- Amazon.co.jp ・本 (515ページ)
- / ISBN・EAN: 9784010643044
感想・レビュー・書評
-
◆アジア太平洋戦争の実体験世代が未だ存命中に行われたテレビ・インタビューの傑作。第4巻は戦局が悪化を辿る1943年以降。その中で、憲兵支配の実と、国力調査担当官僚への非常な仕打ちが印象的◆
1984年(底本1969年)刊行。
本書は東京12チャンネル(現テレビ東京)放映の対談番組「私の昭和史」を纏めた書(インタビュアは三國一郎氏)。
◇全6巻中の第4巻は1943年山本五十六長官戦死~45年戦艦大和出撃迄(放映年月日は1965~69年迄)。
具体的には、
① 山本五十六長官戦死裏面ー暗号解読戦争。
② アッツ島玉砕秘話。
③ 戦中唯一の日独交換使節。
④ 日本人神父が蘭印で敷いた善政。
⑤ 戦場で架けた橋実録。
⑥ 天佑のキスカ島撤退戦。
⑦ 東条推奨の玄米食を批判した陸軍大佐。
⑧ 酷寒の熱帯・天空踏破のニューギニア撤退戦。
⑨ ドラえもんにも描かれた上野動物園悲話。
⑩ ケネディ(未来の)大統領座乗の魚雷艇が体当たりした駆逐艦。
⑪ 中野正剛逮捕。
⑫ 学徒出陣の壮行は敵性スポーツで。
⑬ 武器なき商船隊。
⑭ 竹槍事件。
⑮ 勲三等保有者への二等兵召集。
⑯ 玉砕島での生き残り。
⑰ 「太平洋カモ撃ち」演説とその帰結。
⑱ レイテに舞う神風。
⑲ インパール。
⑳ 空母信濃轟沈。
21 風船爆弾。
22 消えた緑十字輸送船阿波丸。
23 ラバウル空襲。
24 戦中鉄路のスジ分析。
25 でっち上げられた横浜事件。
26 戦艦大和の最期。
インパール、動物園、特攻、米軍の暗号解読や商船隊。
本書刊行後も何度も取り上げられたテーマもあれば、ケネディ絡み等、刊行当時を反映したテーマもある。
ただやはり興味深いのは、最近余り語られない憲兵支配の内実。本書では⑦⑪⑭⑮25がこれに相当するが、最近殆ど当該テーマの書が出ないし、経験者・被害者の肉声が残されている点で極めて貴重である。
⑭竹槍事件は新聞検閲でもテーマになるが、ここでは異例の召集令状を受けた新名記者につき、擁護した海軍は元より、召集解除に奔走した陸軍現場(地方)の要請や現に決定した解除を中央が握りつぶし撤回させた様が語られる。
また⑮は戦中、国力・経済力・生産力を精緻に数値分析した官僚が、情報を海軍軍令部(高松宮を含む)に報告した途端、異例の召集令状が届き、かつ戦死確実な輸送船での移動命令を受けた人物の回顧譚。
あるいは⑰。国会議員の演説に噛み付いた陸軍が軍人でない議員に軍法会議で処断したという事案。勾留中の取調模様、裁判、収監の各々が具体的に語られており、近時では類書を見ない。
また特筆すべきは、⑳史料の少ない信濃沈没秘話。数少ない生存者の証言。そして何より⑧。天嶮徒歩踏破の撤退行。渦中で目撃したのは戦友の腿を切り取る姿。
そしてこれを食するほど困窮している兵士の実。しかも腿を切られた兵士は息も絶え絶えではあるものの(マラリア禍?)、その時点では存命であったという衝撃。
こんな逸話が載った証言録。類書を見ないよ。詳細をみるコメント0件をすべて表示