魂の秘境から

著者 :
  • 朝日新聞出版
4.20
  • (7)
  • (4)
  • (4)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 56
感想 : 9
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022515506

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  •  亡くなって、2年がたってしまいました。2018年2月に亡くなったわけですが、前の月まで、朝日新聞に連載されていたエッセイをまとめた本です。
     「思い出」と、毎日の「夢」が織りなす石牟礼ワールドが拡がっています。白黒の写真が、妙に印象的な本でもあります。ブログの、少し詳しく書きました。こちらからどうぞ。
     https://plaza.rakuten.co.jp/simakumakun/diary/202003130000/

  • 石牟礼さんの本を読むのはこれが初めて、そして本作が遺作。幼い頃のこと、見た夢のことなどをこんなに鮮明に、いきいきと覚えていて、書き綴ることができるなんてすごい。
    人間を含む生きものすべてがゆるゆるつながっているというか、石牟礼さんがふわっと抱きかかえているというか、独特の雰囲気が感じられる。

  • 今年の自分の誕生日にお亡くなりになられた著者の
    3年間くらいのエッセー集。
    昔の水俣あたりの風景や風土がよくわかるというか
    懐かしい感じがする内容です。自分の昔いた田舎と
    やっぱりかさなってしまいます。水俣ではないですし
    九州でもなく、海沿いでもないのですが。
    水俣病に対しての思いや怒りはあまりでてきませんが
    それ以前の風景や幻視によって、かえってその近代に
    対しての怒りが見えてくるような内容のような気がします。

  •  石牟礼道子さん、1927.3.11~2018.2.10、享年90。「魂の秘境から」、2018.4発行。2015.1から2018.1の間、朝日新聞に掲載されたもの。チッソ工場が廃棄物を水俣川河口に。有機水銀に汚染された不知火海。当初「奇病」と呼ばれた患者が運ばれたのが避病院。医者がいるわけではない。あばら屋の板敷きの上に、病者たちが寝かされていた。海辺の猫たちは、鼻で逆立ちしてきりきり回り、最後は海に飛び込んで狂い死にしたと。死期を悟った猫は人に知られず姿を消す。そんな恥じらいを知る猫にとって「狂い死に」とは、あまりにむごい最期。

  • 石牟礼道子さんをはじめて手にした
    柔らかく豊かな文章にハッとさせられる現実が込められている
    故郷の飾らない言葉が心地いい
    セイショコさん
    海が汚染されるということはご先祖様の魂のよりどころが破壊されるということ

  • 1927年生まれだそうですが、彼女が育ったころはまだ現実界と異界の差があいまいだったのか、彼女の感受性が鋭いのかわかりませんが、まるでファンタジーを読んでいるような気分になるエッセイでした

  • こう言うと語弊があるかもしれないのですが、近所のおばあちゃんの昔語りを聞いているようで、とても読みやすいと思いました。なじみの土地への親しみ、懐かしく思う気持ち、それは本来多くの人が共感できるはずのことで、決して大仰なことではないはず。
    弱者の声など堰き止めてしまう不条理な壁のようなものも、水俣の人々が過ごした悲しみの時間も越えて、いまの私たちの心に直接響いてくる語りかけ。魂の震えを感じられる上質なエッセイです。

  • 順番逆ですが、苦海浄土を次に読みたいと思いました。

全9件中 1 - 9件を表示

著者プロフィール

1927年、熊本県天草郡(現天草市)生まれ。
1969年、『苦海浄土―わが水俣病』(講談社)の刊行により注目される。
1973年、季刊誌「暗河」を渡辺京二、松浦豊敏らと創刊。マグサイサイ賞受賞。
1993年、『十六夜橋』(径書房)で紫式部賞受賞。
1996年、第一回水俣・東京展で、緒方正人が回航した打瀬船日月丸を舞台とした「出魂儀」が感動を呼んだ。
2001年、朝日賞受賞。2003年、『はにかみの国 石牟礼道子全詩集』(石風社)で芸術選奨文部科学大臣賞受賞。2014年、『石牟礼道子全集』全十七巻・別巻一(藤原書店)が完結。2018年二月、死去。

「2023年 『新装版 ヤポネシアの海辺から』 で使われていた紹介文から引用しています。」

石牟礼道子の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×