- Amazon.co.jp ・本 (308ページ)
- / ISBN・EAN: 9784022951953
作品紹介・あらすじ
中国の進出と権威主義的資本主義、コロナ禍とベーシックインカム、そしてロシアによるウクライナ侵攻。激変する世界の中で大切なのは、「適切な問い」を立て、思考を深めることにある。表面的な事象の裏にある真因は何か、未来をより良くする可能性はどこにあるのか? 大澤社会学が現代社会の事象に大胆に切り結んでいく。
感想・レビュー・書評
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●ロシアはヨーロッパなのか?少なくともプーチンはそう考えているはず。キリスト教を受け入れた国である。
●西に対する劣等感。
●参照対象はビザンツ帝国⁈詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
3章4章5章を読了。
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秀逸の現代ロシア論・現代中国論・現代資本主義論
社会学者・大澤真幸(おおさわ・まさち)氏が朝日新聞出版のPR誌「一冊の本」に長期連載している「この世界の問い方」をまとめたもの。
第1章の「ロシアのウクライナ侵攻」ではロシア(≒プーチン)がなぜこんな戦争をしてしまうのかをロシアの心性から解き明かす。まあだいたいわかっているとこではあるが、西ヨーロッパに対するルサンチマンの発露ということにやはりなりますよね。
第2章「中国と権威主義的資本主義」が全5章のうち最もおもしろいし、現代中国論でもあり、資本主義論でもある。「民主主義+資本主義」が正しいものとして生きてきた身としては「権威主義+資本主義」のほうが効率が良くてうまくいっていることに驚く。民主主義を標榜している国々でもGAFAのような巨大IT企業が本来公共財であるべき人々の生み出す情報を囲い込んで有料化(まるで税のように)しているわけで、「民主主義+資本主義」とは言っても、その中でGAFAが権威主体になっているとも言える。GAFAにやられるくらいならその権威主体が政府(や共産党)であったほうが民主主義に近い?!という逆説。
日本社会は中国的なものの島国的変奏曲でもあり、本当は「権威主義+資本主義」のほうが効率いいのだろうな。高度成長期はそうだったのかも、などとも思う。民主主義とは言ってもそれは容易に安直なポピュリズムに堕してしまうのだから。 -
プーチンのウクライナ侵攻の発想を事細かに分析しており、ロシア人の思いとプーチンの最終構想を述べているが、ある程度理解できたと思っている.プーチン(ロシア人)のヨーロッパに対する深い劣等感とそれに由来するルサンチマン(怨恨)が根底にあるとの議論は面白かった.中国とアメリカの体制に関して、前者の権威主義的資本主義が主流になるのではないかという危惧は、多くの人が密かに感じつつある懸念だと思っている.そうなって欲しくないが、中国の力量は侮れないものがあるのが事実だろう.いろんなことを考えさせてくれる良書だ.
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著者が月刊誌で発表してきた時事的な評論のおまとめ本。著者の単行本と違い多少砕けた言い方や好き嫌い等の嗜好も読み取れて興味深い。やや局所的なテーマもあり一貫して読み応えがある感じではないが軽めの内容としての良さもあり。
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背ラベル:304-オ
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書店で気になって入手・読了。自分の知識レベルだと、大澤さんの著作は結構難解に思えるものが多いので、本作はどうかと思ったけど、これがまた、今の自分にベストフィット。字面だけの理解だととても足りない大変化が矢継ぎ早に起こっている昨今、かといってそのいちいちを突き詰める時間も、そして能力もない場合、本書のような一冊は非常に有難い。実はどのあたりが分かっていないのか、まずは具体的に言語化。そしてそれらを、ある程度普遍性が高いと思える理由で解きほぐしていく。そこで分かった気になってしまうのも危険だけど、自身の思索の取っ掛かりになることは間違いない。この連載、今後も定期的にチェックしておこうかな、と。