- Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
- / ISBN・EAN: 9784022650245
作品紹介・あらすじ
小さなころ怖かった古典、過去の嫉妬を思い出す小説、何度も買った作家指南書、そして自身の著書について……デビューから書き続けた「本」にまつわるエッセイを一冊に。新たに5本を追加収録! 芥川賞作家である著者初の書評集。解説・島本理生。
感想・レビュー・書評
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さて、2022年。どんな作品を読んでいこうかなと、2022年を彩る作品を物色するかのような気持ちで、読む。
村田沙耶香さんの書評集「わたしが食べた本」。
子どもの頃の教室での思い出や家族との団欒を思い出す場面で、時折それらに強烈な苦しみが伴っている。彼女のその苦しみはどこから来るのだろうか。
彼女が感じてきたこと、彼女が描く作品の世界観、彼女が見ている世界…この書評集を読めば、それが少しばかり理解できるのかもしれない。そんなことを思いながら、読んだ。
思春期に感じていた苦しみは誰にも話せなくて、だからこそ自分だけが抱えている苦しみのように感じていたけれど、実はみんな結構似たような苦しみを抱えていたりする。
大人になって「実はあの時自分もこう思っててさ、」なんて話を古い友人にされると「その時言ってよ~」と思う。しかし当時、そんなこと言えるわけがない。それを言語化する力も乏しいし、そんなこと言ったらいつ自分が居場所をなくすかもわからない。だから、自分を守るために黙っているしかない。だけど、言葉にせずともその友人がずっと側にいてくれた、その事実こそが、友人自身も同じ苦しみを抱えている、その苦しみを理解している味方である、ということなのだろうと思う。
当時のわたしは本なんてちっとも読まなくて、現実の苦しみを見ないようにするために、ひたすらジャニーズの世界に没頭した。彼らがテレビに出ない日は、酷く落ち込んだ。
国語は超苦手で、文章を読むことも書くことも、全然得意じゃなかった。
大学に入って、周りがみんな本を読んでいて、それで感化されて読書の世界に没頭するわけだけど、わたしはそこで気づいたんだ。
「ああ、この苦しみ、知ってる」って。
そこでは、今まで言葉に出来なかったモヤモヤが言葉にされていたり、主人公が自分の気持ちを代弁していたりして、わたしはものすごく、救われた。
思春期に感じていた多くの苦しみは、わたしだけのものだったけれど、似たような苦しみを誰だって経験してる。少なくとも、その作品を描いた人や、その作品を手に取った人のことは、信じていいのかもしれない。
もしも。
もしも村田さんが幼少期に少女小説に没頭したように、わたしが幼少期に没頭したのが読書だったら。
わたしはもう少し早く、救われていたのだろうか。
まだまだ引きずっている、この思春期と何ら変わらない苦しみをとっくに捨て、何らかの「答え」を見つけることができたのだろうか。
もしくは、もう少し器用に、生きることができたのだろうか。
この作品から今年読みたい3冊を厳選したブックリストを作ったのだけれど、3冊に絞り込むのも、200字に収めるのも大変で…
https://booklog.jp/booklists/24919
作品をひたすら検索し、何度も文字を数えては消し…を繰り返して、頑張って作ったものです。
よろしければご覧ください!
そういえば昨日、この3作品を買おうと思い、ブックオフをウロウロしてたんですよ。
で、「よ」のところで吉村萬壱さんのお名前を発見して衝撃を受けたんです。
そこにあったのは、吉村萬壱さんの「臣女」でした。
村田さんの書評集を読んでいる時は全く気づかなかったんだけど、なるほど、吉村萬壱さんは「臣女」の著者さんでしたか!
https://booklog.jp/users/naonaonao16g/archives/1/4198941491#comment
「ヤイトスエッド」に糞尿の描写が多そうなのも納得。てっきり初見の作家さんだと思ってたけど、以前触れたことのある作家さんでした。
自分の「臣女」のレビューを読み返してみたら、スタバでラテが飲めなくなっていて、「ヤイトスエッド」はスタバで読まないでおこう、と決意したのでした。 -
あまり村田さんの世界に入り込まないように、用心して遠目から眺めるような感覚で読んだ。
小学生の頃の様子がしばしば登場するが、どこにでもいるような多感な子供の一人だと思う。
多くの人は「こういうことは考えない方がいいんだ」と妄想を少しづつ消しながら大人になっていくのだろうが、
村田さんは沢山の妄想を消せないまま大人になったようだ。
喫茶店で読書したり仕事(小説を書く)をするのが好きな村田さん。
家だと仕事をする部屋に閉じ込められているようで苦しくなるらしい。
自分以外の人が近くにいると安心し集中できることに気づいたので、喫茶店に足が向くらしい。
コンビニで働くこともそうだが、他人がいる環境で定型パターンの作業をすることが心地よいみたいだ。
村田さんは「西加奈子」さんのことが好きで尊敬していて、本書の最後に少し長めのエッセイを書いていた。
西加奈子さんは、とても純粋で素直に本心を言葉にして投げかけてくるのだそうだ。
「さやかはそんなんでよく今まで生きてこられたなあ」と言われ、そのまま西さんに投げ返したいと思ったとか。
村田沙耶香さん曰く、彼女に比べれば私はずっと人間で「西加奈子」は「化け物」らしい。
その西さんに言葉を投げかけられると、村田さんは人間らしく振る舞っている皮を剥がされ、自分も「化け物」化させられてしまう。
自分が西さんに食べられているという感覚にもなるそうだ。
「西加奈子」さんて何者?、どんな人なのか興味が湧いてきた。
次は「生命式」に挑戦しようかとも思っていたのだが、しじみさんのレビューで怖気づいたので今は読むのをやめる。
「村田沙耶香」さんとはしばらくの間離れ、「西加奈子」さんに接近してみようと思う。 -
⚫︎あらすじ(本概要より転載)
小さなころ怖かった古典、過去の嫉妬を思い出す小説、何度も買った作家指南書、そして自身の著書について……デビューから書き続けた「本」にまつわるエッセイを一冊に。
⚫︎感想
幼い頃から、村田さんはユニークな視点で世界を見ていたひとだったんだと知れた。様々に読了された本をご自分経験や思ったことと共に紹介され、また著者自身の本も書かれた経緯と共に知ることができ、興味深かった。
幼少期、たくさん書いてみたり、ワープロを手に入れて書いてみたり、妄想したり、「村田沙耶香」と言う名前のついた本を本屋さんで探したり…本当に「書く」ために生まれてきたみたいな方。他著、自著問わず、素敵なエッセイで綴られていて、心惹かれた。芥川賞前後の生活も垣間見れた。
この中で村田さんが紹介されている本も気になるものから少しずつ読んでいきたい。 -
村田沙耶香さんの好きな本の書評。
後半は子供の頃から書く事、読む事が好きで、小説家になり、そしていつしか、原稿を依頼されたり、先生と呼ばれるようになった時々の心情が書かれていて、もっと村田沙耶香さんの作品を読みたくなった。 -
最近ブクログの「読みたい」本のところを整理して、消化に励んでいたのに。これもまだ読んでない、もう一度読みたい、とまたどんどんチェックするハメになってしまった。島本理生さんや西加奈子さんなど、好きな作家さんとの関係性も見えて楽しい。書評以外にも、小学生から小説を書き始めたというエッセイも。
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たくさんの読んだことのない本との出会いがあった。たのしみ。
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この著者の小説は好きではないのだが、新聞で目にする書評にうっとりしてスクラップするほど、なので書評集読んでみた。こんなにまとめて読むと息苦しさを感じる。恐ろしく激しく読むという行為に挑みかかっているようで。そして評されている作品自体は決して読みたくならない不思議。
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書評、あんまり好きじゃないのに、村田さんの文章だとついつい読み込んでしまうし、文の勢いがすごい。
脳に語りかけるみたいな、映画みたいな文章だなってよく思う。気になった本はぜひ読んでみようと思う。 -
2022.01.24 #2022-002
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村田さんの文体はいい意味で庶民的な純文学で素敵◎
そんな村田さんを形作ってきた本たちへの愛が伝わってきてドキドキする一冊
naonaoさんのマネして、僕も読んでみるかモネ。
…失礼しました
naonaoさんのマネして、僕も読んでみるかモネ。
…失礼しました
そうなんです!なかなかディープな3冊!
ブックリスト見に来てくださりありがとうございます^^
そうなんです!なかなかディープな3冊!
ブックリスト見に来てくださりありがとうございます^^