証言私の昭和史 1 (旺文社文庫 261-1)

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制作 : テレビ東京 
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  • Amazon.co.jp ・本 (490ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784010643013

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  • ◆アジア太平洋戦争の実体験世代が未だ存命中に行われたテレビ・インタビューの傑作。第一巻は、退廃と喧騒の中、戦争の影が知らず知らず忍び寄る戦前昭和前半期◆

    1984年(底本1969年)刊行。
    ◆本書は東京12チャンネル(現テレビ東京)放映の対談番組「私の昭和史」を纏めた書(インタビュアは三國一郎氏)である。
     全6巻中の第1巻は1926年大正天皇崩御~35年頃の世相迄(なお、放映年月日は1964~68年迄)。

     目次的に具体的に列挙すると
    ①昭和天皇即位。
    ②片岡直温蔵相の失言。
    ③天皇直訴は部落解放の志。
    ④円本が開ける大衆文化時代。
    ⑤浅草演芸の灯火。
    ⑥第一回普通選挙。
    ⑦パリ不戦条約批准騒動。
    ⑧独飛行船の訪日。
    ⑨金解禁。
    ⑩ロンドン軍縮会議。
    ⑪台湾理蕃政策の限界。
    ⑫浜口雄幸暗殺未遂。
    ⑬官吏減俸始末記。
    ⑭東北凶作の陰影。
    ⑮大学は出たけれど。
    ⑯張作霖暗殺事件。
    ⑰満州事変勃発。
    ⑱黒幕が語る上海事変。
    ⑲愛新覚羅溥儀擁立。
    ⑳戦前の分裂大相撲。
    ㉑坂田山心中騒動。
    ㉒百貨店白木屋焼毀。
    ㉓少女歌劇団争議顛末。
    ㉔東京音頭は昭和の「ええじゃないか」。
    ㉕戦前昭和流行語大賞-モボ・モガから日の丸弁当まで。
    ㉖山中の水戦-丹那トンネル開通。
    ㉗戦前の少年ジャンプ-少年倶楽部。
    ㉘最高の著名二等兵のらくろ。
    というところである。


     退廃と喧騒の影に貧富の拡大、国民に見えない形での戦火の時代相が徐々に色濃くなっていくが、本巻では、これと、強調したくなるようなものは多くない。


     ただし、➉ロンドン会議に関し、特異な見方が開陳。すなわち、通常、補助艦艇の対英米7割如何・云々が喧伝されるロンドン会議だが、それよりも、主力艦に関し、旧式艦廃棄+新造艦建造を禁止したことの方が有意味性を持ったとの指摘。

     また、⑫の実行犯関連。テロに対する嘆願書の異様さと減刑恩赦での出所の事実。放映当時「全国愛国者団体会議」の議長職にあったこと。彼の弁解の中に、講演を官憲が中止させた例があるとのこと。

     ⑬で政府に抵抗して頑張ったのが、司法官(判事・検事)と鉄道職員。

     張作霖爆殺事件後での陸軍の軍事介入。これを頻りに仄めかされ、また諫言されながら、これを「治安維持は可能だ」と突っぱね拒絶した警察署長がいたという事実。

     流行語には世相が反映されるが、大衆社会の到来を「銀ぶら」や「円タク」で、これと対照的な「ルンペン」、国家の過剰賞揚とも、副食なき食生活という意味で貧しさの象徴にも捉え得る「日の丸弁当」、頽廃という観点で「エロ・グロ・ナンセンス」や「黒猫」(キャバレー的風俗店の隠語)などが引っ掛かった語彙であろうか。

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