池上彰が聞いてわかった生命のしくみ 東工大で生命科学を学ぶ

  • 朝日新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022514059

感想・レビュー・書評

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  • 『WHAT IS LIFE?』で生命科学に興味を持ったので、図書館で借りてみた。
    本当は『動的平衡』が読みたかったけど、なかった。

    細胞の定義が「境界」「自己増殖」「代謝」とシンプルに書かれていたのが良かった。
    セントラルドグマは初めて聞いた。DNAとRNAって何が違うのかと思っていたけど、なんとなくわかった。
    コラーゲンのくだりは面白かった。でも、実際にコラーゲン摂取している奥様方には言わないようにしておこう。そこは理屈じゃないだろうから。

    生命の維持は動的にしか維持できない。でも動いた先に何があるか、わかっていない。
    今まで、たくさん進化をしてきたけれど、それは「たまたま生き残った」やつら。結果オーライ。

    同じところから始まって、いろいろなものの一つとして生きている「自分」は、何者で、これからどうしていくのか。
    「つながっている」なんて考え、前の自分にはなかったなぁ。

  • なるほど。そういうことだったのか、オートファジー。

  • 2017.3.1(まゆ美) 3/6読了 3/7返却

  • 「この世界は、セントラルドグマという統一原理から始まる多様性に溢れた世界である」。
    一般人も興味をそそられるような身近なトピックを織り交ぜながら、生命とは何か、という問いに対し、一つ一つ順を追って、池上彰とその道の第一人者との対談形式でわかりやすく説明されていく。
    項目の順番が絶妙で、一つの説明を聞いて疑問に思ったことが、ぴったり次の章で説明されていき、すらすらと読める。文系読者にもとっつきやすいよう、概念的な理解に焦点をあてられている点もありがたい。
    「ヒトのDNAの95%は無駄な部分だが、その無駄が多様性を生んできた」といった生命のあり方は、現代の企業などの組織論にも使えるという池上彰の考え方には強く同感する。
    何十億年という長い時間をかけて構築されてきたこの自然のシステムに、私たちはもっと多くを学ぶべきである。進化や分子生物学の本を読むごとに、現代社会で生きる私たちにこそ、これら生物学の知識は必要であると思う。

  • 「生きているとはどういうことか」、「死ぬってどういうことか」と言った興味深いテーマがあり、東工大の教授が最先端の知識を交えて生物学のイロハを解説するという内容に惹かれて購入した。

    昔の生物学は博物学のような授業が行われており、暗記科目とされていたが、現代では生物とは何かという根本原理を扱った生命科学が新しく加わっているとのことだ。

    「自分とは何であるか」という問いは、昔から哲学の観点から考えられてきたが、ここ数十年で生物学の観点から考えられるようになってきた。

    細胞レベルで考えた時、
    「生きているとは」
    細胞ひいては生命の共通するである特徴境界・代謝・自己増殖が維持されているとき

    「死ぬとは」
    細胞の代謝ができなくなったとき、境界がなくなったときが細胞の死である。

    しかし、これらは細胞をどう定義するかによって答えが変わってくるので、絶対的な解ではないことには注意が必要だ。

    本書では、遺伝子、DNA、ゲノム、万能細胞、ES細胞といった最近話題の事柄についても、素人に分かりやすく説明されており、勉強になることがたくさんあった。

    それにまつわる倫理的な問題も懸念されている今日では、生物学は社会人として知っておくべき教養だと感じた。

  • 一般ピープルが日ごろ聞けない(気にも留めない)純粋な疑問を、池上さんが素人目線で疑問に思ったことをなんでも聞いてくれるので、分かりやすく科学導入の勉強になる。

  • 生物学をほとんど学んでこなかった学生に向けて生命科学を分かりやすく教えたいという想いから書かれた本。池上さんが聞き手となった対談形式になっており、初学者でも用語などに引っ掛かることなく読み進めることができた。タンパク質のリサイクルのところでは2016年にノーベル生理学・医学賞を受賞した大隅良典さんがオートファジーについて解説している。

    第一章「生きているって、どういうことですか」
    第二章「細胞の中では何が起きているのですか」
    第三章「死ぬって、どういうことですか」
    第四章「地球が多様な生命であふれているのはなぜですか」
    特別対談「どうして今、生命科学を学ぶのですか」

  • 進化には多様性が重要。多様性は余裕から生まれる。余裕は無駄が存在する。無駄に見えるものが実は重要な役割をしていること、多々あるのかもしれません。

    タンパク質が細胞を作る
    消化酵素もDNAも。アミノ酸やビタミンは補酵素にすぎない。結局はバランス。バランスの良い食事。

    がん細胞をとっても、DNAのエラーは消えない。神経細胞だけは生まれ変わらない。
    遺伝子組み換え食品が危惧されるのは、それが遺伝子にどんな影響を与えるか不明確だから。


  • 東工大で現代史を教えている池上彰さんが、教授の岩崎博史さん田口英樹さん
    そして栄誉教授の大隅良典さんと、対談形式で生命科学を語るもの。

    すごく難しく思われそうですが、実は面白くてとてもよくわかる内容になっています。
    私は理科が超苦手で、小学生向けや漫画にしたもので学ぼうとしても挫折した人です。
    ところが池上さんの『はじめてのサイエンス』が奇跡的に面白く理解できたので
    この本も読んでみました。

    「なんでよくわかるのかなぁ?」と考えてみたら、
    池上さんは「わかりやすい例え」をだしてくれるんですね。
    いくつか例を書いておきます。

    ●「オスとメスがいるのはなぜですか」
    オスとメスに分かれて多様性を増やしていくという戦略は、
    生命全体の生存には有効である一方で、
    私たち人間は一人ひとり恋愛などで悩み、
    人生が複雑になってしまうわけですね。(池上)

    ●「細胞膜にはどんな特徴があるのですか」
    普通の物質は通さないけれども、
    ブドウ糖だけは中に入れるような穴があります(田口)
    たとえば、人間が密室の中で過ごそうとしているけれども、
    完全な密室では酸素が入ってこないから通気口を作る。
    でも、有害な微粒子が入ってくるのは避けたい。
    新鮮な空気だけを取り組むための特殊な通気口、いわばフィルターのようなものを作った、というところですか(池上)

    ●「DNA、遺伝子、ゲノム、染色体はそれぞれどう違うのですか」
    遺伝子やゲノムは生命の中の情報であり、
    DNAと染色体は物質である、
    さらに、遺伝子をまとめたものがゲノム、DNAの集まったものが染色体ということですね(池上)

    ●「生命がDNAを使うメリットは何ですか」
    まさに情報を運ぶメディアだったということですか(池上)

    ●「DNA鑑定のときにミトコンドリアを調べるのはなぜですか」
    ミトコンドリアも小部屋の一つであり、
    独自のDNAが小部屋の中にあるのですね(池上)

    ●「タンパク質は何種類あるのですか」
    人間のタンパク質2万5000種類がいつも同じ場所ではたらいているのではなく、
    必要なときに必要な場所で、必要な分だけ作られています(田口)
    人間の体をひとつの会社とすると、
    タンパク質はその社員みたいなものですね。
    適材適所に配置されているかのようです(池上)

    ●「タンパク質はレゴブロックが集まったナノマシン?」
    アミノ酸はタンパク質のパーツであり、それを細胞内で都合よく組み合わせていると。
    まるでレゴブロックのようですね。(池上)

    ●「コラーゲンを食べるとお肌がぷるぷるになるのは本当ですか」
    コラーゲンを食べても、レゴブロック一個一個にまで分解されて、
    そのままコラーゲンに再構築されるわけではないのですね。
    お肌のためにコラーゲンを食べよう、と言ってきた女性たちは、
    がっかりするかもしれませんね(池上)

    ●「タンパク質はどのようにして作られているのですか」
    大腸菌も植物も昆虫も人間も、同じ4種類の記号、同じ暗号表を使っていて
    共通の20種類のレゴブロックで体を動かしているということですか。
    よく考えると衝撃的ですね(池上)

    ●「タンパク質はどのようにして紐から立体になるのですか」
    紐が立体的に折りたたまれることで、初めてタンパク質として機能するようになるのです
    紐同士が絡み合う前に正しい形に折りたたまれる必要があります。
    その作業をサポートするのが「シャペロン」というタンパク質です。
    シャペロンというのは、もともとはヨーロッパで、
    社交界にデビューするレディが一人前になるのを助ける年上の貴婦人のことをそう呼んでいました。(田口)
    深窓の令嬢ですね。大事に育ててから社会デビューさせるわけですね(池上)

    ●「リサイクルシステムはどう使い分けされているのですか」
    細胞を一つの会社とするなら、ユビキチン・プロテアソーム系は人員の配置替えを丁寧にやっているのに対して、オートファジーは部署ごと取り壊すようなものですね。会社がつぶれそうなときに、一人ひとりどうしようか考えている暇なんてないだろう、という状況に近いと言えそうです。(池上)

    ●「細胞がいつもリニューアルしているって本当ですか」
    知り合いに10年ぶりで会ったとき、見た目に10年前の面影があっても、
    細胞は完全に生まれ変わっているわけですね。(池上)
    10年どころか、数か月でほぼ一新されるといわれています(田口)

    ●「生命には無駄や多様性が必要ですか」
    ゲノムの無駄なところが、実は多様性を作るのに重要であったわけですね。
    人間の会社の中でも、会社が危機になると、普段は何もしていない人が活躍するということもありますからね(池上)

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著者プロフィール

池上彰(いけがみ・あきら):1950年長野県生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業後、73年にNHK入局。記者やキャスターを歴任する。2005年にNHKを退職して以降、フリージャーナリストとしてテレビ、新聞、雑誌、書籍、YouTubeなど幅広いメディアで活躍中。名城大学教授、東京工業大学特命教授を務め、現在9つの大学で教鞭を執る。著書に『池上彰の憲法入門』『「見えざる手」が経済を動かす』『お金で世界が見えてくる』『池上彰と現代の名著を読む』(以上、筑摩書房)、『世界を変えた10冊の本』『池上彰の「世界そこからですか!?」』(以上、文藝春秋)ほか、多数。

「2023年 『世界を動かした名演説』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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