- Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
- / ISBN・EAN: 9784022733221
作品紹介・あらすじ
歌舞伎座は平成二十二年春、建替えとなって、親しまれたあの建物が東銀座から消える。五歳になった昭和十六年から歌舞伎座に通いはじめて、六代目菊五郎、初代吉右衛門はもとより戦後再建された歌舞伎座五十八年間の舞台はことごとく見てきた。そんな劇評の第一人者が、魔ものが棲むという劇場でくり広げられる祝祭と、数々の名舞台をふりかえる。
感想・レビュー・書評
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さすが知識、鑑賞経験豊富で、確かに「私の」と書名につけても良い方。名優も通もいなくなり、戦後の歌舞伎を伝える術がなくなる中、筆者にはできる限り舞台を見続けていただき、そして文章に残してもらいたい。
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1889年に開設され、2010年に現在の姿に建て替えられることになった歌舞伎座に、60年にわたって通い数々の演技を見てきた著者が、その記憶を振り返っているエッセイです。
著者は、本書のなかでしばしば「私は歌舞伎座の歴史を書くつもりはない」と述べており、あくまでエッセイとしてのスタイルを崩してはいないものの、著者ならではのするどい批評が随所に示されており、役者たちによって歌舞伎座の舞台がつくられてきたことがていねいにえがき出されています。
なお、興味深く感じたのは、蜷川幸雄演出の『リア王』と、野田秀樹演出の『愛陀姫』について述べられているところです。著者は、これらの試みが歌舞伎座の「批評」の役割を果たしていると指摘し、「歌舞伎座を上演するのに、もっともふさわしく、もっとも重要な規範であった歌舞伎座という劇場そのものの実体もあきらかになった」と述べています。作品そのものが批評性をもちうるという指摘はむろん興味深いものですが、ここではそれが劇場のありように対する批評として解釈されていることに意外性を感じます。 -
筆者の歌舞伎と歌舞伎座への思い入れを共感できる本。
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劇評家の渡辺保さんが、自身の観劇歴をまじえつつ、歌舞伎座の名舞台を振り返る。。歌舞伎ビギナーにも見巧者さんにもオススメな1冊。
伝統を守るというのは、つまり新しい時代を切り拓いていくこと、変化し続けることなんだなーと思えてきます。 -
生き字引による想い出書き。歌右衛門の舞台を見ていないのが何としても悔やまれる
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2010.03.14 朝日新聞で紹介されました。