「いじめ」をめぐる物語

  • 朝日新聞出版
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感想 : 38
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  • Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022513052

作品紹介・あらすじ

【文学/日本文学小説】「いじめ」をテーマにした短編を収めた競作アンソロジー。辻村深月『早穂とゆかり』、荻原浩『サークルゲーム』、越谷オサム『20センチ先には』、中島さなえ『メントール』、小田雅久仁『明滅』。すべて各著者の短篇集にも入っていない本書オリジナル作品です。

感想・レビュー・書評

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  • 「いじめ」をテーマにした5名の作家が書いた短編を収めたアンソロジー

    ●荻原浩………「サークルゲーム」
     中学二年生を担任する矢村琥代。
     彼女のクラスではいじめが起きているようなのだがー。
    ●辻村深月……「早穂とゆかり」
     早穂は、地方誌のライターをしている。
     塾経営者として成功した小学校の同級生だったゆかりを取材することになりー。
    ●小田雅久仁…「明滅」
    ●越谷オサム…「20センチ先には」
    ●中島さなえ……「メントール」


    学校で、職場でネット空間で、いじめを解決しようとする先生の立場だったり、
    少年時代いじめられてた親友を救えなかった男性だったり、過去の事だったり、
    書き手が違っているから、当たり前だけど全く視点もイメージも違う、
    この世の中に蔓延する空気を切り取った5つの短編。

    やっぱり、辻村さんの「早穂とゆかり」が一番良かった。
    いじめた側の早穂といじめられた側のゆかり。
    早穂の傲慢なまでの思い出の変換なのか…?
    いじめていたのに、無自覚だったのか…?
    ゆかりが、とっても冷静に冷酷に相手を叩き潰していた…。
    いじめる側は、それ程深刻に思っていない様な事でも、
    いじめられる側にとっては、どれ程苦しくて辛いものかということが、
    これでもかって、伝わって来た。

    テーマが「いじめ」なので、内容が重く、
    様々な場面や立場から考える機会を与えてくれた作品でした。
    アンソロジーを初めて読みましたが、それぞれの作品に
    それぞれの個性があり、読み応えがありました。

    いじめって決して子供の世界だけの話じゃない!
    大人の世界にもしっかりある。
    誰かが嫌がってるであろう事をしていませんか?
    それは、いじめです。

  • ずしんと重くのしかかる。
    いくつになってもいじめと言われるものは繰り返される。受け取り方に差があるのがリアルで苦しい。

  • 「サークルゲーム・荻原 浩」「明滅・小田 雅久仁」「20センチ先には・越谷 オサム」
    「早穂とゆかり・辻村 深月」「メントール・中島 さなえ」
    5話収録の短編集。

    終始、気持ちがざわざわする。

    荻原さんの「サークルゲーム」は保育園と中学校を舞台にした作品。
    Twitterを駆使した嫌がらせは、現代のSNS時代に実際に行われているからタチが悪い。
    そんな事へ使う知恵と労力を、別の有意義な事へ使うべきと思う。

    辻村さんの「早穂とゆかり」は既読だったが再読してもやはり悚然とする。
    毒と辛辣さが立ち込める二人のやり取りに震えた。

  • 荻原浩「サークルゲーム」―中学二年生を担任する矢村琥代。
    彼女のクラスではいじめが起きているようなのだが…。
    小田雅久仁「明滅」―祖父の死をきつかけに地元に帰った私は、同級生と蛍を見に行ったあの日を思い出す。
    越谷オサム「20センチ先には」―クラスメイトからいじめられている僕の前に、現れた「悪魔」が見せる光景とは。
    辻村深月「早穂とゆかり」―小学校の同級生だった二人。
    早穂は、塾経営者として成功したゆかりを取材することになり…。
    中島さなえ「メントール」―由美子と志乃は歌劇団のトップ女優を目指す親友同士だったのだが、やがて…。
    学校で、職場で、ネット空間で…いじめと関わったことがない人、いますか?
    (アマゾンより引用)

    越谷オサムさんと辻村深雪さんのお話がおもしろかった。

  • いじめをテーマにした短編を
    荻原浩 小田雅久仁 越谷オサム 辻村深月 中島さなえ の5人の作家が書いている。
    個人的には越谷オサムの「20センチ先には」が一番興味深く読めた。

  • いじめっ子といじめられっ子で最後は握手をして仲直り……などという夢物語のような理想は、ここには存在しない。解決らしい解決はなく、どれほど時がたっても心の底にたまった澱が消えることもない。ページをめくるごとに押し寄せてくる負の感情はただただしんどいけれど、いじめられっ子が死んでも加害者は改心しないことは確かなんだろうなと思う。

    <収録>
    『サークルゲーム』荻原浩、『明滅』小田雅久仁、『20センチ先には』越谷オサム、『早穂とゆかり』辻村深月、『メントール』中島さなえ

  •  ほぼ期待通りおもしろかった。いじめの場面では、あまりのことに読むのが辛かったが。なぜ言うなりになってしまうのか。なぜ助けを求められないのか。なぜわかっていても助けられないのか。なぜ加害者だけが平然と生き続けるのか。なぜお互いの意識の差、感じ方の違いが出てしまうのか。
     いろいろ考えさせられた。

  • *学校で、職場で、ネット空間で…いじめと関わったことがない人、いますか?いま、この世の中に蔓延する空気を切り取った5つの短編小説*

    題名が題名だけに躊躇しましたが、イオクサツキ氏のシニカルでお洒落な表紙のイラストと、そうそうたる書き手陣の名に釣られて読むことに。やはりと言うか、想像以上にザ・いじめ物語。なのですが、これがなかなか新鮮で。解決も救いも希望もなし、まさに等身大の、大人が真正面から見たいじめの姿。いじめだもの、こんなもんでしょ?ってな感じがむしろ清々しい。

  • 5人の作者の短編。いじめる側、いじめられる側、いじめを周りて見ている側と視点は様々。誰もがどれかの視点に共感するものがあるかもしれない。

  • 荻原浩、小田雅久仁、越谷オサム、辻村深月、中島さなえ、5人による「いじめ」をテーマとした短編小説集です。
    よくあるような、「「いじめられっ子」と「いじめっ子」が最終的に分かり合う」というストーリーのものはなく、現実の世界のように、やるせない結末となる話です。
    実体験として、いじめたことがある人、いじめられたことがある人、いじめを見ていた人、いじめを止めようとした人……何らかのかかわりがある人は多いのではないでしょうか。
    小説の世界では、現実にはなかなか起こりえないような相互理解がなされたり、人間関係の変化が起こったりしますが、そういった「救い」が全くない物語です。
    特に、小学生のころの経験が40歳になっても尾を引く様子を描いた辻村深月の「早穂とゆかり」には恐ろしさを感じました。

    「いじめ」について考えるきっかけにはなりますが、実際に「今」いじめに(それぞれの立場から、ではあっても)悩んでいたり関わっていたりする人には刺激が強いかもしれません。

    世の中の不条理さをひしひしと感じさせる作品でした。

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著者プロフィール

1956年、埼玉県生まれ。成城大学経済学部卒業後、広告制作会社勤務を経て、フリーのコピーライターに。97年『オロロ畑でつかまえて』で小説すばる新人賞を受賞しデビュー。2005年『明日の記憶』で山本周五郎賞。14年『二千七百の夏と冬』で山田風太郎賞。16年『海の見える理髪店』で直木賞。著作は多数。近著に『楽園の真下』『それでも空は青い』『海馬の尻尾』『ストロベリーライフ』『ギブ・ミー・ア・チャンス』『金魚姫』など。18年『人生がそんなにも美しいのなら』で漫画家デビュー。

「2022年 『ワンダーランド急行』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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