リベラルは死なない 将来不安を解決する設計図 (朝日新書)

制作 : 井手英策 
  • 朝日新聞出版
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感想 : 5
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  • Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022950147

感想・レビュー・書評

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  • 書いてある内容自体はとても真っ当なことだと思う。私自身もリペラルを自認しており、内容自体に異論はない。だけど、それは従来のリベラルの主張そのままということでもあって、「なぜマジョリティになれないのか」についての考察が欲しいなと思う。
    井手英策の税金社会保障と山内康一の教育論は「リベラルは死なない(まだ役目は終わっていない)」にふさわしい提案があるけれど、他の論文はマクロな視点が欠けていてわざわざ「リベラルは死なない」という大上段から振りかぶる意味があるのかと思ってしまう。

  • ●世間の間でリベラルへの風当たりが強い。そもそもリベラルとは何か?「政治的に穏健な革新を目指す立場をとる様」と言うことになる。社会主義や共産主義といった急進的な思想いわゆる「左翼」との違いはこの定義でなんとなくわかるような気がする。
    ●1997年をピークに僕たちが貧しくなった。自分の生活が必死になっている人にとって、困っている人々を助けるほどの余裕は心理的にも物理的にもない。左翼やリベラルの政策が受け入れられない理由があるのではないか?
    ●税と社会保障を合わせた国民負担率は、北欧が59%、日本は43%であり、平均成長率は北欧が1.7%で日本は1%だ。また所得格差も北欧の方安全小さい。税がはるかに高い北欧の方が経済成長率は高く、所得格差が小さく、社会での信頼で人々の幸福度は明らかに高い。
    ●日本の財政の特徴は、その大部分が「特定の誰か」の利益になっている点にある。
    ●僕たちは自分の寿命を知らない。100歳まで生きてもいいよう貯蓄に夢中になる。だがその結果「蓄え」は「過剰」になり、「消費」が「過小」になる。おまけに高齢者になった自分の子供にそれが相続され、貯蓄としてまた塩漬けになる。
    [河合孝典]
    ●外国人労働者を低賃金労働に当てる考え方は、まず日本人の人権は押し下げる圧力につながる。また移民が高齢化した後の社会保障給付の負担増も考えないといけない。
    ●介護離職者に職業訓練給付金を支給する!定期的に研修を受けたり、OJTでスキルも身につく。
    [山内康一]
    ●学習塾や予備校といった学校外教育機関に頼らなくても十分な学力が身に付く公教育が求められる。教職が学び直す機会を増やし、「学び続ける先生」をサポートする仕組みを整えなければならない。教員が子供たちと向き合う時間が十分に持てていない状況を変えないといけない。大学の教員養成課程の質を高めることも有益。非正規教員の増加は以上。
    ●大学の基礎研究を軽視することの弊害は、科学技術の振興を阻害することに尽きている。近年ノーベル賞を受賞した日本人研究者が、その研究をしていた頃の研究助成や、研究者育成の方針を再確認し、そこから教訓を汲み取るべきだろう。
    ●世界大学ランキングへの希望。英語論文の優位性だけでなく、産業界からの収入といった無意味な項目があり、国の補助金ですが高い日本の国立大学には不利である。
    ●安倍総理肝いりの教育再生会議などのメンバー。右派的なイデオロギーの学者や財界人が出す勧告は、新自由主義的な色合いと保守的道徳観に基づき、教育現場の実態とはかけ離れたものが多かった。
    ●教育こそが日本の貧困問題の解決の鍵となる。
    [矢田わかこ]
    ●高校無償かは民主党が実施した政策。しかし自民党や公明党が所得制限を課せてしまった。都市圏で言う私立高校は高所得者の子供が通学するケースが多いが、地方では学力レベルから公立高校へ進学できず、やむを得ず私立高校へ通学する人が少なくない。授業料が納入できず中退するケースさえ出ている。
    [階猛]
    ●大学連携型CCRC…リタイヤ前後のまだ元気なうちに都会から移住し、その地域の大学で学び直しをし、老後に医療や介護が必要になれば大学病院や介護施設を利用できる地域共同体をこのように呼んでいる。

  • 若手の立憲民主党、国民民主党の精鋭が、それぞれの主張を展開している面白い本だ.発想の原点になっているのは、財界でも大企業でもない庶民の目線だと感じた.自民党の政策は多くの部分で現代社会に対してミスマッチの感が否めないが、安倍の発想からして野党の考え方は拝聴してみようというスタンスはない.もう退陣は時間の問題になってきたが、積みあがった難題は厳として存在している.与野党は柔軟な発想で問題解決の糸口を探ってほしい.様々な提案の中で、集合住宅型リバースモーゲージが面白かった.

  • 財政学者の井手英策が序章で方向性を示し,続いて旧民主党系の政治家が1章ずつ,政策を提言する。
    内容は至極もっともで,是非がんばって実現してもらいたいと応援はしたいんだけど,どうなるのかねぇ……。

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著者プロフィール

慶應義塾大学教授

「2022年 『財政社会学とは何か』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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