すしの本 (岩波現代文庫 社会 70)

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  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (309ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784006030704

作品紹介・あらすじ

米と魚を漬けこんで自然発酵させる馴れずしから今日の粋な握りずしまでのすしの歴史二千年を、調理学的・歴史地理学的に論じる。軽妙な語り口、横道にそれる楽しい蘊蓄。和漢の膨大な文献を渉猟し、一万七千通余のアンケートと八〇冊を越える聞取帳をもとに著わされた、自然科学・人文科学を横断する碩学の決定的な名著。

感想・レビュー・書評

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    A/596/517167

  • 鮎くての後の心にくらぶればむかしは鮨もおもはざりけり
      「古今夷曲集」

     江戸時代前期の寛文6年(1666年)に出された狂歌集より。初句「くて」は「食ひて」の意味だろう。ご存じ、百人一首43番歌「逢ひ見てののちの心にくらぶれば昔は物を思はざりけり」をもじったものだ。アユの馴【な】れずしの絶妙なうまさに、ああ、この味を知らなかった昔は、すしのことで思い悩むこともなかったと、ため息。
     この狂歌は、篠田統の旧著「すしの本」で知った。東アジア食物史の第一人者である氏によると、馴れずしこそ、すしの原始的な形であるらしい。魚を米などのでんぷん質とともに漬け込み、乳酸の酸味で腐敗をおさえた貯蔵食品だ。
     馴れずしは米を捨てて魚だけを味わうが、室町時代からは、完全に馴れる前に米ごと味わう「生成【なまなれ】」が多くなったという。アユの香気と、発酵した米の香りが魅力のアユの生成。だが、それをしのぐ人気のすしも存在した。
      
      近江鮒【ふな】宇治丸鮎の鮨もあれどおされぬ味は鰆なりけり
        
     同じ狂歌集より。「鰆【さわら】」は、刺し身であれば今ごろの「寒鰆」こそ脂がのって旬。だが、その刺し身とはまた違ううまさのサワラずし、味を想像するばかりだ。
     平安から江戸時代、関西や北陸などでは馴れずし、いずし、棒ずし、姿ずし等々がすしの主流だった。現在なじみのにぎりずしは、食物史から見ると、東京を中心とした近年のものであることに気付かされる。そんな歴史をひもといた後に、一言。まこと、「むかしは鮨もおもはざりけり」。

    (2014年1月12日掲載)

    追記:北海道では飯寿司が美味しいですね♪

  • 寿司くいてぇ

  •  「おかめの会」のバイブルにしようと思って読んでみたのですが、冒頭から以下の通り。
    「だいたい、明治からこの戦前までに書かれたすしの本といえば、どの本も例外なしに東京風の握りずしだけを正統のすしだと考え、ページ数の四分の三から五分の四までを握りずしの紹介、解説に費やし、そのほかのすしはことごとく家庭用か田舎ずしだと頭からけなしつけてかかっていた。」
    とのご批判。。。ご想像の通り、期待してた内容ではなかったのですが、これはこれでおもろかったのでよしとしよう。
     それはともかく、明日はおかめの会です。よろよろ。

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