ことり屋おけい探鳥双紙

著者 :
  • 朝日新聞出版
3.52
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感想 : 39
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022511812

作品紹介・あらすじ

【文学/日本文学小説】幻の青いサギを追って行方知れずになった夫を待ちながら、小鳥を商う店「ことり屋」を切り盛りする女主人おけい。店に持ち込まれる奇妙な事件の数々と、江戸の四季の移ろい、人間模様を丁寧に描きだす。新進気鋭の女流作家による、最新連作時代小説。

感想・レビュー・書評

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  • 青く光る鷺を探しに出たまま音信不通になった夫を待ちながら、飼鳥屋を営むおけい。
    夫の声色を真似る九官鳥・月丸とともに「ことり屋」を守り続けて三年になる。
    鳥にまつわる不思議な出来事をおけいさんが解きほどく連作短編集。
    自殺か他殺かなんていう事件も出てくるので、日常系とはいえないのかもしれないけど、おけいさんの人柄や周りの人たちの優しさでほっこりしたトーンになっている。

    江戸時代に、鳥専門のペットショップのような飼鳥屋というお店や、鳥カフェといった趣の花鳥茶屋などがあったことに驚いた。飼鳥屋には白バタンと呼ばれる大型のオウムなどの洋鳥を扱うお店もあったり、茶屋の方は真鶴や孔雀までいたらしい。
    曲亭馬琴が鳥好きで、おけいさんのお店の常連客という役どころで出てくるのもおもしろかった。
    いつもむっとした顔をしている頑固爺なのに、実は一人になったおけいさんを気遣ってお店を覗きに来てくれるなんだか可愛らしい先生。
    そしてもう一人、おけいさんを気にして店を訪れるのが、北町奉行所の定町廻り同心の永瀬。

    おけいさんは強い女性という描かれ方ではなく、淋しさ弱さ、女一人の心細さを持ちながら必死に店を守る姿で描かれている。
    夫への熱い恋情を思い出したり、永瀬の穏やかさに安らぎを覚えたり、揺れる心模様にこちらもゆらゆら。

    六羽(六話)で、夫・羽吉の身に起こったことが判明し、同時に新たな謎が浮上。
    最終話の七羽へと続く。
    おけいさんの切なすぎる決断に「強えな、おめえは。」と応えるひと。
    淋しさ弱さを押し込めてきたおけいさんがどんな気持ちでその言葉を聞いたかを思い、胸が締め付けられる。
    九官鳥の月丸の「イマカエッタヨ」
    おけいさんが一番聞きたかった言葉。だけど聞けなかった言葉。
    その声色は……というところで切なさMAX。泣きました。
    「イマカエッタヨ」に込められた3年間の思いは、羽吉にもきっと届いたはず。
    新しい一歩を踏み出そうとしているおけいさんが幸せになりますように。

  • Yo! 幻の鳥を探しに、
    戻ってこない夫を待ち、
    小鳥屋切り盛りするおかみ、
    おけい、Yeah、鳥にまつわる事件に巻き込まれがち、
    愛鳥家の曲亭馬琴が友だち、Yeah!

    あらすじを書いていたら韻が踏めたのでラップにまとめました。

    さて、江戸時代は和鳥を中心に小鳥の飼育ブームがあったそうです。また、多くの飼育解説書も出版されました。一般大衆のペットブームという意味では犬や猫より早く訪れていたそう。
    https://www.inko-friends.com/incolumn-2/#google_vignette

    鳥の「ウソ」の鳴き真似をすることから口笛を「うそぶく」という、など鳥Tipsが楽しい本でした。ストーリーは若干ありきたりみですが、ラストの夫・羽吉が新しい妻と帰ってきたところは切なくてほろりとしてしまいました。

  • 素晴らしい!
    優しい文章だけど、芯が通った文章。
    1話目のパンチがいいね、ペットに対しても同じ事が言える。
    自由を奪った以上、責任を持たないといけない。
    いい言葉だ。
    羽吉の件はなー、双方悪くないけど時間が経ち過ぎてたていうのがね。
    後味悪いけど仕方がないんじゃないかね。

  • 朝顔、薬草と植物が続いたので、今度の作品が「鳥」がメインとはやられた。

    九官鳥の月丸、なにげにいい味だしているね。
    あと、途中ででてきたダルマインコの太助が、女の子の名前をいいだしたせいで、とんでもない事件に発展して、飼い主が太助に別の言葉を必死で教えているという、話には思わず笑ってしまった。

    最後の永瀬さんとおけいさんの恋模様と、羽吉の行方が
    あかされるあたり、なんかせつない。

  • 失踪した夫を待ちながら飼鳥屋を守るおけいの元に持ち込まれる「謎」
    九官鳥の月丸が◎

  • 飼鳥屋を営みながら行方知れずの夫の帰りを待つ女性が主人公の7編の連作短編集。鳥を巡る大小様々な出来事の謎を解き明かしていく。
    全編通して、寂しさと優しさが溢れている。切なく胸が締め付けられても、ふわり優しく包まれる感じがする。
    主人公おけいを気遣う馬琴や同心など脇を固める人たちが固い。
    おけいが幸せになりますように。

  • しっかり者のおけいのところにちょっとした事件がもちこまれる、短編集。行方知れずの夫とのことは切ないけれど、実生活でカナリアの繁殖をしていたといわれる馬琴や、同心が力を貸して、物語を盛り上げています。
    江戸時代、飼い鳥を商う商売があることは知っていたけれど、こういうふうなのかと思いながら読みました。

  • 切ない終わり方だった。

  • ( ´ ;ω; )追憶の羽吉の言動を思い出すだに、おけいさんが哀しくて哀しくて。同巻収容の卵詰まりの話を思い出した。詰は、つまるとも、なじるとも。ひなの世話する話も、長野から出稼ぎ椋鳥の一人息子の話も、かなしいかなしい。

  • 小鳥屋のおけいさん
    小鳥屋さんを営みつつ、行方不明の旦那さんを待つ。
    愛情深く小鳥の世話をする誠実な人柄もいい。
    記憶喪失になった旦那さんは、介抱してくれた娘さんと夫婦になっていて、もうすぐ子供も産まれると。 記憶を取り戻した旦那さんと話すが、身を引くおけいさん。切ない結末。
    続編があるかもしれないと。

    滝沢馬琴
    重畳

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著者プロフィール

東京生まれ。フリーランスライターの傍ら小説執筆を開始、2005年「い草の花」で九州さが大衆文学賞を受賞。08年には『一朝の夢』で松本清張賞を受賞し、単行本デビューする。以後、時代小説の旗手として多くの読者の支持を得る。15年刊行の『ヨイ豊』で直木賞候補となり注目を集める。近著に『葵の月』『五弁の秋花』『北斎まんだら』など。

「2023年 『三年長屋』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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