日本的「勤勉」のワナ まじめに働いてもなぜ報われないのか (朝日新書)

著者 :
  • 朝日新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022951731

作品紹介・あらすじ

給料が上がらない日本の現状に「報われなさ」を感じている人たちに向けて、約30年にわたってのべ1000社近くの日本企業の変革をサポートしてきた組織風土改革の第一人者が、労働生産性が上がる「正しい働き方」を提示する。

感想・レビュー・書評

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  • 日本人論は嬉しいが、やや雑な記述が多いのは気になる。

  • 日本人の勤勉さをあげつらうのではなく、積極的に活用することで30年以上続く暗い雰囲気を払拭する方策を提案している本だ.上司などから与えられた指示に黙々と従うのではなく、自分で判断する「軸思考」の発想を強調している.創造力も加味した「拓く場」の創造も提案している.実践している組織もあるようなので、普及することを期待している.

  • 今ある物事やルールに盲目的に従うのではなく、それがある理由や目的を理解して、今本当に必要なものかを問いかけることの大切さが必要だとよく分かる。そのためには、自らの倫理観を持ち、常に見直すことが必要に思う。

  • 長年かけて刷り込まれた日本的勤勉の価値観により、とにかく正解を探してしまう。。。
    自分の軸で考えないとね。

  • ■思考停止の儀式を育んできた日本の公教育。
    日本の過去の公教育の中心は知識の教育だと言われてきた。既にある情報(知識)が答えとして用意されているのが日本の公教育だった。
    言われたことをきちんとこなし、効率よく答えを導く、複雑なオペレーションでもスムーズにやり遂げる能力を養うことを可能にする「閉じる場」が経済界からの当面の要請にも適していた。
    この「閉じる場」の教育は、知識を教えるのが教育という歴史由来の伝統ともマッチしていることもあって何の違和感もなく日本の社会に溶け込んでいった。
    以前から指示待ち人間の多さを嘆く声がよく聞こえていたが、そもそも日本の教育はきちんと指示をこなせるような人間を育てることを目的の中心に置いてきた、と言っても間違いはない。そして、そのためには「閉じる場」が極めて有効に機能したと言うこと。
    この「閉じる場」と枠内思考が表裏一体の関係にあることからもわかるとおり、「閉じる場」では基本的には思考力を必要としない。「閉じる場」では、物事をその本質にまで遡って「なぜ、何のために、そもそもどういう意味があるのか」などと考えるチャンスが全くない。答えは既にある選択肢の中から選ぶものであり、選ぶときに必要な思考力と言えば、まさに最低限のそれしかいらないのが、「閉じる場」だ。「閉じる場」の強みは、その安定性。余分なゴタゴタを起こさない、持ち込まないのが「閉じる場」。

  • 長年、組織の風土改革に携わってきた著者が、現在の会社文化・働き方・組織風土に対し、問題点を挙げ、解決策を提案する一冊。
    現在の日本経済の低迷の原因を日本人特有の勤勉さにあるとし、その思考の変革を求めています。これまで組織風土の問題点を指摘していた著者らしく、これまでの著書などで述べてきた内容を踏まえていますので、過去の著書を何冊も読んできた身としては懐かしさと、組織の問題の根深さを感じます。
    著者はこの中で、軸思考というものを提案していますが、具体的に行うには難しく、個人の能力だけで解決できるものでもないため、長期的・組織的な視野で臨む必要があります。

    ▼日本経済の高度成長を支えてきた、日本人が持つ職務に忠実な勤勉さこそが、今の停滞の主因になっている
    ▼置かれている前提を問い直さず、どうやるかしか考えない姿勢は歴史由来であり、ある種の社会規範としてあまりにも深く根付いているために、誰もがそのことがもたらす意味の大きさに無自覚である
    ▼日本人は、勤勉で粘り強く、結束力は世界一でありながらも、こうした「思考停止」に陥りやすいという”特異性”を持っています。それは、「運命として与えられた規範を堪え忍ぶ姿勢」にどこか親近感を持ち、それを率先垂範することを美徳とする、という一種の「勤勉美学」が組織の中に息づいている、ということでもあります。だからこそ、組織人としての規範から外れる行動を選ぶことは、日本人にとってハードルの高い課題になってしまうのです。

    ▼無自覚な思考停止ーものごとの意味や価値などを深く考える姿勢を欠いている状況ーが日本社会全体に蔓延してきたのが平成の時代であったため、今の停滞をもたらしてしまっている
    ▼常に旧来の価値観でそうした問題現象を取り上げるだけで、問題現象の奥に潜む問題の本質ーつまり、無自覚の思考停止ーには今まではほぼ誰も触れることがなかった、ということです。それが、日本という国がはまってきた落とし穴なのです。

    ▼勤勉1.0 →勤勉2.0
     枠内思考→軸思考
     閉じる場→拓く場
     役職意識→役割意識
     確定した結論→拓かれた仮説
     予定調和・前例踏襲→試行錯誤・問い直し

    ▼一定の環境さえ用意すれば、お互いに自分に似た「何か」を共有しようとする感覚を多くの人が持っている、という人間関係における強靭な強みが日本人にはあるからです。この感覚を私は「日本人が持つ共感力」と名付けています。
    ▼「枠内思考⇒閉じる場⇒枠内思考」という悪循環を断ち切り、「考える力」を発揮しなければ、新たな価値、新たなビジネスモデルなどを創り出すことはできない
    ▼軸=”意味や目的、価値”を考え抜く姿勢

    ▼”軸”についての仮説
    ①「めざすものを持った生き方を志向する」
    ②「タテマエよりも事実・実態を優先する」
    ③「”当事者”としての姿勢を持つ」
    ④「常に”意味や目的、価値”を考え続ける」
    ⑤「”拓かれた仮説”にしておく」
    ⑥「”めざすもの起点”で考える」
    ⑦「衆知を集めて担当責任者が決める」


    <目次>
    序章 日本の労働生産性が伸びない理由
    第1章 「勤勉」はなぜ、日本人の美徳となったのか
    第2章 勤勉さが生み出す無自覚の「思考停止」
    第3章 自分で判断する力を育む「軸思考」
    第4章 新たな価値を生み出していく「拓く場」

  • 著者の書籍は何冊か拝読させて頂いていますが、本書は著者が持つ組織改革のアプローチを適用させる対象となる硬直した組織のその構造的な原因についての考察を丁寧に行なっています。

    正解とされることをやり続ける姿勢としての勤勉さが、
    目的を考えず上司の指示に従ってやってしまうという思考停止の根底にあるという意味での勤勉さの問題点の指摘がまずあります。

    このあたりは抽象的で馴染みのない概念もありますが、テニスにおいてフォームから入る日本と、客観的な意見とデータを提供する欧米の違いの例えがとても分かりやすかったです。

    枠にはまった思考が悪いわけではなく、意味や目的、価値を考え抜く姿勢(著者が定義する軸思考)があってこそ、枠が生きてくると理解できます。

    軸思考を形成するための方法論としてオフサイトミーティングを起点とした拓く場があり、本質的な議論を通じて軸思考を養っていくとともに、本当に取り組むべき経営課題に向き合えるようになることが後半を読むと解ります。

    どの立場でこの内容によって解釈も変わってきますが、おそらく大企業役員が一番読んでほしい人、読んで得るものが多いと思います。

    構造自体を変えるのが難しい若手の立場を考えると、軸思考無くして生き残っていけない環境に身を置かなければならないと感じます。そういう意味ではスタートアップは良い環境です。

    組織のサイズによらず常に人の問題が一番大きいと感じます。そういう意味では、拓く場は組織の規模によらず必要な存在だと感じます。

  • 序章 日本の労働生産性が伸びない理由
    「職務に忠実で勤勉」が停滞の原因
    合理化が進み、安定志向がより強固に

    第1章 「勤勉」はなぜ、日本人の美徳となったのか
    戦後の高度経済成長を可能にした勤勉さ
    なぜ日本で勤勉な文化が育まれたのか

    第2章 勤勉さが生み出す無自覚の「思考停止」
    「思考停止=何も考えない」ではない
    「現実起点でものごとを考えない」ことが大事

    第3章 自分で判断する力を育む「軸思考」
    トヨタは「軸を共有している金太郎あめ」
    “意味や目的、価値”を考え抜くのが「軸思考」

    第4章 新たな価値を生み出していく「拓く場」
    仲間とともに「拓く問い」と向き合う
    「拓く場」は忌憚のない意見を交わし合う場

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著者プロフィール

株式会社スコラ・コンサルト代表
東京大学大学院教育学研究科博士課程修了。大学院在学中にドイツ語語学院を始めた学生起業家のひとり。30代の頃にはNHKテレビ語学番組の講師を務めるなど幅広い経験を持つ。ビジネス教育の会社を設立後、企業風土・体質の改革に独自の手法を考案し実践している。

「2020年 『なぜ、それでも会社は変われないのか 』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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