- Amazon.co.jp ・本 (228ページ)
- / ISBN・EAN: 9784005006991
作品紹介・あらすじ
「パスタを食べることでイタリア人はイタリア人であることを自覚する」-。地域色の強いイタリアで、人々の心を結ぶ力をもつパスタ。この国民食は、いつ、どのように成立したのでしょう。古代ローマのパスタの原型から、アラブ人が伝えた乾燥パスタ、大航海時代の舶来種トマト、国家統一に一役買った料理書まで。パスタをたどると、イタリアの歴史が見えてきます。
感想・レビュー・書評
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パスタの歴史を軸にして、イタリアの歴史(政治/経済/社会/文化/宗教)がまなべるわくわくするような一冊。
食の変遷には農業・産業から家族のあり方、政治的事情、外交関係までいろいろな要素がからんでいるのだな、と序章「日本のパスタ事情」でのみこんだところで、本題へ。小麦の生産、トマトやじゃがいもなど外来野菜とのであい、製法の進化、調理法の変化、郷土料理と国民食の2つの路線、イタリアの小咄や小説に出てくるパスタ、おふくろの味への思い・・・パスタを中心としたイタリアの食卓の変遷の概略を学びつつ、イタリア半島の歴史もおおざっぱにつかめて、かつ、食べ物のような身近な視点から社会システムなどの大きな仕組みを語る学問の醍醐味を教えてくれる、1+1=2以上になったテーマ設定が絶妙。 -
2012年の高校生の課題図書。タイトルに惹かれて読んでみたけれど、やっぱり課題図書って不思議。なぜわざわざこの本が選ばれなければならなかったんだろう?
岩波ジュニア新書だし、あとがきを読んでも一応読者は高校生が想定されているみたいだけれど、決してそんなことはない。岩波ジュニア新書と課題図書の選考委員(そんなものがあるのかどうか知らないけれど)は何か勘違いしているんじゃないだろうか。優しい言葉づかいで書かれていたら、本は読めるってものではないぞ。
たとえば本書には次のような一節がある。
「1960年代以降のの飛躍、いわゆる『イタリアの奇跡』が国民の収入と食事のレベルを高め」云々。
ここでは明らかに「イタリアの奇跡」を知っている者が想定されている。言い換えれば、それを知らない者(たとえば僕ね)は、なんか疎外されているような気分になるのだ。
他のレビューにもある通り、パスタの歴史を概観する前半部には、高校時代世界史を選択した者でも知らないような人名、国名、条約名が頻出する。
どう考えてもこれは、なんて言うか、課題図書として「一般的な高校生」に薦めやすい本ではないぞ。
もちろん、「イタリアの奇跡」を知らなくたって、国名なんていい加減に読み飛ばしたって読めるのは読める。でも、自分が読者として想定されているような本を読むことは、けっこう苦痛なことだ。
パスタの種類も、ソースの種類もたくさん出てくるけれど、説明が簡略にすぎてイメージが沸きにくいにもイマイチ。
パスタの来歴とその影響がコンパクトにまとめられている内容そのものは評価できるんだけれど、これでは「課題図書はおもしろくない」って言われても仕方ないなあ。 -
北部では生パスタ、南部ではトマトソースが発展し手で食べていた庶民の料理から徐々に洗練されてゆくマンマの味パスタ。パスタを食べることでイタリア人はイタリア人であることを自覚する、各都市国家による地域色強かったイタリアを統一するにあたってはパスタは大いに貢献したようです。
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「砂糖」とか「茶」とか「コーヒー」とか「チョコレート」とかとかと違って、「パスタ」なんで、あまり世界史的な広がりがない。ま、その分深堀りができている、のかな。
実はイタリア史はツマみたいなもんで、とにかく「パスタ食べたい」と思わせる「パスタ史」の本だと感じた。 -
とても面白かった。高校生の課題図書だったようだが、世界史選択でないと読む気しないかも。大人のほうが楽しめるという意見に同感。
もともとのパスタは甘い料理だったそうだ。突然思い出したのは「友の会」のおやつ。茹でたマカロニに黄な粉をかける。砂糖か黒蜜もかける。奥の深いおやつだったのね。さすが自由学園。
日本のパスタ事情の段階でナポリタンが食べたくてたまらなくなり、昔ながらの喫茶店に行ったり、子どものころの外食はマカロニグラタンだったと作って食べたり、去年「ヌードルの文化史」を読んだ時同様、読了するのに時間がかかり、体重も増えた。でも楽しかったな。
ヴィットリオ・エマヌエル二世がサルディーニャの王様だったとは知りませんでした。サルディーニャ島がそういう場所だったとも。映画「山猫」を思い出した。
イタリアの統一に料理書が大きな役割を果たしたというところが一番ぐっときました。国語の教科書とかではなく、農民や庶民の言葉を使って整えたレシピによって国民の胃袋と心と言葉を統一したとは民度が高いね。
野菜と穀物、オリーブ油中心の伝統的なスローフード運動がこれからのイタリアを救うであろうという終わりですが、それは日本料理にも言えることですね。面倒だけれど気をつけなくては。 -
個人的には傑作新書の一つ。
パスタというイタリアの国民食を通してイタリア史を語るという試みは面白いと思った。冒頭に、日本でのパスタの受け入れられかたが書かれているので、興味も持ちやすいし、なによりも最初の写真が美味しそうで良かった。
イタリアではパスタが昔から食べられていたわけではなく、最初はミネストローネを庶民は食べていて、パスタは王侯貴族の食べ物(小麦粉で作るから当たり前か)だったのが、都市経済の発展によってどんどん庶民の、母が作る家庭料理になっていく様子が書かれている。もちろん、技術の発展や、新大陸発見によるトマトの流入などが、パスタに進化と洗練をもたらした。
こういう質の高い新書が「ジュニア向け」というのは、ちょっとどうかと思うほどだった。誰が読んでも楽しくなるし、パスタを食べようという気にさせてくれる良書だと思う。 -
日本のそば・うどん同様、パスタもイタリアの地方ごとに特色があり、日本のレストランで食べられるのはほんの一部しかないことがわかる。読んでいると、イタリアにいって食べ比べたくなる。
パスタの歴史をたどりながら、イタリア中世以後の歴史について語っており、こうした切り口でのイタリア史は読んだことがなく、面白く読み通せた。 -
イタリアの国民食であるパスタの歴史を通じて、小麦やトマト、アラブ世界との断絶と交流、都市国家の分立とイタリア統一の流れをつかむことができる。乾燥パスタはイタリア発ではなかった、色んな形状のパスタが生まれた背景にも土地柄や歴史があると。こういうアプローチは歴史を身近にしてくれてとてもよい。
19世紀に統一したからこそ隣町との違いが浮き彫りになりローカル色が意識され始めた、というのは確かに。
しかも紹介に限らない。現代イタリアが抱えているもパスタを通じて浮かび上がるのがよかった。革新的?イタリア人が否定しようとしてできなかった件は笑える。ただ、お母さんが家でつくるものという伝統的な形態が崩れるのは止められない。パスタの過去、現在、未来を感じ、考え、では日本人の米食との類似点は?相違点はと考えると眠れなくなった。