ヨーロッパ覇権以前 下 もうひとつの世界システム (岩波現代文庫 学術449)
- 岩波書店 (2022年4月15日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (342ページ)
- / ISBN・EAN: 9784006004491
作品紹介・あらすじ
世界市場ブリュージュの賑わい、モンゴル帝国のもと活況を呈する「シルクロード」、海上交易で活躍するエジプト・カーリミー商人、「世界最大の都市」杭州の繁栄……。近代世界成立以前の一三世紀、ヨーロッパから中国に至るユーラシアの陸海は、すでに一つの世界システムを作りあげていた。広い視野と豊かな筆致で描かれるグローバル・ヒストリー。
感想・レビュー・書評
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続いて下巻。
まずは、エジプト、マムルーク朝下のカイロ。イスラムと商取引について、コンメンダ、貨幣と信用取引、カーリミー商人等々解説があるのだが、正直この辺りについて十分理解出来なかった。
続いてアジアの海上交易について。アラビア海、インド洋、南シナ海の3つの回路。
この辺り、ポルトガル来航以前のインドとアラブの交易の具体相は良く知らなかったし、まして東南アジア海峡における中国、インドとのつながりの細目などはほとんど知らなかったので、勉強になった。
最後の第11章は、「13世紀世界システムの再構成」という題で、なぜ世界システムは崩壊したのかを問う。
そもそも13世紀世界システムが存在したと言えるかどうかとの批判もあるようだが、グローバルな視点での世界の見方を教えてくれる、とても知的関心を呼び起こす書だと思う。
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戦争や疫病により交易のルートが寸断されることで世界システムにほころびが生じ、システムの再編成が進んでいく様子が描かれている。今の世界システムももちろん安泰ではなく、新たな世界システムが生まれる可能性があることを感じた。商人の活動も積極的に描かれており、商社マンの苦労が感じられる。
中国が世界征服できなかった理由についてはジャレド・ダイヤモンドが分析しているが、アブー・ルゴドは別の切り口から分析している。これはこれで面白い。
著者によると、国の興亡は民族の特性によるものではなく外部との関係に強く依存するのだそうだ。このあたりはハーバート・サイモンのシステム論に通じるものがありそうだ。西洋人のオリジナリティ、日本人の勤勉さは国の興隆にそれほど寄与しない。昭和から平成の移行期によく聞かれた「日本人は勤勉で真面目で礼儀正しいから日本は経済大国になったのだ!」という主張も今ではさほど説得力を持たない。こんなことを信じている日本人はもういないけど。
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東2法経図・6F開架:B1/8-1/449/K
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209.4||Ab||2
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【蔵書検索詳細へのリンク】*所在・請求記号はこちらから確認できます
https://opac.hama-med.ac.jp/opac/volume/463890