- Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
- / ISBN・EAN: 9784022518538
作品紹介・あらすじ
文藝賞受賞から10年、「その後の結婚小説」という新境地!結婚、離婚、非婚、事実婚を問いかける本格長編小説。多くの恋愛小説が書かないその先を見つめる‥‥離婚に踏み切れない作曲家の妻・梓の微妙な気持ちの揺れと、結婚のメリットを探しながら生活を淡々と営む専業主婦・百合子のたくましさが、絡み合いながらビビッドに描かれていく。ストーリー展開は静かながら、そのリアルさゆえに読み手を飽きさせない。誰がどこで「愛という名の切り札」を使うのか、果たして愛は切り札になるのか、がこの小説の読みどころの一つである。非婚を選ぶ娘・香奈と、事実婚で進む若い作曲家・理比人の生き方にも説得力があり、結婚の形がこの先どう変わっていくのか、余韻を残すエンディングも魅力。◯ 愛という名の切り札 目次1 おかあさんさあ、結婚してなにかいいことあった? 2 どうして結婚するとしあわせになれると信じていたのだろう、なんの根拠もなく 3 いちばんきれいだったとき、なにをしていましたか? 4 もう一度生き直したいんだ、と彼は言った 5 多く愛した方が負ける。それが結婚というゲームのルールです 6 一人で生きる。それもいい。二人で生きる。それもいい。その二つをかなえるのが新しい結婚になるはずだ
感想・レビュー・書評
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結婚とは何か?を問いかける。
それは、愛があってのものなのか…持続しないと成立しないものなのか。
作曲家と結婚したが、心変わりを理由に離婚を迫られる梓。
時代の波の中、それがあたりまえだと結婚して主婦になった百合子。
百合子の娘・香奈は、30歳だが彼氏はいるのに結婚はしないという。
百合子の姪である夏芽は、梓の夫・一輝と付き合っている。
ひたすら夫にしがみつき決して離婚はしない梓と惰性で結婚生活を続けてたぶんこれからもいっしょにいるのだろうと思っている百合子。
音を聴いて物語を作り、業界で梓のことをオカルトレビューと噂されているくらいに世界観を自ら生み出して愛というものを信じてやまない彼女の執念に凄みすら感じる。
百合子は、現実的であり多くいる女性だろうと思う。
どちらが幸せかを考えることもない、いろんなかたちがある。
幸せの度合いも人それぞれ。
目に見えずかたちもない。
自分がこれが良いと思える環境の中でいることが、ベストな選択だろう。
結婚は良いものであり、するべきだとは言いきれない。
それは自分で決めればいい。
人からとやかく言うものでも言われてするものでもない。
愛にしても答えはない。
だが永遠は、ないと思う…
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うわ〜〜...読後になんかすごく重たいものが心に残るな〜、ゆるやかで穏やかな昼ドラって感じだった
愛とか結婚とか、手元にない時は温かくて優しくて輝いていて素敵なものに見えるのに実際はそんなにきれいなだけじゃなくて、難しいね
あと梓の音楽を言葉にする才能と言葉にできる表現力がすごいなと思った -
離婚を切り出されてからの梓の一樹への想いは愛なのか執着なのか、それとも損得なのか。お金ではないといいながらブランドの服や銀のアクセサリを買えなくなることへの恐れもあり、なんだかくどくどと愛を語っているけど半分意地のような気もするし、あまり寄り添えなかったな〜。
結婚しないという香奈、それはそれでいいけど、いい歳なんだからまずは家を出ろと言いたい。いつまでも実家に住んで経済的にも生活的にも自立しないで楽ちんだからこのままでいいなんて、舐め腐ってる。親が娘を手放したくなくて甘やかすからいつまでも大人になれないんだと思う。
登場人物で唯一肯定的に読めたのは、理比人でした。
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結婚に対する考え方は人それぞれ。
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引き込まれて読んだ。
読んだけど、結局わからない、愛とは結婚とは。
いろんな形があるけれど
そこにしがみつくのはなぜなんだろう。
答えを見つけたいようで、見ないようにしているんだろうな。
永遠に変わらないものはないけど
変わらないでいて欲しいと願ってしまう。
ゲームは私の生きがいで、別にいっくんは生きがいじゃない。
大事なのはそれだ。 -
何かを得るというわけではないけど、共感する部分があった。
「それに音楽は体験だから、どういう心境でどういう状況でどういう場所で聴くかによって、受け取るものはちがってくるし、またそこが音楽のおもしろいところでもある。言葉で説明するわけじゃないから、受け取る側の自由度が大きいんだ」
「だって愛ってほんとはなんだか誰にもわからないのに、言葉だけはでんとこの世界に居座ってるから、オレたちはうかうかしてると愛に見放されるんじゃないかっていつもびくびくしてる」
「自分で見つけるしかないんだよ、正しい愛し方は。愛を持ち続けるためには孤独にも耐える自分自身を確立してなきゃだめなんだ。愛にすがって生きていくのはつらいし哀れだもの」
「愛を失っても生きていけるなにかがなければ、その人の愛は強くなれないのさ。オレには音楽がある」
「愛というのもまた、極めるべき一つの道として開かれてきたものなのだ、と。」 -
目次を見ると6章それぞれのタイトルが面白い。
無名だった作曲家の影山一輝の才能を信じ、彼を一流にすることを自分の役目と思っていた妻梓。好きな人が出来たから離婚して欲しいと言われ、嫌と答えた彼女。まだ好きだから?それとも妻の意地?離婚後の生活への不安?
列車の衝突事故が起きた時に連絡すべき相手がいないんだ…と気付いた時の梓の寂しさが痛々しい。こういう時にふと寂しさを感じる物なのですね。みんなお互いこの人しかいない!そう思って結婚するのにね~。ずっとその時の気持ちのままでいられたら良いけれどそうは行かないのがほとんど。
だから定年退職後に何もしない夫に不満を募らす主婦やそんな夫婦の元に生まれた娘は結婚はしたくない宣言。
梓が離婚を受け入れるのかその心の動きがリアル。でもまさか年下の作曲家からの提案に心が揺れてしまうとは…。結婚してもしなくても生きていくのは大変なことに変わりはないんですけどね。 -
結婚について考えさせられる。梓に同情しながらも、自分らしく生きていけない不自由さについて考えさせられた。
梓も百合子も最後は自分らしく生きていくことができていて良かった。結婚したからこそ不自由で、結婚し続けても離婚しても自由になれる。 -
結婚をする道を選んでもしない道を選んでも得るものはたくさんある。失うものもある。どちらを選んでもそれがその人の人生。
私は、もう叶わないけど、あの人と結婚したかったな。