金田一家、日本語百年のひみつ (朝日新書)

著者 :
  • 朝日新聞出版
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本棚登録 : 137
感想 : 11
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022735768

作品紹介・あらすじ

【語学/日本語】コンビニで使われる敬語が一般化している。京助・春彦に続く日本語研究3代目の秀穂が、言葉の謎に分け入って変化や揺れを探っていく。辞書編集の老舗家系としては、これからの言葉が変わる予感もあり、IT化時代の外国語と日本語、といったテーマにも肉薄。

感想・レビュー・書評

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  • 秀穂さんは、金田一京助という祖父、春彦という父をもつ、三代の国語学者の三代目である。京助さんは国語辞典の編集主幹としていろんな辞書に顔を出すが、本人の専門は言語学で、アイヌの叙事詩ユーカラで有名だ。春彦さんはオールマイティで、アクセントや方言が専門だが、文法でもアスペクトや助動詞の研究で先駆的な論文をいくつも書いている。精緻とは言えないにしても、先行論文としてしばしば挙げられるものである。日本語の特徴についての啓蒙的な本もたくさん書いている。そして、秀穂さんは外国人に日本語を教える先生である。本書には書いてないが、秀穂さんは祖父や父の後を継がず、たしか心理学かなにかを専攻したはずだ。それは当然で、こんな偉大な祖父、父をもてば比べられるに決まっている。そして、ことあるごとに、あなたはおじいさんとは云々、お父さんとは云々と言われるに決まっている。だから、最初は同じ道をえらばなかった。しかし、秀穂さんは院は東京外大を選んだ。おそらくここで日本語学に触れたのではないか。ぼくは、秀穂さんと直接話をしたことはないが、83年に北京語言学院での任期を終えて、帰国前に大連に遊んだとき、そこに日本語を教えに来ていた秀穂さんに会ったような気がする。本書はそんな秀穂さんが祖父や父と自分自身との三代の関係を述べたものである。第一章「平成のことばたち」第二章「辞書はどうなるべきか」は別の話題のように見えるが、ここにも三代の人たちが代わる代わる顔を出す。関係がないものをくっつけたわけではない。京助さんはアイヌ語の研究で有名で、アイヌの知里幸恵さんを北海道から家に招いてアイヌの神謡ユーカラの聞き取りをするが、幸恵さんはそれが終わったあと急逝する。幸恵の兄の知里真志保を弟子にもちアイヌ語辞典の編纂を託しているから、真志保も家にきていたであろう。(啄木とも知己で、啄木が金を無心に来たという話も聞いたことがある)アイヌの人たちを家に住まわせるというのは、習慣も違いたいへんだ。京助の奥さんはこれを嫌ったらしく、それは春彦さんにも影響を与えた。春彦さんは自己中心的で、旅に出ても、方言、アクセントの素材にきづくと、家族を放りだしてそれに夢中になったらしい。秀穂さんはそんな二人を暖かい目で見る。その学問が好きだからそのようなことができたのだろうと。春彦さんは京助さんが暇な時代に少年期を送っている。だから、いろいろ直接の影響を受けた。しかし、秀穂さんは春彦さんが忙しい時代に少年期を送っているのであまりかまわれなかったようだ。春彦さんは京助さんの重圧の中で暮らした。だから、京助さんが亡くなったときほっとした顔をしていたそうだ。春彦さんが「家族を愛し、日本語を愛し、そしてなにより自分を愛した」という秀穂さんのことばは象徴的である。ぼくは春彦さんを学会でお見かけはしたが、今一親しみを感じなかった。それに対し秀穂さんにはなにかしら親しみを感じる。それはあののほほんとした顔のせいだろうか。しかし、秀穂さんは決してのほほんと育ったわけではない。京助、春彦さんの影は幾十にも秀穂さんを取り囲み重くのしかかっている。本書からもそれは読み取れる。★いくつか気づいた点。同志がホモの意味だということにふれているが(p86)、小姐も今は風俗嬢を指すようになったという記述がほしい。P88「礼貌語法」と言っているが、これは「礼貌語言(マナー言語)」のことではないか。P164で「日本語の特徴」をあげている。この中で「和語が全体的な意味しかもたない」というのはわかりにくい。一つ一つの和語が意味する範囲(内包)が広い、漠然としているということか。「基礎語のカバー率が低い」というのは、漢語のカバー率が高い(半分はある)ことを逆に言っているのか。特徴をあげたからには、もう少し説明がないと不親切だ。

  • 2018/06/06

  • 秀穂先生の講演を聞く機会を得たので図書館で借りました。テレビで拝見する感じの軽やかでユーモアのある文体で、若者が使う日本語の考察や、お祖父様の京介氏、お父様である春彦氏のことが紡ぎ出されていてとても楽しく読めました。日本語に対して、改めて素敵な言葉だと認識できて、面白かったです。

  •  カネダ一家と呼んではならない「金田一」家である。
     金田一京助、春彦は当然知っているが、三代目の秀穂は寡聞にして知らなかった。
     文章は読みやすい。辞書の大家の家庭でのやり取りがどういうものか興味のある向きには是非。第三章「親子ニホンゴ対話」が興味深い。
     同著者の「ふしぎ日本語ゼミナール」は、形式がぼくには合わず途中でリタイア。

  • 私が尊敬する「国語の神様」金田一先生の本です。若者ことばをおもしろがるところや、何にでも好奇心旺盛だったり、意外と俗っぽいところなどが楽しく、ますます好きになりました。
    著者も父、春彦も出発点が日本語教師だったためか、日本語教師の地位が上がるといい、もっと専門能力が認められていいと書かれていて、とてもうれしく思いました。
    また金田一京助、春彦のことも知っているようで知らなかったため、改めてその偉業がわかってよかったです。

  • 家業めいたところを「金田一国語商会」と称するのが楽しい。三代目の苦労や葛藤、家族だから見える二代目の苦悩、初代の偉大さなど。国語学に絡めた家業エッセイ。タイトルからの印象とは違うけれど面白かった。語り口が好きだ。

  • 春彦の京介への、秀穂の春彦へのおもいが興味深い。(敬称略)

  • お父さん(春彦)がお父さん(京助)を語った本を読んできたのに、早その次の世代ですか。
    あいかわらず、日本語って面白いです。3代かけても研究しきれない日本語。日本語の面白さを伝えることにかけて、立派な後継ぎの秀穂先生です。

  • 感想未記入

  • 三世代それぞれの形で日本語の研究にたずさわった来し方と、言葉の面白さが縒り合わされて、興味深かった。
    変わっていく言葉、消えていく言葉、ヒトの暮らしのすぐそばに在るからこそなのだ。面白がれる種がまた一つ増えた。

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著者プロフィール

言語学者

「2022年 『ベスト・エッセイ2022』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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