというわけにはゆきませんでした。
    内容としては、湯川秀樹さんの研究内容と伝記的なもので構成されています。

    章立ては、以下の通りです。
    1、中間子論
    2、原子と量子力学
    3、湯川秀樹の生いたち
    4、原子核と中間子
    5、世界の湯川へ
    6、中間子論から素粒子論へ
    7、科学と平和
    8、素粒子と宇宙

    ●湯川さんの頃の問題(5頁)
    原子の中心にある原子核がどんなものであり、またどういう力で原子核ができているか。
    (原子核は陽子と中性子からできているということがわかった。)
    量子論と相対論の統一。(この問題は、イギリスのディラックが解いた。)
    ●四つの力(10頁)
    一つ、ニュートンが発見した重力
    二つ、マックスウェルが完成した電気や磁気の力
    三つ、放射線を発生させる弱い力(イタリアのフェルミ)
    四つ、湯川が言い出した強い力(クォークを結び付けている力)
    ●光も電子も同じ(30頁)
    ド・ブロイは、「光が粒子でもあるなら、電子も粒子であり波であるべきだ」と考えたのです。(1927年に、実験によって確かめられました。)
    ●アインシュタインと湯川(158頁)
    湯川がプリンストンに滞在中、アインシュタインが湯川の部屋を訪れ、原爆の災害が日本国民に甚大な被害を与えたということについて、「すまなかった」といい、そして同時に、「科学の研究が二度と戦争に使われないようにしなければいけない」ということを説いたといわれています。
    ●ダークマター(180頁)
    銀河系は、たくさんの星からできていますが、銀河系は星の重力と銀河の回転運動が釣りあった構造になっていると考えられてきました。しかし、回転速度から重力の強さを測ってみると、その重力の質量は、光っている星の質量よりもはるかに大きいことが発見されています。すなわち、光っていない暗い物質の質量が、たくさん銀河系の中にあるということです。
    このくらい物質の正体は、ニュートリノという素粒子の質量ではないかという考え方が出されています。

    ☆関連図書(既読)
    「量子力学入門-現代科学のミステリー-」並木美喜雄著、岩波新書、1992.01.21
    「宇宙は何でできているのか」村山斉著、幻冬舎新書、2010.09.30
    ●湯川秀樹の本(既読)
    「旅人」湯川秀樹著、角川文庫、1960.01.15
    「人間にとって科学とはなにか」湯川秀樹・梅棹忠夫著、中公新書、1967.05.
    「物理の世界・数理の世界」湯川秀樹・北川敏男著、中公新書、1971.05.25
    「創造への飛躍」湯川秀樹著、講談社文庫、1971.07.30
    「宇宙と人間 七つのなぞ」湯川秀樹著、筑摩書房、1974.07.18
    「目に見えないもの」湯川秀樹著、講談社学術文庫、1976.12.10
    (2011年10月31日・記)

著者プロフィール

1938年生まれ,1960年京都大学理学部卒業,1964年同大学院中退。1974―2001年京都大学教授,基礎物理学研究所長,理学部長を歴任。2001―2014年甲南大学教授。


「2014年 『林忠四郎の全仕事 宇宙の物理学』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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