- Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
- / ISBN・EAN: 9784022618740
感想・レビュー・書評
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想像していた内容とは少し違っていた。
けれどもからゆきさんとはどんな人達が何故からゆきさんになったのか。
それの事に関する時代背景や国、その地域での暮しからからゆきさんを知る事が出来た。
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明治時代、外国に売られていった女の子たち、その背景、女の子たちのその後。
綾さんの養母のキミが精神の異常をきたしている様子が、胸に迫る。
養子の綾さんに、このいんばいおなご!おまえのいんばいをようしっとるよ。ひとりの男も百人の男も同じこつ、と罵る。それは、おそらくキミさん自身の自己認識で、雇い主や客や故郷や社会からそう言われてきて、それが彼女の中に刷り込まれてしまったのだろうと想像できる。
炭坑夫を描いた「まっくら」の女たちは、まずしくてももっと、なんというか、正常だった。本来の人間の強さを持っているように読めた。それは貧しくても人間の暮らしだったからたみろう。
が、からゆきさんたちは、アウトオブノーマル。底辺よりも、さらに下。
日露戦争とか安重根の伊藤博文襲撃とか朝鮮の鉄道敷設とか。そういう歴史の背後にこんな物語があったことを、覚えておこう。
わたしは、選択肢を多く持ち、お腹いっぱいで自己実現とか平和に暮らせることを感謝しよう。
森崎さん、すごい仕事をありがとう。あなたの女性への眼差しが、本当に励みになる。女性が幸せであることを、こころから願った人。 -
石牟礼道子は読んでいたのだが、サークル村の同志だった森崎和江は読んだことがなかった。
『からゆきさん』は昔から知っていたのだけど山崎朋子の本や『五番町夕霧楼』みたいな遊郭に娘が売られる話とごっちゃになって、なんだか暗い因習に満ちた救いのない話だと思い込んでいて、手に取っていなかった。しかし石牟礼道子や藤本和子との関係を知り、これはちゃんと読まなければと思って読んでみた。
確かに貧しい家の娘が家計を助けるため、あるいは口減らしのため、密航状態で船に乗せられ東南アジアで身を売ったわけで、労働基準法もなければ健康保険ももちろんない中、性病の危険にさらされながらの毎日も辛かっただろうが、そこまで自分を犠牲にして働いても、故郷に帰ればまともに扱われない、というところはもちろん辛い。
しかしもっとずっと前から貧しさのため身を売る女性たちを「醜業婦」「淫売」「売女」と蔑む女性観が、経済・政治・ジャーナリズムなどすべてを握る男たちにあったのでである。娘を農村漁村から集めて(家畜同様)売りさばいていたのはほとんどが男であったのだが。
確かに悲惨である。しかし、意外にも救いのない暗さとは違う。
それはまず村の若い男女の性意識が現在とは全く異なることがきちんと取材されていること。性行為を淫靡なものとは思わず、「性が人間としてのやさしさやあたたかさの源である」(p64)と感じて育った娘たちは「おおらかでふてぶてしいエネルギー」(p65)があった。武士層やその後の中産階級が規範とした「二夫に見えず」といった貞操観念とは無縁であった。しかしそういった性意識と貧しさに付け込んだのが明治の男たちであった。
この本には「からゆき」になった後実業家として成功した女性も出てくる。悲惨な人生を送った者ばかりではなく、混乱の時代をたくましく生き抜いた姿に救われる。
しかし、男が集まるところには身を売る女が必要であるという男たちの意識は昭和になっても変わることはなく(石牟礼道子も水俣にチッソの工場ができるとすぐに女郎屋ができたと書いている。)、これが戦争中従軍慰安婦の流れになったことは容易に想像できる。女たちを集めて売る業者の男たちは役所からはお目こぼしで咎められず、女たちはつかまれば実名報道と「淫売」の烙印。
そこが一番暗澹とするところである。
売らせた男や買った男は咎めを受けず、売った女だけが貶められることは今も続いているのではないか。
取材を重ねるというより、「からゆき」だった女性と身を一つにしているといった書きぶり、貧しい人、蔑まれている人の中にある強さや美しさを描いている点も石牟礼道子と近いものを感じた。
男が書いた歴史には書かれなかった、たくさんの女性の声が聞こえてくるようだった。 -
ずっと読みたかった。なんとなく知っているつもりだった「からゆきさん」。思ってたより生々しく強烈に描かれていた。ディテールにいたたまれなくなり、何度も途中で本を置いた。
12、3歳で売られる子もいて、おそらく今の子供より背丈も小さいだろうと思うと胸が詰まる。そして、二十歳まで生きられなかった子がたくさんいる。娘を売らなければならないほどの貧乏、飢えが想像できないとはいえ、あまりにひどい。これだけを見れば、時代が進んで良かったと思える。確かに今の方がマシなのだが、それでも女性の性を搾取して儲ける人たちはなくならず、少女を商品と見てお金で買う人はなくならず、どうすればいいのかと思う。
後の方の、ヨシさんの話は痛快だったが、最期を思うと、やはりスタートがダメで、いくら本人の才覚で運命を切り開いたとしても、深く窺い知れない闇が中に巣食っていたのだろう。それがわかりやすい形で現れたのがキミさんだった。
ずっと前に書かれたものに、現在を強く感じることが最近続く。
"「可哀さうに人民は重い税と、少数の金持の懐中を肥すために、なけ無しの銭を搾られて居る」。"
184ページ
一時の日本より貧富の差、「人民と金持」の差が開いてきたのだろう。
二度と「からゆきさん」が出ないとは言えなくなってきたのかもしれない。 -
中村淳彦の『日本の風俗嬢』(新潮新書)、坂爪真吾の『性風俗のいびつな現場』(ちくま新書)、そして鈴木大介の『最貧困女子』(幻冬舎新書)など、性産業を描いた書籍は、近年、新書を中心に好調な売れ行きを見せている。現代の格差社会を背景にした売春を描いたこれらの書籍には、「エロ」だけでは語れない女性たちの姿が綴られている。
作家・詩人である森崎和江の『からゆきさん 異国に売られた少女たち』は、今から40年前の1976年に刊行された書籍であり、今年8月に朝日文庫より復刊された。過去の名著は、なぜ今、漫画家・今日マチ子の描く少女の表紙によって復刊されたのだろうか? 本書を一読すれば、この海を渡って売春を行った「からゆきさん」たちの境遇が、驚くほど現代に似ていることがわかるだろう。
シベリア、朝鮮、大連、上海、シンガポールなどのアジア各国からアメリカ、オーストラリアまで、海を渡って世界各地で売春を行った女性たちは「からゆきさん」と呼ばれた。明治維新によって鎖国からの開放された日本からは、新天地を求める男たちだけでなく、それを慰撫する少女たちが海外へと連れて行かれたのだ。本書の軸となるのは、明治29年に天草に生まれ、朝鮮へと売られたおキミ。作者は、偶然知り合ったおキミの幼女である綾から、その壮絶な体験と、老婆になってまで悔い続ける姿を知る……。
よく知られているように、もともと、日本は性に奔放な土地だった。田舎の村々には夜這いの風習が近代以降も残り、当時の福岡の新聞には「13歳以上の者にして男と関係せざるものはない」と書かれるほど。キミの育った天草地方でも、日露戦争の頃までは夜這いの風習が残されていて、心の通った男とは妊娠してからの婚姻が当たり前だったという。
しかし、おキミたち「からゆきさん」が、男たちから求められるセックスはそんな牧歌的な日常とは程遠かった。口減らしのために、浅草の見世物小屋の養女となったおキミは、16歳の頃、再び李慶春という男のもとに養女として出された。しかし、李の目的は、養女として貰い受けた彼女に売春をさせること。ほとんど誘拐に近い形でおキミは神戸に連れて行かれ、貨物船に乗せられた。そして、その船内で李をはじめ数々の船員たちと「おショウバイ」をさせられたのだ。それを断れば、食事すらも与えられず、おキミはただただ男たちを受け入れるしかなかった。おキミとともに貨物船に乗せられた14人の少女たちは、昼も夜も「おショウバイ」を強要され、誰もが泣いていた。そして、貨物船が朝鮮半島南端の漁港木浦(もっぽ)につくと、少女たちは北朝鮮の鉄道敷設現場につくられた娼楼へと送られる。
娼楼での暮らしはさらに過酷を極めた。少女を買う男たちは、工事現場の人夫として集められた荒くれ者であり、日本人工夫は、背中一面に刺青を持った粗暴な男が多かった。一方、朝鮮人の中には、日本人に対する恨みの感情を晴らそうという者もいたという。おキミは、朝鮮人の性欲を満たすことには耐えられた。けれども、人間としての誇りを奪われることには耐えられなかった。朝鮮人の男4-5人に囲まれ、限界まで尿意を耐えさせられた挙句、小便を漏らし、笑われた。この記憶が蘇るとき、おキミは朝鮮語で叫び声をあげた。その屈辱は、すでに老後になったおキミの心の中で、いまだ癒えぬ傷となっていたのだ。
「いんばいになるか、死をえらぶか、といわれたら、死ぬんだった。うちは知らんだったとよ、売られるということが、どげなことか……」
おキミは、養女の綾に何度もこう語った。
綾とふたりきりになった時、おキミは「夜叉のよう」に狂ったという。綾の実母は、おキミと同じ娼楼で体を売っていた。そんな綾に向けて、数々の男にされてきたのと同じような口調で、おキミは綾が淫売の血を引いていることを口汚く罵った。綾は、森崎に向かって「売られた女とは一代のことではない」「身を売るっていうことはいちばんふかい罪なの」と語り、「いのちにかえても、すべきことではない」とつぶやく。背負いきれない過去のトラウマに押しつぶされたおキミは、精神科の病院で死んだ。
「からゆきさん」たちは、貧しい家の生まれだった。生きるために、彼女たちは養女として出され、密航船に詰め込まれ、見知らぬ土地で男たちの性欲の相手をさせられた。それから100年あまり。今、再び貧困から売春をする女性たちの存在が取り沙汰されており、中村淳彦によれば、韓国人はもちろんのこと、脱北者や中国朝鮮族の女性たちまでも体を売るために来日しているという(『日本人が知らない韓国売春婦の真実』宝島社)。貧困、格差、越境……「からゆきさん」少女たちの姿は、現代の女性たちに重なるだろう。 -
Courtesans Sent Abroad/Japanese women sent to work as prostitutes by Kazue Morisaki
などの #英語 タイトルが使われているようです。
聞き書き集だと思っていましたが、それ以上の内容でした。 -
東2法経図・6F開架:368.4A/Mo63k//K
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なんとなくこういうことなんだろうな、と思っていたことが本当に甘すぎて、いい歳をして我ながら無知すぎていやになる。