怠け数学者の記 (岩波現代文庫 社会 19)

著者 :
  • 岩波書店
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感想 : 17
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784006030193

作品紹介・あらすじ

数学を理解するとは、数学的現象を「数覚」という感覚で「見る」ことである。「数覚」は感覚なので頭の良し悪しとは関係がない。フィールズ賞受賞数学者が数学に対する独自の考え方を披瀝し、自らの学習経験や留学生活のエピソードを綴りながら、日本の数学教育に提言する。学ぶことの楽しさが溢れるエッセイ集。

感想・レビュー・書評

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  • 全然"怠け"じゃなかった。

  • いろいろな数学者との関係が面白かった。当時の数学は未熟だったということもわかってよかった。

  • 300円購入2014-03-28

  • 日本人ではじめてフィールズ賞を受賞した著者のエッセイをまとめた本です。ヘルマン・ワイルの招聘によりプリンストン高等研究所で研究をおこなうことになった著者の見聞録のほか、数学教育の現代化に対する異議申し立てなどが含まれています。

    数学の哲学についても深い洞察をおこなっているワイルは、直観主義の立場に立っており、そうした彼の主張が著者との対話のなかで表明されています。これに対して著者は、日々数学の研究にたずさわる研究者の実感にもとづいて、われわれは数学的実在を「数覚」によって「見る」のではないかという主張を展開しています。

  • 数学について、外国生活について、教育について、示唆的なエッセイである。大家ばかり出てきて、すごいなぁと思う。数学が学びたくなってきた。

    だぶって書かれている部分が目立つが、編集でなんとかならなかったのだろうか。

    • corpusさん
      確かに同じ文章が重複していましたね。僕は逆に小平さんの記憶力のすごさかなと思いました。
      確かに同じ文章が重複していましたね。僕は逆に小平さんの記憶力のすごさかなと思いました。
      2020/01/03
  • 2000年(底本1986年)刊。日本初のフィールズ賞の受賞者たる著者の数学・算数教育論、数学研究の回顧録、プリンストン大学留学記などをエッセイ風、対談で収録した書。著者の手による「ボクは算数しか出来なかった」と相当被る。また、数学研究の回顧録は専門的すぎて、字面を追っただけかもしれない。著者は元スタンフォード大学教授、東京大学名誉教授。ちなみに「数学を理解するとは、数学的現象を『見る』、数覚によって知覚する」という著者の言には、首肯するとともに、数学が自分からは遠い地平にある意を強くしてしまったところ。

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    数学を理解するということは、その数学的現象を「見る」ことである。「見る」というのは勿論目で見るのとは異なるが、ある種の感覚によって知覚することである。私はかつてこの感覚を「数覚」と名づけたことがある。....数覚の鋭さは、一寸説明し難いけれども、論理的推論能力とは異なる純粋な感覚であって、数覚の鋭さは、たとえば聴覚の鋭さ等と同様に、いわゆる頭の良し悪しとは関係がない。...将来人類が進化して数覚が発達した暁には、現在われわれが苦心して証明している定理が数覚によって一目両全に証明なしにわかるようになるのではなかろうか?(P.24-27)
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    フィールズ賞数学者、小平先生のエッセイ、回顧録。いろんなところに投稿したものを集めたもののようなので内容に重複があるのはいまいちだが、さすが天才数学者のエッセイで参考になります。

    小平先生はよくこの数覚について語っています。わたしも同感です。学生時代に異様に数学のセンスがよい友人がいましたが、彼がではものすごい頭が鋭く切れまくりか、というとそんな感じもなく、ぼーっとしている印象でした。頭の良さと数覚が違うものだ、と小平先生は良く語っていますが、同感です。目が良い、というのと同じように、数覚が良い、といったレベルのものなのでしょう。そう考えるほうが、ガロアやガウス、リーマンといった天才数学者たちの存在が納得できます。彼らは異常に頭が良い、というよりは、人に見えない数学的現象が見えてしまう、そういう風に捉えるほうが理解できます。ガロアは10代にして天才的な理論を打ち立てますが、人には見えないものが見えてしまったのでしょう。そして小平先生はこの数覚を磨くには、ピアノを習得するのと同じように日々の練習といった努力が必要である、と述べています。日々の努力ですね。私も磨いていきたいところです。

  • 数式が出てくるところはさっぱりですが、たとえば数学教育の迷走の部分などはなるほどなと思いました。
    プリンストンだよりなど読むと、いまほんの1、2週間海外出張で英語漬けの生活になってますが、共感できる内容が多いです。
    もう50年、60年も前の話なんですが、英語の苦労話なんかほんと似ています。

  • 「数学のノーベル賞」であるフィールズ賞の受賞者、小平邦彦氏によるエッセイ。「数覚」についての考察、日本の数学教育に対する警告や、単身渡米時代に奥様に充てた手紙集「プリンストン便り」など21の文章が収録されています。

    「数学は高度に技術的な学問である。すべて技術といわれるものを習得するには長い時間をかけて繰り返し練習することが必要である」(「ノートを作りながら」)との言葉を思い出しながら、数学に励む日々です。

  • 日本人初のフィールズ賞受賞者で、20世紀を代表する数学者小平邦彦のエッセイ集。重複する箇所も多いが、数学を使う人には是非とも一読を勧めたい。数覚という言葉に代表されるような小平独特の数学観や、計算やユークリッド幾何を重視するといった数学教育への提言など非常に興味深い。またアンドレ=ヴェイユら当代一流の学者達との交流の記録も面白い。筆者が一番印象に残ったのは一番初めの「ノートをつくりながら」である。これを読めば自分の数学の勉強の仕方がいかに甘いか、そして小平は決して怠け者ではなく、超人的な努力をした天才であることがわかる。

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