若者を見殺しにする国 (朝日文庫)

著者 :
  • 朝日新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022646064

作品紹介・あらすじ

過剰な若者バッシングへの不満。年収130万円で生活する不安。「自己責任」の一言で思考を停止させ、さまざまな格差を固定化する社会への違和感。執筆時31歳だった著者が、フリーターの立場から「無縁社会化」など2010年代の日本の論点を看破した評論集。

感想・レビュー・書評

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  • 論旨ば置いておいて、自分の生活をもとにいちから自分の言葉で思想を紡ぎ出そうとしているのが伝わってくる。これにきちんと向き合える思想はそうないなと思う。吉本や鶴見が反応したらしいのもそういう表出であることをかんじたからだろう。ストライクかボールかは別にして、一球一球が体重の乗った重い球だ。
    2018年に始まった支援プログラムの実効性はいかに?
    昨今についての著者の見解をきいてみたい。引用されているホリエモンの「金で買えないものは差別を生む」というのは至言だなあ。
    赤木さんは食えるようになって自分が「安定労働者」の側へ行けたら、しれっと沈黙するのかもしれんなあ(笑)ひっは叩きたいというより、内容的には取り敢えず死ななくて良い支援・保証を望んでただけだからなあ。災害の損失をどこまで国家の再配分のシステムでフォローしうるのか、というのと少し似ている気はするな。義援金やそれこそ専門の独立法人や企業が協賛した支援基金があっても良い気がするな。昨今の新卒獲得のための節操のなさと、植林することなく伐採するだけみたいな昨今の企業の人材の漁り方の下品さと、氷河期なんかあったかのようなホウカムリぶりはおなじ性根からきてるんだろうな。正社員の個々人だって日々、一生懸命はたらいているからパイを分け与えるのは難しいだろうね。制度的な再配分しかないと思う。公害被害者と同じような氷河期手帳みたいな。

  • レビュー省略

  • 正直な感想は「(ちょっとくどいけど)これだけの文章が書ける人を雇ってくれる職場」がないとは思えなかった。もちろん労働者を階層化してかつては考えられなかった「使い捨て労働者」を堂々と社会システムに組み込んでいる現体制はあまりにひどいとは思う。身勝手な「自己責任論」にも賛成はできないし、戦争になることで一時的に固定化されていた格差が「ガラガラポン」されることは事実だろう。だが、恐らく多大な犠牲を払って格差がなくなっても恐らく10年もすれば元の格差社会に戻っていてしかも戦争前の構造がほとんど維持されたままで再生すると思う。(高齢化などで這い上がれない人はいるだろうから、その点では若い人の方が有利だろうけど・・・)
    なんらかなドラスティックな変化が必要なことは筆者が訴えるとおりであるし、それに対して労働貴族に支配されたかつての労働組合がなんの助けにもなっていないのも事実だろう。ただ、筆者は「身近な格差」(正規の職を持ち家庭も持っている普通の人、と非正規労働者の間など)を特に問題視しているが、そこでいがみ合っていたのではピラミッドの上層に安住している支配者層の思うつぼである。
    戦争によって丸山眞男をひっぱたくことはできるかもしれないが、ひっぱたいた本人も最前線で最も危険な状況に追いやられているわけだし、そもそもひっぱたく相手が違うだろう・・・

  • 非常に面白かった。元々「『丸山眞男』をひっぱたきたい~」を最近(ここ1年くらい?)知って、著者を知って、読もうと思った本。
    私は著者よりももう少し下の世代だし、住環境も若干違うけど、共感する部分は多々あった。
    憎み散らすことはないと思うけど、でも、ポストバブル世代から搾取して高齢者を養う、都会の金で地方を養う、っていう図式は二項対立を煽ってるように見えるけど、事実は事実。
    「俗流若者論」に対する反論?もきちんとデータに基づいた発言をしていて、参考になった。
    これの前に読んだシノドスの本は赤木節が全然なかったので、今回のはよかった。

    厚みの割に、サクサク読める本です。言いたいことが著書内で何度か重複する部分もあるけど、「それだけちゃんと言いたいこと」ってことが分かっていいと思う。

  • 012059.

    弱者は社会が崩壊する夢をみる~赤木智弘『若者を見殺しにする国』

    インターネット出身、社会批評に携わる著者は

    富裕層、貧困層の二極化が進む一方の「平和」な社会に異議を唱え

    戦争によってもう一度世の中がリセットされることを待望する。


    いまの世の中では自分たち弱者は生活の向上など望めず、人間としての尊厳も奪われ、

    このまま生きながらえても末はホームレスか首を吊るしかない。ならばいっそ戦争でも起きたほうが…。

    こんな論旨の「31歳フリーター、希望は戦争」という文章は大きな反響を呼び、職者からさまざまな意見が寄せられたということです。

    たしかに暴論といえば暴論にも思えますが、貧困層の苦しみはそこまで深刻化しているのだと著者はいいます。


    ジャーナリズムが煽りたてる「俗流若者論」を著者はまず攻撃する。本当に少年犯罪は増えているのか、昔はいまよりも凶悪犯罪が少なかったのかをデータをつかい検証を試みる。

    さらに監視カメラによる不審者締め出しにも言及し、

    「安定した地位にある層が中高年フリーターやニートなど「うさんくさい」連中の行動を警戒している」と指摘。

    著者の持論にはやや私怨がまじっている印象もありますが、同じ弱者の目線から見た実感がこもっています。


    朝日文庫刊の本書の冒頭、著者はみずからのプロフィールをこう紹介します。

    文化とは疎遠な北関東の小さな町に育ち、社会へ出る頃にはバブルがはじけて就職氷河期、

    東京でカルチャーに関わる仕事に就きたくても、地元を出て自立する生活力もなく

    アルバイトで生計をたてながら細々とライター活動を続けている…

    なんだか僕と境遇がよく似ています(事実、著者は文中で「このような人間はクサるほどいる」と書いています)。


    ただ、この著者と僕のあいだに一点ちがいがあるとすれば、著者が現状を悲観的にとらえているのに対し、

    僕はわりと現状を楽しんでしまっているという点でしょう。

    もちろん年収への不満とか将来への不安はふつうにありますが、それは正社員になれば霧消するというものでもないでしょう。

    リストラや倒産の不安は常についまとい、責任はフリーターより重くなる。しかも簡単なことでは辞められないという重圧感。

    等々をテンビンにかけて現状もまあ悪くはないと思っているのですが、いつか大きなシッペがえしがくるかもしれませんね…。


    最近僕はとある劇団の公演のために芝居の台本を書きましたが、その中で自分をモデルにしたような中年フリーターに

    「いいか見てろ。大きな地震が来て世の中の仕組みが全部がらがらと崩れたときには、そのときは俺だっておおいに実力を発揮する。ああ、早くそんな日が来ないかなあ…」

    というセリフを言わせました。

    もちろんあの震災のあとなので観客にどう受け入れられたか定かではありませんが、

    この「地震」と「戦争」を入れ替えれば、僕と本書の著者の考えは非常に近くなるような気もしました。


    世の中がいまのままでは一生這い上がれそうにない人間たちは、

    硬直した現状に変化を与えるためとあれば、それが戦争だろうが地震だろうがカタストロフを待ち望むのかもしれない。

    震災後、著者はいったい何を考えたのか。過激とも思える持論はどう変化したのか。それは文庫版のあとがきで。

    http://rcnbt698.blogspot.jp/2012/08/blog-post.html

  • モノすごーーーーく感動した。
    モノすごーーーーく面白かった。
    モノすごーーーーく考えさせられた。


    そもそも、この本はyasuyukiさんのブログで紹介されていた。
    http://yasuyukima.typepad.jp/blog/2012/02/the_country_which_kills_young_people.html
    私は思想とか知識が皆無だから、「興味あるけど読めるかしら?」とビクビク。
    でも、yasuyukiさんの書籍レビューに『かなり平易な文章で淡々と」とある。
    その言葉に勇気を貰って、読んだ。

    筆者さんは、現在の日本は富裕層(一部の超お金持ち)、安定労働層(正社員として安定した生活を送っている人達)、貧困層(非正規雇用者やフリーター達)
    という3層に分かれていて、その安定労働層と貧困層の格差が広がっているばかりか、その人達を使い捨てして社会が成り立っているという現実を訴えている。
    この辺はyasuyukiさんのブログを読んで下さい←なんちゅういい加減な…


    私の感想は、冒頭の通り。
    ポイントは4つある。


    一つ目。
    『勇気』がある!

    私は「(文芸作品以外では)難しい内容を分かりやすく書いている文章」は素晴らしい文章だと思っている。
    難しい内容を平易に書くというのは、ものすごく大変だ。「子供に質問されて、説明しようとしたら凄く面倒で難しかった」というのは皆さん経験があるだろうけど、それ!
    で、その労力の割に『見た目の平易さ』から『レベルが低い』と受け取られるから、そんな事やる人少ない!
    ちなみにね、逆の文章はいーーーっぱいありますよ…
    あとね、こういった思想を書いた文章を分かりやすく書いちゃうと、分かりやすさ上にツッコミを受けやすいんですよ。
    難解な言葉で「ん?この言葉を知らないオレ、レベル低い?」って思わせてケムに巻く…という言い方はよろしく無いけど、それが無い。
    分かりやすいからこそ、相手も反論がし易いんです。分からんかったら、反論も何も出来ないもん。

    つまり分かり易い文章で、オノレの思想を書いちゃうとレベルが低いと受け取られるわツッコミは受けやすいは、ロクな事が無い。

    でも、筆者さんがそれに敢えて挑戦しているのは何故か?
    (ちょっと読めば分かると思うけど、『平易』に書く事に凄く神経を使った文章です)

    筆者さんは『学も職も無く落ちこぼれて、不当に差別されている若者』にも読んで欲しいと考えたからだと思う。
    筆者さんは、自分を思想者では無く煽動者だと位置付けている。
    『落ちこぼれ』(←嫌な言葉だけど、通りがいいから使うよ)の中の一人として、その差別を中・上流層にこの文章で訴えると同時に、同じ階層の人達にも差別されているって気付いて!と考えて、この平易さなんだと思う。

    これは、勇気が要る。
    SNSをちょっとやった事がある人なら、分かると思うけど、
    自分の意見を否定されるのは物凄く辛い事だし、意見の否定ではなく意見者の否定をされてる事も多いし。
    ネットでの反論、というか攻撃はもっと差別的で侮蔑的だけど、そんな実例をここに書きたくないから、知りたければ○ちやんねるでも見て下さいな。

    で、そんな攻撃をされるのを分かってて、この文章を書く勇気に私はいたく感動したのです。


    二つ目。
    主フについて。
    この文章は社会人になる時に『貧困階層(男)』と決まってしまったら、それを覆すのは難しいという内容なんだけど、
    女には『玉の輿逆転』があるという事に言及してる。
    貧困階層の女性が富裕層の男性と結婚して安定を得るってのは当たり前のようにあるのに、
    貧困階層の男性が富裕層の女性と結婚して安定を得る、という実例が少ないと。
    ご存知のように女性が安定して社会で働き続けるのは、なかなか厳しいです。だから、より安定を得やすい男性が世帯主となった方が、リスクが少ない。だから、専業主婦はいても専業主夫はほとんどいない。
    これって、キチンと考えたら女性が安定して働き続けられるシステム作りをしよう、に辿り着くと思うんだけど、
    これを筆者が公言すると「だったら、お前は家事が出来るのか!」と主『婦』に言われるらしい。
    主『婦』の皆さん、それは戦う相手を間違ってないか?と私は思う。
    戦う相手は、女性がいわゆる大黒柱になれない現状を作ってる人々でしょう。そこで、専業主フは女の特権だ!と縄張り争いをしてたら、男女平等なんて益々遠のくと思うのです。


    三つ目。
    椅子取りゲーム。
    あ、そんな言葉は出てこないけれど、私がこの文章を読んで思い浮かんだ言葉です。
    数少ない『正社員』の椅子を、オトナが取り合っている。
    でも、椅子取りゲームなのに座りっぱなしの人が多くて、若者は座れない。
    じゃあ、椅子を増やしましょう、となるはずが、自分の椅子にしがみついて、更に椅子を大きく立派にしろ!
    とゲームの主催者に言っている。
    ゲームの主催者も、椅子に座っている人も『座りたい若者』をいないモノとして扱っている…
    それが今の日本の構造なのです。
    と、意味分かんねぇ!と思う方は、この本を読んでみて下さいませ。


    四つ目。
    就職失敗で自殺。
    最近、ニュースで就職失敗で自殺が増えていると見たのですが、
    『就職失敗で昨年150人自殺 30歳未満、07年比2倍超』
    http://www.47news.jp/CN/201205/CN2012051301001625.htmlこれの原因の一つが、この本に書かれていると思うのです。
    正社員雇用の椅子は、少ない。
    かつ、新卒でそれに座れないとチャンスは二度と無い。
    それを悲観して自ら死を選んでしまう…
    これは、悲観する方が悪いのでは無いと私も思います。悲観させる仕組みを作った方が悪い。それで、死を選ぶのは弱虫だ努力が足りないと言うのは『強者の理論』とされて当たり前でしょう。

    弱者を守る、というのが福祉の大きな一面だと思うけれど、非正規雇用者と認定されない弱者はいないモノとされる…という現状はやはりおかしいを通り越して怖いです。



    『チャンスが平等にある』という民主主義の基本だと思います。
    それが守られていない、という現実から目を背けてはならないと痛感しました。


    P.S.
    yasuyukiさんの真似をして、これもセットでオススメ!を選んでみました。
    石田衣良さんの
    『非正規レジスタンス』です。
    http://booklog.jp/item/1/4163272100
    池袋ウエストゲートパークシリーズですが、非正規雇用ワーカーの生活が淡々と描かれていますよ。


    最後になりましたが、この本を教えて下さり、更に快くリンクを承諾して下さったyasuyukiさんに、心より御礼申し上げマス♪

  • 迫力で押されっぱなしだ。自分の生活確保からの視点では、さもあらんと言う所か。
    日本の経済に明るい光を見つけることは困難で、生活に根付いた発言はリアルさを加え、読み初めはどんよりしてしまい、辛かった。自らの論文を解説し、そこに応答した政治家や学者に反論する手法が良いのか、筆者の自虐的なキャラクターの成せる技なのか、進めば進むほど暗くならずに済む。心いれて読める感じだ。
    奇しくも作者と生まれはあまり変わらない。私も含めて、団塊Jr世代が割りを食っていることは薄々わかっていた。私はそれを逆手にとるだけの気概を持っているつもりだったが、甘ちゃんだったかもしれない。揺るがない経済階層を感じるにはいたっていなかったのだから。
    問題提起が筆者の目的なので、十分に達成されていると感じる。
    大きくは高度成長期を支えた資本主義そのものが行き詰まっているし、小さくいえば企業の年次ピラミッド、階級ピラミットのいびつさは今後の日本をどうしようもない所に追い込んで行くだろう。働き盛りの世代を見殺しにするしっぺ返しは大きい。筆者はそういった角度からは訴えてはいなかったけれど。
    結局、今後を考えれば、社会は若者を育てなければならないのだから、世代交代は必須だ。子供や孫の顔をみれば思わないものだろうか?
    筆者は最低限の金がなければ、子供を可愛いとは言っていられはないというだろう。そう思う。だからこそ、余裕のある所から、取るしかないし、それが富の再配分だろうと思う。
    失礼な言い方だが、やはり、システムまでいかなくても、ちょっとした策でも、筆者から自論が展開されれば面白いだろうなと思った。今後に期待してしまうな。

  • エゴの塊。あまりにひどくて読んでいてどんどん落胆していった。せっかくの時間を返してほしい。

    そう、世間の視野の狭い大人達に言いたくなる本。ですね。

    大人って「最近の日本人はダメになった。」って必死に悲観する。けど、アンケートをとったらこうなるんじゃないかな。
    「Q:日本人はダメになっていってると思います? /A:たぶんそうじゃないかな。」「Q2:あなたもそうですか?/A:自分はそうでないけど周りには結構いる。」
    その結果、「多分日本人はダメになっていってる。けど自分はそうでない。」という人がほとんどになる。

    本当にエゴ。

    結局自分本位にしか物事を考えられないんだな。こりゃあ確かに日本人はダメになってるわ。

    ただ大人の言い分はこう付け加えられる。「特に若者がダメになってる。嘆かわしい。」

    本当に本当にエゴ。

    まいったね。

    ・・・

    的な本でした。

    若者の僕には痛快爽快な読みものでした。
    自分が大人になったら読みなおして、我が振り見直すきっかけになればいいなと思います。

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著者プロフィール

1975年栃木県生まれ。フリーライター。2007年に月刊誌「論座」に発表した「『丸山眞男』をひっぱたきたい―31歳、フリーター。希望は戦争。」で注目を集める。著書に『若者を見殺しにする国』(朝日文庫)、共著に、『経済成長って何で必要なんだろう?』(光文社)など。

「2016年 『下流中年 一億総貧困化の行方』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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