「パッチギ!」対談篇 ・・・・・・喧嘩・映画・家族・そして韓国・・・・・・ (朝日選書)
- 朝日新聞社 (2005年4月15日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
- / ISBN・EAN: 9784022598745
作品紹介・あらすじ
在日朝鮮人として京都に生まれ、70年代の朝鮮高校で喧嘩と映画に明け暮れた映画プロデューサーの李鳳宇。60年代末の東京教育大学附属駒場高校で高校闘争に参加し、サブカルチャーに熱中した批評家の四方田犬彦。国籍も生き方も違う二人が、1998年、青春時代を、映画を、家族を、韓国を、赤裸々に語りあった。そして2005年。二人は再び、思いをぶつけあう。二人が青春時代に見たものとは?日本で韓国映画をいち早く紹介してきた二人が「韓流ブーム」の先に見るものとは?「パッチギ!」とは喧嘩用語「頭突き」をあらわす朝鮮語で、語源は「乗り越える」「突き破る」という意味。朝鮮高校生の青春を描いた映画『パッチギ!』は、本書収録の98年の対談から生まれた。
感想・レビュー・書評
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映画《パッチギ!》は自分にとって二つ目のキッカケになった。あれから十年ほど経って漸くハングルを学び始め、少しずつ文化や歴史の極々キホンを学び始め、今頃になって、この本に出会った。焦りを感じそうになるが、グッと堪えてマイペースをキープ。
「誰もが真面目くさった厳粛な表情で語ろうとしたり、できることなら話題から外そうとしていることは、フランクに、何の構えもなく話すことにしよう。逆に、誰もが軽く考えてきたり、話題に上るだけで終わらせてしまうようなことは、真剣に、徹底して話しておくことにしよう。わたしたちはこの二つの原則にもとづいて、自分たちを造り上げてきた歴史について語ってきた。思い出ではない。伝説でもない。正真正銘の歴史である。」
両者に共感するが、「わたしの人生哲学は「勝ち逃げ」といってもいいかもしれない」と語る李鳳宇さんに、より一層のシンパシーを感じる。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
「月はどっちに出ている」や「パッチギ!」のプロデューサー・李氏と映画評論などで活躍し、1970年代に滞在していたほどの韓国通である四方田氏の対談集。対談を文章で読むのって、ものによってはつらいことがあるので、これもそんなことを危惧しながら読み始めたんだけど、かなり面白く読み通せた。2人は7歳差なので同世代ってほどでもないし、朝高と教駒で教育を受けた背景も違うし、そんなに頻繁に会っているわけでもなさそうなんだけど、映画や朝鮮・韓国、在日が媒介になっている感じ。
李氏はスマートな現在の姿によらず、昔はだいぶやんちゃだった様子。一方で、飄々と生きている印象だった四方田氏が、自らの生い立ちの反映なのか、結婚するつもりない、子ども欲しくないなど意外とネクラなのにびっくりした。
映画のことだけでなく、深く日本と朝鮮半島との関係や在日の話などにも及んでいるのがよかった。二人とも自分の信念のもと、普通でない生き方をしているんだけど、話はまともで好感もてるし、自分が生きたり考えたりするときの参考にもしたいもんだと思った。 -
2012/2/8購入
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『先に抜け、撃つのは俺だ』(98年 アスペクト)は、シネカノン代表取締役の李鳳宇さんと評論家の四方田犬彦さんの対談をまとめた本で、通常の対談集とは違い、お互いが交互に聞き役にまわって、これまで歩んできた道、考えてきたことを深く語りあっています。「熱い青春」を語った「熱い本」ということになるでしょうか。シネカノンのバック・ステージというよりは、同時代をこんな風に感じながら、こんな風に生きてきた人がいるんだなあ、と感動的でした。
この本は、映画『のど自慢』公開に併せて出版になったものですが、『のど自慢』のプロモーション本ではありませんし、もっともっと読まれていい本だと思っていました。李鳳宇さんのパート、すなわち、李鳳宇さんの青春を映画にしてみれば面白いのに、とも思いました。いや、きっと、そういう企画もあったと思います。だから、映画『パッチギ!』を観て、驚いたのですね。内容に、李鳳宇さんの青春と重なる部分が多かったから。でもまだ『先に抜け、撃つのは俺だ』の映画化の可能性がなくなったわけではありませんね、たぶん。映画化すれば、きっと、『パッチギ!』よりももっと面白くて、凄くインパクトのある作品になりますよ!
ところで、『先に抜け、撃つのは俺だ』はいつしか書店の映画本コーナーから消えたのですが、『パッチギ!』公開に併せて、同じ2人による、『「パッチギ!」対談篇 喧嘩・映画・家族・そして韓国……』という本が朝日選書から出版されました。映画『パッチギ!』についての対談本かと思っていたら、中身は『先に抜け、撃つのは俺だ』を丸々再録して、その後のことについて新たなに語り直した対談を付け加えたものでした。そんなのないよ〜。大半は同じ本なのに、もう1冊買わなくちゃいけないの?
まあ、それには個人的にがっかりさせられましたが、この本ももちろん『パッチギ!』のプロモーション本などではありませんし、『パッチギ!』を観ていても観ていなくても、とても楽しめます。むしろ、前の本を買っていない人にとっては、かなりお得ですね。同時代の青春を描いた本として、そして映画好きに捧げる本として、オススメです。