母を捨てるということ

  • 朝日新聞出版
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感想 : 23
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022517159

作品紹介・あらすじ

異常なほど娘に執着した母親。やがて彼女は薬物依存症に陥った。「いっそ死んでくれ」と願う娘と「産むんじゃなかった」と悔やむ母。母に隠されたコンプレックス、そして依存症家族の未来とは。医師として活躍する著者の知られざる告白。

感想・レビュー・書評

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  • 毒親の本は結構読んできたので
    「ユーモアのある美人女医のおおたわ史絵さんもだったのか」
    と思い読んでみたのですが、これが凄い。

    〈わたしの当時の話をすると、
    「それって虐待なんじゃない?」
    というひともいる。たしかに平手で顔を叩かれたり布団叩きで腰を打たれたり、投げつけられた大きな石の灰皿で額から血を流していたのだから、そう思われても不思議はない。
    でも、わたし自身はそれらを虐待と思ったことはただの一度もない。
    なぜならわたしはほかのお母さんを知らない〉

    でも、おおたわ史絵さんはお医者さんになったのですよね?

    〈国家試験を目前に勉強に逃げ込むことで、幸い現実を見ないで済んだ。
    試験前の三カ月間くらいは朝起きてから寝るまでの間、食事と入浴とトイレ以外の時間はほぼ自室の机に向かっていた。なるべく母と顔を合わせないようにして、心を乱されるのを防いでいた。(中略)
    「お医者さんの試験に一発でパスするなんて、すごいわねえ。さぞやお勉強は大変だったでしょう?」
    そんなふうに言ってくださるかたもいるけれど、いやいやなんてことはない。勉強の大変さなんて、家庭内の苦痛に比べたら取るに足らないレベルのものだった〉

    そしてこの本では単なる「毒親」ではない
    「母の依存症」が問題なのだと私たちは知ります。
    おおたわさんの尊敬し愛する父も立派な医者です。
    しかし20年以上前は、いまのようにインターネットでたくさんの情報がはいってくるわけでなく、依存症についてもあまり知られていなかったそうです。
    だから簡単に薬のはいる医者である父の愛情によって、母の薬物依存がどんどん悪化してしまのです。

    その後いろいろな情報を得て、母亡き今、
    後悔をするおおたわさん。
    鋭い分析と説明は、さすがにお医者さんです。
    中野信子さん推薦。

  • 医師おおたわ史絵が、母との関係をつづった壮絶なエッセイ『母を捨てるということ』刊行!本人からのコメントも|株式会社朝日新聞出版のプレスリリース
    https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001046.000004702.html

    「親と絡み合った人生の外に出て」 『母を捨てるということ』著者が語る新しい自分の人生の始め方 〈AERA〉|AERA dot. (アエラドット)
    https://dot.asahi.com/aera/2020101500018.html

    「毒親というより依存症の人」 おおたわ史絵が捨てた母親とは 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)
    https://dot.asahi.com/wa/2020091600019.html

    おおたわ史絵のブログ 『ただいまネイチャー中』 @woman Powered by Ameba
    https://ameblo.jp/fumie-otawa/

    朝日新聞出版 最新刊行物:書籍:母を捨てるということ
    https://publications.asahi.com/ecs/detail/?item_id=22192

  • 表題『母を捨てるということ』の一言に彼女の想いのすべてが凝縮している。

    母親を捨てざるを得ないほど、娘として苦難に満ちた時を重ねていた事実。
    一方で、「捨てる」という言葉が持つ否定的な意味合い。「離れる」でも「縁遠くなる」でもなく、母の存在が自分にとって不要であり放置するという道徳的背信を自ら引き受ける自責の念。

    同世代の内科医おおたわさんの長年に渡る、切なくて複雑な心のうちが正直な言葉で吐露されている1冊だと思う。

    お母さんが亡くなり時間が経過しても、複雑な生い立ちやお母さんの依存症や人格障害の疑いなど、包み隠さず、言葉にすることはとても勇気のいる作業だったに違いない。

    辛くて寂しくて哀しかった過去に向き合い、自分の心に潜む嫌な自分自身を剥き出しにし、あれこれ言われる世間の評価をも受け止める覚悟は不可欠だ。

    私も長年、実家の複数の身内が似たような問題を抱えているので、30~40年前精神医療の分野が今に比べて未開拓だった頃を同世代のおおたわさん同様に経験している。

    「親のことをそんなに悪くいうものではない。」という周囲から言葉。
    「死んでやる」「殺してやる」という生死を武器にした当事者からの度重なる呪い。

    多分経験した者でなければ理解できないよなあ。
    奇行、暴力暴言に長年晒される家族の苦しみは深い。

    医療者である実のお父様と内科医のおおたわさんであっても困難を極めた問題。正解はない。

    おおたわさんの細やかな過去の出来事やお母さんの言動を読みながら、私も類似の感覚や記憶が蘇ってしまう。
    やっぱり辛かったよなあ。まだ私は終わっていない。

  • ワイドショーのコメンテーターなどでも知られている医師、おおたわ史絵さんの著書です。


    私はこの世代で医師をしている女性はみな、恵まれた家庭で育ったと勝手に思っていました。(父親は開業医なので、経済的には恵まれているとは思います。)

    ブログにて詳しいレビューしています*
    https://happybooks.fun/entry/2021/10/30/173000

  • おおたわ先生がTVで紹介されていてその場でポチった本。薬物依存以外にも、精神的依存を求める人を家族に持つ人にも読む価値があると思えた一冊。
    午前中に届き、その日中に一気に読み終えました。

  • 『毒親』(中野信子 著)より先に読み終わっていたが、レビューを書けずにいた。
    『母を捨てるということ』自体、とても気になるタイトルだったけれど、なんとなく敬遠していた。

    レビューは、本当はとんでもなく長文になってしまったが、これでも3分の1くらいにまとめたのでご容赦願いたい。そして、少しでも毒親育ちの生きにくさに興味を持った方には、ぜひこの本を読んでいただきたい。
    ..............

    おおたわさんが育った家庭は、典型的な機能不全家族だった。両親がきちんと結婚したのは、彼女が物心ついてからのこと。看護師(母)が、当時妻帯者の男性医師(父)を妻から奪うというかたちで、おおたわさんを授かった。何不自由のない生活を手に入れたが、母は、母自身の生育環境や性質などもあり、重度の薬物依存症になってしまう。ありのままの自分を見つめ直したり、受け入れたりできない。自分に自信がない。素直に甘えることもできない。だから、薬に依存して現実逃避することを選んだのだろう。

    おおたわさんが小学生の頃、母親は、抜き打ちで子ども部屋を覗きに行く。おおたわさんが勉強していなかったことに腹を立て、タバコの火を押しつけようとする。とにかく必死に謝ったことで免れることができたが、なぜこんなに謝らなくてはならないのか、途中からわからなくなっていた、と、おおたわさん。

    小学校高学年の頃には、はやりの前髪にしてもらい、近所のおばさんに褒められたが、それを見た母は「おまえらしくない」と言って短くザクザク刈ってしまったそうだ。

    母親自身は何度も美容整形を受けるような人だったとのことだから、娘であるおおたわさんが、自分より美しくなることを望まなかったのだと思う。「競う母」は、この世の中には予想以上に多いものだ。
    「幸せになってもいい。でも自分より幸せになってはいけない。」毒親あるある・・・

    中学時代の夢としておおたわさんが友達に言ったのは「心から安心できる場所がひとつ欲しい」。

    頑張って医師になったのは(そもそもは)母親から医師になれと言われたから。その一択しかなかった。

    マスコミに出るようになったのは、承認欲求が大きいから、と書かれていた。

    おおたわさんは触れていなかったけれど、おそらく彼女はHSP(非常に感受性が強く敏感な気質もった人)だと思われる。とても知的で感受性の強い彼女が、実の母から心身ともに傷つけられ、医師という立派な肩書を持つようになってからも、それは続いていた。想像すると、胸が張り裂けるような思いになった。

    幼い子どもにとって、特に一人っ子にとっては、親こそが世界そのもの。気まぐれな神のご機嫌をうかがいながら、息をひそめて生きるのは本当につらい。気まぐれに楽しみを取り上げられ、喜ばせようと思ってしたことをくだらないと一蹴され、頑張ってもできて当たり前と言われ。外に救いを求めたくても許されないし、助けを求める方法もわからない・・・
    生きてるだけでもすごいと讃えたい。

    ...............

    結局彼女は、母の死に目にあうことはできなかったが、
    現在は、受刑者矯正施設の矯正医官に就任。
    母に対して「今の自分ならこんな風に手を差し伸べられた」という後悔を、受刑者たちの救済に注いでいるようだ。

    おおたわさんのことは、テレビ出演を拝見するたび、西川女史枠なのか、なぜ彼女がマスコミに呼ばれるのか不思議な方、という程度の認識だったのだが・・・
    この本を読んだことで、ぜひ幸せになって欲しい、と願う人のひとりとなった。

  •  医療関係者の合法薬物依存症については大分昔に聞いたことがあったが、メディアに出ている方の身内にそういった人がいたと知って驚いた。
     自身は元看護士で夫は開業医、娘も長じて医師になるという環境にありながら、嵌まってしまったまま抜け出すことのできない「依存症」というものに改めて恐怖を覚えた。
     筆者が己を責めすぎることの無いよう、切に願う。

  • 心が熱くなる本でした。小さい頃の母親との関係は、いい思い出ばかりじゃなかった。本を読みながら当時の辛かった記憶が引き出されたけど、私も母親になり理解できることもある。母親も精一杯生活する中で、そのような行動をとってしまったんだなと。今では笑って世間話をできるようになったけど、ふとした時に辛い思いでも湧き上がる。子どもたちには、私と同じ思いをさせたくない。

  • 依存症の家族に巻き込まれている状態から離れる。
    「依存症の子どもが社会性を持って成長すること自体奇跡に近い。」
    依存症に依存させるイネイブラー
    「ありがとう、良い娘を持って幸せでした。残されたママのことを頼む。」

  • 自伝というよりはお母さんとの関係。壮絶だったんだな。淡々とかけていてすごいと思うけど、それ以上でもないですね…書けて、おおたわさんも少しすっきりしているならいいなと思います。更生に携わっているとのことで、この経験を活かしてもらいたいな、と思ってます。

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