- Amazon.co.jp ・本 (271ページ)
- / ISBN・EAN: 9784022594303
作品紹介・あらすじ
赤道直下の豊かな海と共に生きる、国境なき民の歴史と現在の姿を報告する。
感想・レビュー・書評
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池澤夏樹の「沖縄への短い帰還」の中に、この本のことが触れられてあって、どうしても読みたくて図書館で探した(1987年発行)。インドネシアの多島海の中にあるセレベス(スラウェシ)で、住民たちが王様に「貴君は我等の財産と健康を守らねばならない」等々の契約を迫る場面がある。ここで王様(神様)は、民衆によって雇われた立場にあるのである。移動分散形社会(焼畑・漁民・海賊・商人などの社会)は「嫌なら他に行っちゃうよ」が出来たかららしい。
もう少し詳しく紹介する。
10世紀からのイ・ラ・ガリゴ神話時代に残されたロンターラ文書には、民衆が降臨した天孫に統治者になることを要請する件があるらしい。曰く。
「謹んで申し上げる。よくお聴きいただきたい。我等は貴君を敬い、統治者に就任していただくためにここに参集した。
貴君は、我等の財産と健康を守らねばならない。
実りある水田を雀から守らねばならない。
貴君は、我等を悪人から守らねばならない。
我等を害う神託を告げてはならない。
さすれば、我等は貴君のお召しに応じる。」
これは、王の義務を定めた契約文書である。「王は神なり」思想はインドから来たが、立場はそれと逆転している。そして時代を経るに従い、即位文書に慣習法の規定が組み込まれ、村落憲法になってゆく。王の義務はますます重くなり、罰則も定められた。それは実際に行われ、王は16世紀からつい最近まで王位を追われるという事件が起きているらしい。それでも、王が必要だったのは、この時期に土地争いが起きたためでは無いか?と著者は推測している。
しかし、私は思う。現代も人類は選挙を通じてそういう制度を作って来たのでは無いか?嫌ならクビにしちゃうぞ、と。ここで重要だと私が思ったのは、「言葉としてきちんという」ことだ。だから、私は提案したい。選挙で誰が首相に選ばれようとも、国会冒頭演説で、首相は時間を少しとってこのように言うのを習慣としてもらいたい。これは違法では無いから、直ぐにできる(日本国憲法99条)。国民の反応が良ければ法制化してもいいかもしれない。曰く。
「わたくし第○代首相○○は、日本国憲法を誠実に遵守することを誓います。すなわち、以下の条文です。云々(字数の関係で載せないが、以下は憲法全文である)」
言葉は力である。発せられた言葉は実現に向かって動き出すだろう。
「国民は健康で文化的な最低限度の生活をする権利を有する」といえば、それは憲法施行70年経ってやっと実現に向けて動きだしはすまいか?詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
(1995.02.02読了)(1995.01.15購入)
東南アジア多島海の人びと
(「BOOK」データベースより)amazon
赤道直下の豊かな海と共に生きる、国境なき民の歴史と現在の姿を報告する。
☆関連図書(既読)
「バナナと日本人」鶴見良行著、岩波新書、1982.08.20
「アジアはなぜ貧しいのか」鶴見良行著、朝日新聞社、1982.08.20 -
「本は人生のおやつです」という古本屋で購入。450円