ザ・ペニンシュラ・クエスチョン 上 (朝日文庫)

著者 :
  • 朝日新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022617033

作品紹介・あらすじ

2002年9月の小泉訪朝で、重要な役割を演じた北朝鮮の「ミスターX」とは何者だったのか。朝鮮半島「核危機」をめぐる六者協議の舞台裏で、各国が繰り広げた複雑な駆け引きを、多数の要人へのインタビューにより解明し、現代史の闇に迫ったノンフィクション大作。

感想・レビュー・書評

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  • [思惑の交差点で]2002年9月の小泉首相訪朝から第二次核危機の勃発を経て、2005年9月の六者協議における共同声明の発表とその後の交渉の漂流までを主にカバーしたノンフィクション大作。日本、アメリカ、韓国、中国、ロシア、そしてなによりも北朝鮮が半島問題という舞台の上でどのように踊り続けたかが、膨大なインタビューを基に再構成されています。著者は、『同盟漂流』や『カウントダウン・メルトダウン』などの優れた作品を世に送り続けている船橋洋一。


    今年読んだ本の中で暫定1位の素晴らしさ。錯綜し、絡み合い、ときには衝突する各国の行動や言動を一つひとつ解きほぐし、その背景を構成する思惑や懸念を晒し出していく手腕は圧巻以外の何物でもありません。また、船橋氏がどの国の考え方をすくい取っていく際にも、しっかりとその国の内側から半島問題への姿勢を分析、評価している点がお見事。かといってただ硬い読み物かと言われると決してそうではなく、その瞬間の外交的な大きな画を象徴するかのような出来事をしっかりとエピソード的に随所に挟み込んでおり、ノンフィクションとして抜群に面白い点も見逃せません。


    得るものが多すぎてとても簡潔にはまとめきれないのですが、特に印象的だったのは日本の交渉力に反映される日米同盟の力学、韓国の「バランサー」論の淵源とその陥穽、中国の日本に対する半島問題に反響する形での軍備増強の懸念、中国が朝鮮半島に描きたい将来像と描きたくない将来像の比較、そしてロシアの北東アジアにおけるアプローチの仕方といったところでしょうか。分量の多い作品であることは確かですが、ぜひ一読をオススメしたい類稀なる良書です。

    〜第二次核危機は、失われた機会のオンパレードだった。〜

    参りました☆5つ
    (注:本レビューは上下巻を通してのものです。)

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著者プロフィール

一般財団法人アジア・パシフィック・イニシアティブ理事長。1944年北京生まれ。法学博士。東京大学教養学部卒業後、朝日新聞社入社。同社北京特派員、ワシントン特派員、アメリカ総局長等を経て、2007年から2010年12月まで朝日新聞社主筆。2011年9月に独立系シンクタンク「日本再建イニシアティブ」(RJIF)設立。福島第一原発事故を独自に検証する「福島原発事故独立検証委員会(民間事故調)」を設立。『カウントダウン・メルトダウン』(文藝春秋)では大宅壮一ノンフィクション賞受賞。

「2021年 『こども地政学 なぜ地政学が必要なのかがわかる本』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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