ル・コルビュジエ 近代建築を広報した男 (朝日選書 856)

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  • Amazon.co.jp ・本 (270ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022599568

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  •  世界的建築家ル・コルビュジェについて、様々な面から分析した一冊。

     まず彼の建築について考える上で大前提となるのが、「近代建築の5原則」である。
    ・ピロディ(太く頑健な柱により建物を空中に浮遊させ、地面と直に接する1階部分を開放しようというもの)
    ・屋上庭園
    ・自由な平面(壁を建物の基本単位から取り除いた「ドミノシステム」を発展させたもの)
    ・水平連続窓
    ・自由なファサード
     そしてこの5原則が全て実現した「サヴォア邸」の写真を観ると、屋内と屋外の区切りが厳密でなく、まるで屋内と屋外が連続しているような、そのような印象を受ける。それは、「壁」というものが重要視されていないこと、1階部分が解放されていること、水平連続窓などによるものであるだろう。
     また、ル・コルビュジェは幾何学的かつ機能主義であり、作品の写真を観ると、確かに装飾よりも機能性を重視した実用性に優れた建造物となっているように思える。ビルドイン式の家具や可動壁を用意した、「クラルテ・アパート」などはその象徴であろう。
     その一方、ル・コルビュジェはメディア戦略にも優れており、建築を「観せる」という部分の功績も大きい。
     ル・コルビュジェの作品は、現代の建物に通じる部分も数多く、近代建築の源流である人物といえるのではないか。

  • 現代における名声とは難しい。芸術家の場合、それは自らの分野に関する才能だけでなく、セルフプロデュース能力やブランディングも含めて判断されるものだからだ。本書はル・コルビュジエの建築だけでなく画家や雑誌出版としての側面、彼自身の性格やその影響力について述べていくことで、「20世紀最大の建築家」と呼ばれるに至るその全体像を明らかにしていく。巻末の相関図は興味深く、初期は美術界からの影響を受けていたル・コルビュジエがやがてデザイン・建築界に影響を与える側になっていくのがわかりやすく整理されている。

著者プロフィール

1966年、青森県生まれ。評論家として、美術・建築・デザインなどを対象に執筆や翻訳活動をおこなう。東京工科大学デザイン学部教授。著書に『拡張するキュレーション――価値を生み出す技術』(集英社)、『オリンピックと万博――巨大イベントのデザイン史』(筑摩書房)、『美術館の政治学』(青弓社)、『美術館はどこへ?――ミュージアムの過去・現在・未来』(廣済堂出版)、共著に『視覚文化とデザイン――メディア、リソース、アーカイヴズ』(水声社)、『幻の万博――紀元二千六百年をめぐる博覧会のポリティクス』(青弓社)など。

「2022年 『ミュージアムの教科書』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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