私に似た人

著者 :
  • 朝日新聞出版
3.43
  • (35)
  • (121)
  • (152)
  • (34)
  • (4)
本棚登録 : 756
感想 : 130
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022511713

作品紹介・あらすじ

【文学/日本文学小説】引き裂かれた心は、取り戻すことができるのか? いま文庫で爆発的に売れている『乱反射』から5年──《小口テロ》が日常化する社会に生きる人々の出口なき感情を描く社会派エンターテインメントの傑作にして、著者の新たな達成が、いよいよ全貌を現す!

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • サクサク読めるタイプの本ではない。
    431ページの長編で、更にテーマが重い。
    私に似た人、というタイトルは彼らの不幸はいつでも自分の隣にあるということと理解した。
    たまたま良い時代の日本に楽に就職し、たまたま健康にも恵まれて、たまたま快適な部屋で読書をしている私だっていつ息子を過労死で無くすかもしれないし、テロで両親を失うかもしれない。
    貫井徳郎氏の他の作品も読みたくなった。
    でも次に読む本はちょっと軽いあさのあつこ氏の本にします。

  • 「小口テロ」をキーワードに、10人の立場から話が進む。確かに、現実社会でも正社員になれない若者や母子家庭など、貧困が問題になってきているので、考えさせられるテーマでもあった。でも、加害者側にどんな理由があろうと、やっぱり罪もない人がテロで犠牲になるのは良くない。

  • 読んでいる時にちょうど似たような事件があったのでいろいろ考えさせられました。

  • 2021.5.3 読了

    日本にもテロが そこここで起こっている。
    大規模なテロじゃなくて、トラックで
    ビルに突っ込んだりというような<小口テロ>が
    流行ってる?ような日本が 舞台。

    連作短編で、主人公が 入れ替わる。
    それぞれ 別人だけど、
    微妙にテロと関わったような人たちが
    描かれていて、
    結末が気になり どんどん読んじゃいました。

    ラストは それなりに衝撃でしたが、
    いまひとつかな??(笑)


  • きっと、近々こんな世界になるんやろう。
    色んな視点でテロについて考えさせられる本やった。
    最後の展開には少しびっくりした。
    どうやっていったら、少しでもみんなが住みやすい世界になるのか。。
    考えること、知ることを放棄して、自分主義・身内主義で生きていくことはものっすごい怖いことなんやと改めて実感できた。

  • 最近読んだ本の中で一番面白かった
    今の時代を生きている私たちにも当てはまることは多いと思う

  • 確かに、どんなに頑張ってもどうにもならないことはあります。社会のせいだと思うのもわからなくはない。今のままじゃいけないのもわかるし何かしなければいけないけれど何ができるかもわからない。でもどうしても一線を超えていく気持ちがわかりません。罪のない人を巻き込むテロに結び付けるのは絶対に違うでしょう。社会的メッセージを受けてこの中に自分に似た人がいると思うことはちょっとできませんでした。しかしながらミステリとしての要素はきっちりしていて驚かされましたし一気に読ませるリーダビリティはさすがだと思います。

  •  老若男女さまざまな10人の物語。全ての背景にあるのは日本のいたるところで起こる「小口テロ」である。小口テロの犯人たちは「レジスタント」と称し、指導者の存在も確認できなければそれぞれの間に繋がりもない。貧困層に分類される彼らは、社会を変えようという思いを抱えて身を賭す。

     この小説はタイトルが秀逸だと思う。様々な立場に置かれる人々の話を読むと、自分の社会における立場を客観視でき、自分がどの人に似ているかー共感するかを否応なしに考えさせられる。

    ①社会貢献度が高い仕事につきながらも、人間性が欠如した人物のほうが高いステータスを得る社会を憎む者。
    ②貧困層に属することを受け入れ、人並みに生きることを諦める者。
    ③苦しんでいる人を傍観し、他人の痛みに無関心である人々に憤りを覚える者。
    ④ワーキングプアの人々を「自己責任」だと切り捨て、自分が恵まれた立場にいることが何よりも大切な者。
    ⑤社会に馴染めない娘を思う気持ちと、公安刑事としてテロの犯人を追う職責の間で揺れる者。
    ⑥自分は恵まれた立場にいながら小口テロを煽り、自身は何も行動しない口だけの者。
    ⑦正義感の強い夫が《トベ》ではと疑う者。
    ⑧小口テロとは違う手段(犠牲者が出ないように無人の公共施設を破壊する)で社会を変えようと試みる者。
    ⑨転落人生を歩み違法ハウスに行き着き、《トベ》に唆されて死んだ息子の復讐のため人を殺める者。

     こうして列挙してみると、⑥⑧あたりの自分は恵まれた立場にいながら安全なところから「社会を変えよう」なんて正義感を振りかざす人が一番腹立つ。もちろんテロに走る人にも共感なんてできないけど、彼らには彼らなりの理屈があることは理解できる。
     ③の彼女に一番近い気持ちを抱いていたけど、ミスリードが隠されていたなんて!読み物としてもなかなか面白かった。

  • 社会の底辺で暮らす事を余儀なくされた人々の横顔の断面とその反対側にいる人々の傲慢さと底辺への憐憫と社会への憤懣が交錯した物語。
    何か共感するところがあるかといえば、今回は特になく、ただ現状に満足できるのもできないのもしんどいことよなと感じた。チャレンジが善で諦めが悪とも言い切れない。その逆もある。人間は一括りにできない複雑な生き物だ。

  • ノンフィクションかと思うようなリアリティー!社会に疎外された人々をネットで煽り、小口テロを教唆する"トベ"とは誰なのか。最後に明かされる犯人と動機に、張り巡らされた伏線が収斂する。読み終えた後、ある章を読み返したくなる。

全130件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1968年、東京都生まれ。早稲田大学商学部卒。93年、第4回鮎川哲也賞の最終候補となった『慟哭』でデビュー。2010年『乱反射』で第63回日本推理作家協会賞受賞、『後悔と真実の色』で第23回山本周五郎賞受賞。「症候群」シリーズ、『プリズム』『愚行録』『微笑む人』『宿命と真実の炎』『罪と祈り』『悪の芽』『邯鄲の島遥かなり(上)(中)(下)』『紙の梟 ハーシュソサエティ』『追憶のかけら 現代語版』など多数の著書がある。

「2022年 『罪と祈り』 で使われていた紹介文から引用しています。」

貫井徳郎の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×