寿町のひとびと (朝日文庫)

著者 :
  • 朝日新聞出版
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感想 : 6
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  • Amazon.co.jp ・本 (415ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022620880

感想・レビュー・書評

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  • 山田清機『寿町のひとびと』朝日文庫。

    横浜の一等地にある『ハマのドヤ街・寿町』を6年に及ぶ取材で、その全容を解き明かすノンフィクション。文庫版のための新話『寿町ニューウェーブ』が冒頭に収録。

    人に歴史ありという言葉の通り、様々な人びとが様々な事情と悲しい過去を抱えて寿町というドヤ街に暮らしている。多くはアルコール依存症やギャンブル依存症から抜け出せない人びとが、世間一般の考える普通の暮らしが出来ずにその日暮らしをするために寿町に集まるのだ。

    さらに寿町には簡易宿泊所や角打ちの酒屋を営む人びとが暮らし、極めてグレーな貧困ビジネスを行なうNPO、新興宗教に携わる人びとが集う。まさに魑魅魍魎、百鬼夜行が跋扈する小さな街が寿町だ。

    横浜というと洒落た街のイメージが強いのだが、寿町のような所もあるのには驚いた。

    何だかんだ言っても、衣食住が満ちたりた今の自分の暮らしに満足すべきなのかも知れない。

    本体価格1,050円
    ★★★★

  • 寿町と聞けば どんな街かは
    横浜の人間ならイメージがつきます。
    説明するなら 東京とかの 山谷地区のようなものと
    言いますけど。。。

    私は 近くに中華街などもあるので 
    通過した事もあったかもしれません。
    特に意識していませんでした。

    というのも この本にも書かれていましたが
    この地域に人が大勢いたのは 
    かなり前の事。

    横浜博覧会などが終わってしまえば
    肉体労働の人々は 違う地域に流れていってしまいます。

    著者は この寿町に 何度も通って
    色々話を聞いていくのですが
    どちらかというと 寿町の人々をサポートしていった人を
    メインにしていました。
    ので どういう風に成り立っていったのかがよくわかる内容でした。

    この場所は ちょっと怖い場所かなというイメージでしたが
    保育所などがあったり 教会があったというのは 意外ですが
    驚きと共に ちょっと 怖さが薄まりました。

  • 恥ずかしながら興味本位で寿町を通りがかった事があり、想像していたドヤ街では無く老人と福祉の町だった事に驚いた
    今の寿町が形成されるまでの経緯というか、住む人とサポートした(している)人達の歴史や葛藤が描かれていた

  • どんな街にも過渡期はあるが、今まさに黄昏を迎えている横浜・寿町に関わって生きる人々に取材したルポ。
    黒船来航、関東大震災、第二次世界大戦、高度経済成長からのバブル崩壊、そしてリーマンショック。寿町には連綿と続く歴史がないのだと筆者はいう。なるほど。それはそのまま横浜という都市の性格にも通ずると思う。港町という特性上、新しいものがどんどん入り、人もモノも流し流される。だからこそ生きてこられた人たちもいる。

    いわゆるドヤ街と呼ばれた寿町は、今や「福祉ニーズの高い町」となり、かつての面影は薄い。熱さも勢いも若さも失って、それはつまり日本の抱える問題が先鋭化した形で存在するのが寿町だということだ。

    では、寿町に未来はないのだろうか。
    ちょっと違う気がする。寿町は身寄りのない高齢者を筆頭に、ホームレス、貧困層、精神障害(から来る未就学・育児放棄・就労不適格・貧困)といった「社会の爪弾き者」たちが流れついている。分離しない、内包するというのが今の福祉の大前提のようだが、理想と現実は乖離する一方だ。本書を読んで感じたことの筆頭は、今や健常者しか普通に生きられない社会を、彼らの方が見限っているように思えるということだった。
    徐々にあちこちで、こういうコミュニティが増える可能性はないだろうか。

    万人が満足できる社会・福祉は永遠に実現不可能だ。その純然たる事実から目を背けるな、ということなのだろう。

  • 横浜のドヤ街、寿町の人々に話を聞き調べまとめたノンフィクション。東京の山谷、大阪の西成は聞いたことがありましたが、寿町は初耳でした。
    登場する人たちが高齢男性ばかりで、悲しいやらよく分からないやらで読むのに時間がかかりました。
    そんな中、平成生まれで当時23歳の女性が登場。バビ語、キマ語という独自の言葉を話すとのことでした。
    たとえば「今日は雪になりました」を
    バビ語では「キョボウボハバ ユブキビニビ ナバリビマバシタ」
    キマ語では「キヨキマウハ ユキマキニ ナキマリマシタ」
    となるそうです。異世界ですね。

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著者プロフィール

ノンフィクション作家

「2019年 『パラアスリート』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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