フードバンクという挑戦――貧困と飽食のあいだで (岩波現代文庫)

著者 :
  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784006032975

作品紹介・あらすじ

まだ十分安全に食べられるのに、ラベルの印字ミスや規格に合わないなどの理由で生まれる大量の「食品ロス」。その一方で、たくさんの困窮する人々や食べられない子どもたちがいる。両者をつなぎ、「もったいない」を「ありがとう」に変える、フードバンクという挑戦が日本各地で徐々に広まりつつある。携わる人々の思いと活動の実際、これからの課題をわかりやすく示す。

感想・レビュー・書評

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  • コロナ禍にあって注目が集まるフードバンクという活動について知りたくて手に取った。初版は2008年に単行本として刊行され、2016年に現代文庫に収載されるにあたり、その後の経過も加筆されている。やや情報が古いが、とてもいい本だった。

    まず、前半でフードバンク発祥の地であるアメリカの2008年当時の最新状況が紹介される。ビジネス街の中心にビルを構え、いくつもの専門部署に分かれる等、想像を超えたスケールの大きさに驚かされる。参加する企業には税制優遇のインセンティブがある等、制度上もしっかりサポートされている。一方で、すでに当時、企業の効率化が進み、廃棄品が出にくい状況となっており、フードバンクでは食料を購入したり、自らのブランドを立ち上げたり、食料を提供する施設から「維持費」を徴収したりと、変化が生じていた。

    データが多用され、非常にわかりやすい説明がなされるのは、さすが元新聞記者の著者である。
    アメリカの章で印象に残ったのは、教会が地域のコミュニティのハブとなり、フードバンク活動を支えているということ(日本には寺があると思ったが、最初はうまくいかなかったらしい)。そして、活動資金の半分は個人からの寄付で成り立っているということ。寄付やボランティア文化のない日本では、そもそも根付きにくい活動なのではないかと想像させ、日本のパートに入っていく。

    日本のフードバンクの草分け的存在であるセカンドハーベスト・ジャパンの創設者は、マクジルトン・チャールズさんという外国人男性である。日本のパートは、彼の生い立ちが導入となり、団体設立までの興味深いエピソードが描かれる。日本とアメリカの文化的な違いがフードバンクの設立にも色濃く影響を与える。悲しいかな、日本の困難な人たちは、横にも縦にもつながらず、孤立しているのだ。

    2008年当時、日本のフードバンクは「もったいない」食品のロスを減らすことに主軸を置いてきた。しかし、リーマンショック後、「貧困」へと視点が移ったという。そして、各地にフードバンクが設立され、2016年現在に至る。企業や個人からの寄付に大きな期待ができない日本独自のフードバンクも育ってきている、としてまとめられている。
    うーん、すごく勉強になった。でも、その後どうなったんだ。今はどういう状況なんだ?

  • 読了しました。
    現在、私がボランティア活動として地元のフードバンク活動に参加しており、様々な知見を得たくて手にした本です。

    本書は、日本で初のフードバンク団体「セカンドハーベスト」(2HJ)の設立から、軌道に乗るまでを中心的に記載されており、アメリカなどの海外の情報や日本の現状についての分析が詳しく記載されてい本です。

    2008年に著書は発刊されていますが、2021年の現在に起こっている「食品ロス」「貧困」などの社会状況は変わっていおらず、むしろ深刻さを増しているような感じがしています。
    なので、今でも新規性豊かなものであり、十分に手に取った動機を満足できた内容でした。

    食品ロスをもたらす、資本主義、商業主義的な流れ。
    子供、外国人、一人家庭、派遣社員などグローバル経済がもたらす格差社会。
    それをつなぐのが、フードバンクだということです。
    現在もあるフードバンク運営団体「セカンドハーベスト」ですが、ただの善意の
    ボランティア団体ではありません。
    寄付金を募るためのマーケティング戦略、専門知識を有する人材採用と育成、
    効率的に食物を運ぶためのロジスティクス、経営管理的な組織運営。
    老後の余勢をボランティアという考え方は否定しませんが、「人助け」は持続的な
    モノでなければならないと私考えており、そういったことをするためには、
    経営的なものの視点をもち、「社会課題」を解決していくといったあるべき姿であると思っています。
    本書は、そういう気持ちを満たしてくれる本です。
    随所にそういった事例や考え方、そしてそれを進めるための熱い気持ち、パッションがてんこ盛りです。
    私が知りたかったフードバンクという組織の運営の考え方などもヒントがたくさん載っています。

    「フードバンク」を知りたい方にとては、教科書的な本の位置づけであり入門書を探している方にお勧めの本です。

  • アメリカのフードバンクの歴史、アメリカのフードバンクの現状と課題、日本初のフードバンクの設立に携わったアメリカ人の半生、日本のフードバンクの紹介や現状と課題など。

    自分の地域のフードバンクの支援をしていきたいと思った。

  • 2006年に出版された本を2016年に文庫化。

    「あとがき」の後に、2006年の出版当時の状況と文庫化された2016年までのその後が書かれており、本書に書かれた事柄の重要性とその深刻さをさらに実感させられた。

    「まだ食べられる食品が大量に廃棄され、もったいない」という、イメージしやすいテーマが入り口ではあるが、食べることに困っている人達に届けることがいかに難しいことであるのかが理解できた。

    まさに挑戦し続けている方々の活動と課題を理解できる一冊。

  • 大学の授業の課題を書くにあたって読んだ。

    アメリカと日本に対するボランティアの価値観が違うことに驚いた。セカンドハーベストジャパンの活動は今食糧難民の人たちを助けることはできるけど、救済措置であって原因解決にはならない。だけど、それを必要としている人はいるわけで、その活動を辞めてしまったらその人達はお腹を空かせてしまう。このバランスが難しいと思った。でも、私はこの活動は、まだ食べられるのに捨ててしまう食品を活用できるのでとっても良いと思う。セカンドハーベストジャパンのことが詳しく知れてよかった。

  • 開発目標2:飢餓をゼロに
    摂南大学図書館OPACへ⇒
    https://opac2.lib.setsunan.ac.jp/webopac/BB99839622

  • 貸出状況はこちらから確認してください↓
    https://libopac.kamakura-u.ac.jp/webopac/BB00283491

  • 相互扶助だいじ。必要な人に必要なものを届ける。テクノロジー活用したらもっと上手いことできそう。

  • 大阪樟蔭女子大学図書館OPACへのリンク
    https://library.osaka-shoin.ac.jp/opac/volume/640627

  • 摂南大学図書館OPACへ⇒
    https://opac2.lib.setsunan.ac.jp/webopac/BB99839622

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著者プロフィール

大原悦子 新聞記者として17年働いた後、フリーランスに。2008年から大学教員。50歳を過ぎて初めて書いたお話『カタッポ』が、福音館書店の創立60周年を記念した「絵本にしたいお話」に選ばれ、「こどものとも」(2014年1月号)として出版された。「そういえば、幼稚園児の頃の夢は絵本作家だった!」と思い出す。その後、『ケロリンピック』(福音館書店)も刊行。本作が絵本3作目。その他の著作に『フードバンクという挑戦-貧困と飽食のあいだで』(岩波現代文庫)、『ローマの平日 イタリアの休日』(コモンズ)がある。好きな動物は、もちろんキリン!

「2021年 『チリンでんしゃ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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